火曜日、幸福論
「パパー、今日もお風呂でバタバタするやつやろうねー」
いいよーと返事をしてサイドミラーを覗いた。
運転席の後ろに乗った娘は窓を開けて、そこにアゴをちょこんと載せていた。流れてくる風に目を細めたり、にこにこしたり。
その様子がかわいくて運転しながら横目でちらちらと観察した。
スピーカーからはレキシがカバーした「幸福論」が聞こえてきた。
時の流れと空の色に何も望みはしない様に
素顔で泣いて笑う君のそのままを愛してる故に
あたしは君のメロディーやその哲学や言葉全てを守り通します
君が其処に生きてるという真実だけで幸福なのです
この曲って恋人同士のこととしかとらえてなかったけど親子にも当てはまるなーと思った。
椎名林檎さんはこの曲でデビューしてこの前の日曜日にちょうど20周年を迎えた。まだ小学生だった自分は父が買ってきたデビューアルバムが気に入って、そこからずっと好きになった。20年も「好き」を続けるのってなかなかすごいことかも。我が人生林檎さんと共にありみたいな。
自分もこの子に何かそんな「好き」を残せたらいいなぁ。
空の色は良くないけど街路樹が青々としげって、信号の青がその青に溶けている。車のランプの赤が差し色になっていていい感じ。
「パパー、水族館行こうねー。ママといっくんとパパとのいちゃんとみんなで行こうね。あとじいじとばあばもー。」
またいいよーと返事をしてサイドミラーを見た。
「ママのこと好きー?」「好きー」
「いっくんはー?」「好きー」
「パパはー?」「きらーい」
なんでー。
平日の朝、保育園に送っているだけなんだけどなんか幸福だなーと思った話。
スキとかフォローとかしてもらえたら僕は幸せです。