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Talking with Experts 『沖縄の身近な植物図鑑』著者 名嘉初美氏

琉球薬草探究会では、薬草を日々の暮らしの中でより身近に感じてもらうため、各分野の専門家の方々に植物に関するエピソードをお聞きしていきます。

第4回目は、『沖縄の身近な植物』著者の名嘉初美さんです。

植物のことに関しては歩く生き字引と言っても過言ではない初美さん。植物のことを質問すると、どこにその植物があるのかを詳しく教えてくださいます。沖縄の植物はもちろんですが、行動的な初美さんは全国、世界へと旅をして見解を広げておられます。

伊江島出身の初美さんは、明治生まれのお祖父様の影響で植物が大好きになります。多くの植物を育てていたお祖父様ですが、伊江島ではめずらしいムクロジが植えてあり、ムクロジの実を泡立てて遊んでいたようです。

ムクロジの実に含まれるサポニンは、水に触れると泡を生成し、汚れを落とす効果がある


ご両親はハルサー(農家)として、葉タバコ、キビ、ジーマミ(落花生)などを育てておられました。島人の身近に生えている植物でのお手当は、フィラファグサ(オオバコ)をあぶっておできの膿出しをしたり、あせもが出来たときは、タライにお湯とフーチバー(ヨモギ)を入れたりしていたそうです。

フィラファクサ

小学校4年生の時、理科の小波津先生の授業は、野山や海で遊ぶことでした。初美さんは楽しくて楽しくて夢中になって学んだようです。翌年、小波津先生は転勤になってしまいます。休日は先生を追いかけてヤンバルまで遠征していた初美さん。昆虫を採取し、標本作りに夢中になっておられました。
中学生になっても標本作りは続き、「でいごクラブ」という理科クラブに所属し、JAグループの月刊誌『家の光』に投稿したりと活発に行動されていました。

毎週のように県内外に精力的に植物観察に出かけるなど、常に行動的な初美さん。
小学生でも身近な植物の名前を調べられる図鑑が欲しい!と考えていた時に、植生調査の師匠である比嘉寿氏に「植物図鑑作家の林将之さんと沖縄の植物図鑑を作りなさい」と強く推され、2022年に『沖縄の身近な植物図鑑』を林さんと共著で刊行されます。

植物図鑑作家の林将之さんと共著

沖縄県民や旅行者が手軽に使えるようにコンパクトな植物図鑑は、沖縄本島と伊江島を中心に写真4000点、亜熱帯の雑草から庭の花、森の樹木やシダまで1000種ととても濃厚な内容です。沖縄の植物観察の時には絶対に必需品です。ぜひ、『沖縄の身近な植物図鑑』と共に沖縄の植物に出会いに行ってください。


野草を使用したお料理もお得意な初美さん。ヤンバルでの観察会ではヒリュウシダやヒカゲヘゴ、ホウロクイチゴ、ツルマオなどを使用したお料理を提供してくださいました。

ヒカゲヘゴの新芽はぬめりがあり、山芋のように美味しい

春先はサクナ(長命草)の新芽を揚げながら、熱々を食べるのが一番美味しいとオススメしていただきました。

好奇心旺盛でいつでもどんなところでも植物を探し、感動し続けている初美さん。
子供頃に大好きな蝶々を追いかけ楽しんでる様子が目に浮かびます。
最近の子供達は、野外での遊びは自分で工夫するものではなくて、自然を楽しむことが商業化され、本来の自然とのつながりや気軽な楽しみ方が失われているのかもしれないと感じておられます。

ニワトリも沖花観察会にご同行

植物や自然界にもっと興味を持って欲しいと願う初美さんは、毎月開催されている沖花観察会で、講師を務められておられます。高校生以下の方は無料(保護者同伴)で参加できます。昆虫に詳しい先生とのコラボ企画の観察会は、とても人気でいつも満員になります。
詳細は沖花観察会facebookページをご覧ください。

これからも、元気はつらつで明るく楽しく、多くの皆さんに植物の素晴らしさを伝え続けてください。貴重なお話をありがとうございました。

※昔ながらの植物使用法は、当時の生活環境や体質を前提としているため、現代の環境や食生活、健康状態には合わない場合があります。野草を食べる時は、採取する環境に配慮してください。

【インタビュー実施日】2024年10月22日
【インタビュアー】須田ひとみ 藤野菜々恵
【場所】浦添市 名嘉邸

支援 沖縄県、公益財団法人 沖縄県文化振興会
令和6年度沖縄文化芸術の創造発信支援事業  
「琉球の薬草を楽しむ暮らし」推進事業


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