第29話 驚愕の事実
「金ちゃん、一緒にやろうよ、東京に出てこいよ、当分は俺の部屋で暮らして、儲かったら部屋探せばいいじゃん」
その言葉で、みつおは東京行きを決めたのだった。
東京でビジネス
何かドラマみたいでワクワクしていた。
何度も自分で考えたビジネスで自衛隊を辞めようとしては引き止められてきたが、今回は違った。
浅はかなみつおが考えた商法ではなく、プロが作って実際に運用しているビジネスに参入するという形だった。
ドラマのような船旅で快調に事はすすんでいた…
はずだった。
しかし、友達のマンションに着いて驚愕な事実を明かされた。
「金ちゃんごめん、実はさ実家の牛乳屋が大変なことになって、急遽実家に帰って牛乳屋を手伝うことになったんだよ、だからマンション引き払っちゃってさ、ごめんだけどしばらくここに住んでくれない?」
連れてこられたのは、なんと友達のマンションではなく、友達のお姉さんのマンションだった。
「えー?」
「はじめまして、金ちゃん話は聞いてるよ、沖縄からバイクで来たんでしょ、凄いね」
「あ、はじめまして、あ、はい、よろしくお願いします」
紹介されたのは一つ上だという友達のお姉さんだった。
(ヤバイヤバイどうしよう)
みつおは、アタフタしてバグったロボットみたいにぎこちなくなっいた。
まさか友達のお姉さんと同居するとは夢にも思っていなかった。
しかも、そのお姉さんはスタイルも顔もどストライクだったのだ。
こんな美人の女性と一つ屋根の下で暮らすのか?
通常なら夢のようなシチュエーションだが、飲み屋のホステスとしか話したことがないみつおにとって、どう対応していいか分からなかった。
(おちつけ、おちつけ)
みつおは気持ちを落ち着かせようと精一杯だった。
朝早く出かけて、夜遅く帰ってくるので、あまり顔を合わす事はなかったが、それでもお姉さんの下着が干されているのを見ると、理性を抑えるのに精一杯だった。
ある意味、違った意味で拷問である。
たまに居合わせておしゃべりをしても、愛想笑いと冷静を装ってしゃべるのに必死だった。
「金ちゃんのも一緒に洗おうか?」
「あっ、いや大丈夫です。自分でお風呂入りながら洗います」
そこには洗濯機はなく、何と洗濯板で洗濯をしていたのである。
ま、スーツなのでYシャツをクリーニングに出してしまえば、洗うのは下着くらいだから毎日お風呂場で洗いながらお風呂に入っていたのだった。
1週間後…
「よぉ、金ちゃん?話は聞いてるよ、凄いなバイクで東京に乗り込んできたんか?」
その日は初めての日曜日で休みだった。
その友達のお姉さんの彼氏が遊びにやってきたのだ。
「金ちゃん、友達の姉ちゃんと同居ってぎこちないだろ?俺の所にこいよ」
その彼氏はとても優しかった。
普通に自分の彼女が訳のわからない男と同居していたら嫌な気分になるはずだが、その人はみつおを自分の部屋に居候させようとしていたのだ。
「毎日、パンティ眺めて生活するのがいいんだったら別だけどどうする?」
そんなこと言われて、はい毎日パンティを眺めながら生活しますとは言えない。
普通に答えは一つしかなかった。
「あ、はい、木村さんがいいならその方がいいですけど迷惑じゃないですか?」
「大丈夫、大丈夫、たまに晩酌に付き合ってくれたらそれでいいよ」
「この人さ、こんなでかい体して寂しがり屋なんだよ、話し相手がいるだけで嬉しいんだよ」
凄い展開になってきた。
何と、友達のお姉さんの彼氏のアパートに居候することになったのである。
何かのドラマの脚本のようなながれで東京生活が始まったのだった。
「とりあえず引っ越し祝いで乾杯しよう」
「あっ、はい、木村さんお姉さんの所に行かなくていいんですか?」
「何言ってるの、今日は金ちゃんの引っ越し祝いじゃないか、男同士で飲もうぜ」
木村さんは久しぶりに飲み仲間ができたみたいな喜び方だった。
荷物は少ないので、その日で即引っ越ししたのである。
とりあえず、ほっとしたのだった。
いつまで理性を保てるか心配だったのだ。
しかもこんなに体のでかい彼氏がいるのに変なことになったら命の危険である。
とはいえ、全く見ず知らずの人の家に居候するのは流石のみつおも抵抗があったのだが
「そうなんですよ、自衛隊では相当飲み歩いて有名人だったですよ」
酒が入ると、即効で昔からの知り合いのように親しくなるのだった。
食卓には沢山の食べ物とビールが並べられていた。
「僕もいくらか出しますよ」
木村さんが近くのスーパーで買ってきてくれたのである。
「いいよ金ちゃん、話は聞いてるよこれから儲かるんだろ、後から100倍にして返してくれたらいいよ、ははは」
「分かりました、では200倍で手を打ちましょう(笑)」
みつおも冗談で受け答えしていた。
パンティを眺める生活からおさらばするのはちょっと残念だったが、東京にきてすぐに飲み仲間ができてのは素直に嬉しかった。
その日から、たまにではなく、ほとんど毎日晩酌に付き合うようになったのだった。
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