第17話 歓迎会
「こうしてお酒が飲めるのは、金城さんのおかげです。金城さんよありがとう、それ一気、一気、一気、一気」
赴任してから2週間後の土曜日
みつおの歓迎会が行われた。
一次会が終わり、二次会に誘われて行った先の店には、別の班の人も混じって飲み会が始まった。
そして、当時流行っていたジャンケンでの一気飲みが始まった。
ジャンケンで負けた人が一気飲みをするのである。
みつおはヤケになっていたので、勝っても負けても一気飲みをしていた。
歓迎会でヤケ酒である。
赴任してきた日、みつおは島のメインストリートを見てガッカリし、山を登ること30分、およそ5キロの道のりでショックを受けていたのである。
気持ちは島流しをされた気分だった。
元々航空機整備士になりたくて自衛隊に入ったのだが、違う職種にされ、さらに希望の那覇基地に行かせてやるという約束だったのに、こんな島に飛ばされてかなりテンションは下がっていたのだった。
あまりのショックで鬱になって、自分のベッドで引きこもっていたのだが、一週間ふさぎ込んでいても誰も気に留めてくれず話しかけてくれなかったので、逆ギレしたのだった。
それで、この歓迎会では馬鹿みたいに酒を飲もうと決めていたのだった。
「おい、金城、俺の酒が飲めないのか?飲めよ」
お酒を強要してくる先輩に
「ラジャー」
勧めらるままに飲んでいたのだが
「はい次、これ飲めよ」
すぐにお酒のグラスを出されたのだが、なんと、そのグラスにはベーコンが入っていたのだった。
いわゆる新人イビリである。
後輩が嫌がるのを見たくて一気飲みをさせるのだが、みつおがいくらでも飲むのでエスカレートして、ただのお酒ではなくベーコンを入れてきたのである。
これにみつおキレてしまったのだった。
「おっけー先輩じゃ一緒に飲みましょう」
みつおは得意の酔っ払ったフリをして、先輩の肩に腕を回して羽交締めにして、乾杯をし一緒に一気飲みをしたのだった。
ムキになっていくらでも飲むかわりにその先輩も巻き添えにしたのだった。
そして気がつけば…
「は?ここはどこだ?」
目が覚めたときに、知らない家で寝ていたのだった。
昨日の記憶はない。
みつおは焦った。
誰かの家に不法侵入したのだろうか?
慌ててその部屋を出て行った。
しばらくすると、見覚えのあるスーパーが見えたので安心したのだった。
メインストリートをしばらく歩いていくとパチンコ屋があった。
みつおは酔っ払ったままパチンコ屋に入った。
そんな時に限ってフィーバーするのがパチンコである。
みつおはあっと言う間にドル箱を積んで行った。
お昼の1時を超えた頃だった。
「おい! キンジョー、こんな所で何やってるんだお前は」
「あ、こんにちは」
みつおは普通に挨拶をしたのだが
「こんにちはじゃねーだろ、お前がいなくなったから皆んなビックリして探し回ってるのに、なんでお前パチンコなんかしてんだ」
その先輩はかなり怒っていた。
さっきまで寝ていたのは、他人の家ではなくその先輩の下宿だった。
休みの日だけ泊まれるように、民家の一室を間借りしていたのである。
みつおが酔っ払っらって寝てしまったので、先輩たちが担いで、その部屋で寝かせてくれたのだった。
その先輩がスーパーに飲み物を買いに行っている間にみつおは目が覚めて出てきたのだった。
かなり泥酔していたみつおが突然いなくなったのでビックリして、その日オフの隊員を使った捜査していたのである。
そのみつおがパチンコ屋で、しかもボロ儲けをしているのを見て、さらに怒りが爆発したのだった。
「今度きた新隊員は、かなり酒癖が悪いから気をつけろよ」
その噂は瞬く間に自衛隊内だけでなく、島中の飲み屋に知れ渡ったのだった。
小さな島である、そんな事件が起こると半年は飲み屋の話題となるのだった。
それから一切、誰からも誘われることはなかった。
「半年は大人しくしてた方がいいぞ」
と先輩が言ったのこう言う意味だったのである。
ま、みつおはふてくされていたので、誰ともつるんで飲みたいとは思っていなかったので、ちょうど良かった。
一人でパチンコに行き、儲かったお金で一人で飲みに行き、飲み屋のお姉さんと話をしてカラオケを歌う。
一人の方が気が楽だった。
朝まで飲んでそのまま基地に帰って、夕方まで寝て、また夜に出かけるのだった。
そして、いつ辞めるかを常に考えていた。
それから半年たった頃…