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音楽のデザインをちゃんと見る:サカナクション「魚図鑑」

音楽が好きで、好きなアーティストのアルバムについては未だにCDを買っている。

CDを買ってもPCに突っ込んで、後はiPhoneで聴くことがほとんどなのに。

なぜ今どきわざわざCDを買うのか。初回特典のDVDを見たいというのもあるけど、それよりなにより、アルバムのアートワークをしっかり手にとって見たい。そしてそれを手元に置いておきたい。

音楽のアートワークが好き。ミュージックビデオが好き。そういうわけで「音楽のデザインを見る」というテーマで不定期に書いていきたい。見た目のデザインだけでなく、売り方とかマーケティング的な部分についても作り手がどうしてこうしたのかを考察していきたい。

まず第1回目は大好きなサカナクション。

サカナクション「魚図鑑」

バンド活動10周年を記念して2018年3月28日にリリースされたサカナクション初のベストアルバム。このアルバムがめっちゃ良い。めっちゃ好き。ベストなのでサカナクション初心者にはもちろんのこと、リリースされている曲はほぼ全部持っているようなサカナファン(自分)もにっこり。

このアルバムはなぜ新規さんも常連さんも満足させられるんだろう?

浅瀬、中層、深海というデザイン

このアルバムは、サカナクションが今までリリースした楽曲ひとつひとつを魚に例えて、浅瀬、中層、深海という名の3つのCDに分布させている。(※深海は完全生産限定版のみに収録)

浅瀬・・・大衆向け。シングル曲やフェスでよく披露される曲が中心。最新曲「陽炎」もここに収録。色で表すなら白。

中層・・・初心者も玄人も納得の1枚。大衆向けではないけどファンの中でも人気の高い曲が収録されている印象。色で表すならグレー。

深海・・・玄人向け。暗い曲が多い。サカナクションのボーカル山口一郎さんの最も私的な部分が収められている1枚。色で表すなら黒。

初心者は浅瀬から中層、深海へ、サカナクションの海をじわじわと潜っていくイメージ。ポップな場所からディープな場所へ、段階を踏んで聴いていけるので聴きやすい。とても親切な設計だと思う。

長年のファンは今まで聴き続けてきた馴染みの楽曲達の分布を見て楽しめる。この曲はやっぱり浅瀬だよねー。この曲は意外に深海なのかー。みたいにファン同士でも盛り上がれる。話題を起こしやすい設計なのだ。

図鑑というコンセプト

完全生産限定版には「魚大図鑑」、それ以外の形態には「魚図鑑」という分厚い資料が付いてくる。この魚図鑑の読みごたえがすごい。これだけのためにお金払っても良いぐらい楽しい。

魚図鑑にはCD収録曲全てについて一曲毎2ページにわたって制作日などの細かすぎる情報と、楽曲の解説、歌詞が載っている。この楽曲解説がすごくおもしろい。楽曲の制作秘話や、楽曲にまつわるメンバーの出来ごと。一郎さんの苦悩、なんでこんな歌詞になったか、なんでこんな曲になったか、なんでこんな音を入れたか、あの曲とあの曲を合わせてこの曲になった、などなど。

解説を読むまでは暗くてパッとしなかった曲も、こんな秘話が隠されていたのか、ということを知ると大切な一曲に変わる。読む前と読んだ後で全然曲の聴こえ方が違ってくるから不思議だ。一冊読み終わる頃には全ての曲に対して愛着が湧いてくる。

これを書きながらキンコン西野さんの「共犯者作り」って言葉を思い出した。一曲一曲にメンバーと同じくらい思い入れを持ってもらって,チームサカナクションの一員にしてしまうのだ。

一曲ずつ聴きながらその曲の解説を読むのがおすすめ。

魚図鑑のアートワーク

図鑑のデザインは外国の古びた魚の図鑑の上に「魚図鑑」「サカナクション」とマジック手書きで書いたもの。

中身についても古びた英文や魚の写真の上に大胆に曲の解説や歌詞や、他にも楽曲群に関する分析資料やサカナクションに関する過去写真が掲載されている。

デザインで気になったのは下敷きになった古びた魚図鑑の部分。200ページにも及ぶこの図鑑を写真から英文まで全部一からデザインしたんだろうか???と考えると気が遠くなった。

元ネタとなった図鑑がamzonで売られている!というファンの方のツイートを見て安心した。よかった、下敷きにされるためだけの図鑑を200ページデザインさせられたデザイナーはいなかったんだ。

この元ネタの図鑑、著作権が切れたものだそう。著作権フリーなので下敷きにしようがマジックで書き込もうが自由!なるほどー。経費削減かつインパクトもある、一石二鳥で会社に優しいデザインや〜〜。

CDケースは透明なケースの上に黒字で魚の分布図を載せたもの。「サカナクションを解体する」という意図で透明にしたのではないかと思う。シンプルでとても良い。

3枚のCDラベルのデザインについてもすごく好き。海だからと安易に青系の色を使うのではなく、シルバー系の色が浅瀬→中層→深海に向かうにつれて濃く、深くなっていくのが良い。

まとめ

というわけで第1回「音楽のデザインをちゃんと見る」のコーナーを書いてみた。CDのメインってもちろん音楽なのでアートワークって見逃されがちだけど、CDを買うといつもアートワークの素敵なところを見つけて褒め称えたくなる。ブログに音楽を聴いた感想はいつも書いてるけどデザイン面だけに絞って書いたのは初めてだったのでその欲がすごく満たされた。

自分の大好きな音楽×デザインの話なのですらすら書けるし、そこにスポットを当てて記事を書いてる人もあまり見たことがないのでこのnoteの特色になるかも!というわけでこのコーナー今後も続けていきたい。

#デザイン #音楽 #サカナクション

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