遊園地を楽しめなくなったのはいつからだろう
ゲームセンターに入っても心が躍らなくなったのはいつからだろう。
誕生日ケーキでそれほどテンションが上がらなくなったのはいつからだろう。
クリスマスが近づくと新聞に挟まっていた、トイザラスの広告を見てもドキドキしなくなったのはいつからだろう。
歳を重ねるにつれて「できること」が増えると同時に「やったことある」が増える。何をやっても「ああ、これ前にやったことある」とか「あれと一緒だ」とか「あれと似てる」とか「この前のあれのほうがよかった」って過去の経験と比べるようになってしまう。どんどん「はじめて」がなくなってしまってどんどん「楽しい」のハードルが上がってしまう。
大人になってからずっと乗ってみたかった日本最大級!みたいなジェットコースターに乗った。日本最大級に乗ったらどんなに楽しいんだろう!ってすごく期待していたのに、乗ってみると案外こんなもんかーという感想だった。
子供のときに遊園地で初めて乗ったジェットコースターの方がわくわくした。学生のときに付き合ったばかりの彼女と初めて行ったUSJのジェットコースターの方がどきどきした。
遊園地を楽しめなくなったのはいつからだろう。
GWに4歳の娘と2人で遊園地に行った。
生まれて初めてのジェットコースターに乗るその子と「楽しみだねー楽しみだねー」と言いながら長い列に並ぶ。乗っているあいだ「わー」「きゃー」と叫びながらずっと笑顔。降りてからも「楽しかったねー楽しかったねー」と言いいながら笑顔。
ジェットコースターも、コーヒーカップも、メリーゴーランドも、観覧車も、全部が生まれて初めて。
全部が楽しかったのはたぶん子供の「生まれて初めて」をおすそわけしてもらえたからなのかもしれない。
空中ブランコは4歳ではまだ身長が足りなくて、乗れなくて、あー乗りたかったなーと思っていると
「パパ乗っておいで、写真撮ってあげる。」
と一眼レフカメラに顔が隠れそうなくらい小さいカメラマンに言われる。
「まじで?大丈夫?いいの?」
ってちょっと心配そうに聞いたけど、めっちゃニコニコしてたから安心して
「ほんじゃ行ってくるね。」
って一人でブランコに乗り込む父。柵の向こうでカメラを構える4歳。
「いや、逆やん」
ってなって超笑った。
だんだんとブランコが上昇してぐるぐる回りはじめる。父親の居場所がわからなくて目をぱちぱちしてる様子がかわいくてずっと見ていたかったけど一生懸命名前を呼んで手を振った。
「パパー!怖いーー?」
「怖いよーー!うわーー」
いつの間にか蛍の光が流れてきてもうこんな時間かと気づく。
急いでママと弟のおみやげを買って遊園地のゲートから出る。
また来てねー!って一生懸命手を振ってくれるスタッフの人にばいばーいって2人で手を振りながら車で退場する。
家に帰ると風呂上がりの妻が0歳を抱っこしながら言った。
「おつかれさま、よくがんばったね。」
2人だけ一日中遊んで帰ってきたのに「がんばったね」と褒めてまでもらえて恐縮です。
今度は4年後くらいに4人で行って、また「生まれて初めて」おすそわけしてもらおう。
スキとかフォローとかしてもらえたら僕は幸せです。