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空間を構成する「素材」の力(リノベ)
こんにちは。一建築学生です。最近SNSでリノベ物件の動画をよく見るのですが、建築家の創る新築と同じくらいに「いいな」と思う機会が多いです。そこで今回は、僕たちが生活する空間を構成する建築は目に見えるデザインだけでなく、使われる「素材」も、僕たちの建築体験、暮らしに大きな影響を与えているのではないか、という事を改めて考えてみたいと思います。
建築学科では奇抜な建築が求められるケースが多く、以下に他と違った建物の形、コンセプトを考えることに注力され、模型やCG、図面を通した議論が繰り広げられがちですが、デジタルツールが設計やデザインの主役となる現代でも、建築が生み出す空間そのものは「現実」そのもの。現実の空間に触れる体験は、デジタル画面上では再現しきれない要素が多くあると考えました。その中で、「素材(マテリアル)」について、今回は取り上げたいと思います。
素材が空間体験に与える影響
例えば、建材や家具に使われる素材は、視覚だけでなく、触覚や嗅覚、さらには無意識の心理的な影響までも及ぼしています。ツルツルした表面とザラザラした表面、冷たい金属と暖かい木材。同じ空間でも、使われる素材が違えば、そこに生まれる印象や居心地が全く変わります。
一般的なマテリアルに加え、近年技術が発達する中で注目を集める面白い素材もたくさんあります。例えば、二酸化炭素を吸収して固化する「CO2-SUICOM」は、環境負荷を低減しながら耐久性も備えた次世代の建材です。https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202110/202110_10_jp.html
また、珪藻土の壁材は湿度を調整する効果があり、快適な室内環境を実現するだけでなく、自然素材ならではの温かみを感じさせます。他にも、リアルな木目を再現したタイルや、驚くほど軽量かつ耐久性のある複合素材など、新しい選択肢が日々増えています。
素材と豊かな空間の関係
建築デザインにおいて「豊かさ」を追求する際、奇抜な形状や派手な装飾に目を向けることもありますが、素材の選定もまた同じくらい重要な要素です。たとえ平凡な形状であっても性能が担保されるのであれば、デザイン面では優れた素材選びと適切な使い方に気を配ることで、居心地の良い、心地よい空間を作り出すことは十分に可能ではないかと考えます。
例えば、リノベーションプロジェクトでよく築年数の古いマンションのリデザインなどがよく見られますが、新築だけでなく既存の「建築ストック」をよくすることも、業界規模でいえば大きな意味があるのではないでしょうか。素材や間取りを変えることがメインになるので一般的な建築デザインとは異なりますが。素材そのものが人々の感覚に訴える力を持つことで、そこでの暮らしや活動を豊かにするのです。
自分自身の空間体験から考える建築の未来
建築設計を行う上で大切なのは、華やかなプレゼン資料やCGパースの美しさだけではなく、それに加えて「自分がどんな空間にいたいか」という問いに対しても、誠実に向き合う事を忘れないようにしたいです。素材を適切に選び、空間に命を吹き込むことで、住む人や使う人の感覚に寄り添った空間を作ることができるのだと思います。
デジタル時代の設計は、効率的で精密な表現を可能にしている一方、同時に見落とされがちな「素材の力」も学生の内から意識して目を向けたいと思います。豊かな空間は奇抜さや目新しさだけでなく、地に足の着いた設計と、細やかな素材選びによっても実現されるのではないでしょうか。
僕を含む建築を学ぶ学生は、この問いを自分自身に繰り返し問いかけることで、未来におけるよりよい空間づくりが可能になるのではないでしょうか。素材を通じて語る建築の物語。それこそが、これからの設計者に求められる姿ではないでしょうか。
次回は、僕がそのように考えた背景「建築学科の教育と社会情勢の変化」について考察したいと思います。