建築の使命を考察してみる【後編】
こんにちは。
【前編】では、建築分野、特に意匠にどんな需要があるのだろうか、という疑問をいろいろぶつけてますが、今回の【後編】では、僕なりに考えた結果にたどり着いた答え(暫定)を書いていきたいと思います。
このアカウントでは、いち建築学生として、建築分野における考察を週一回(理想)で投稿して言っています。講義内容、実体験、建築以外のニュースなどを横断的に考察することで、より広く深い視点を提供し、より建築の価値に気づき、興味が持てるようになることを目指しています。
建築が提供するのは「良い空間」
では、「良い空間」とはなんなのか。
資本主義社会の中では、建築を通して価値を生み出さなければ、建築は仕事として成り立ちません。そこで生み出す価値が「良い空間」と考えました。
これを考えるときに、合理性、経済性を最優先した建築を考える人がいるかもしれませんが、そうした建築は歴史の中で淘汰されてきたので、違うと言えるでしょう(産業革命期に人を詰め込んだ合理的な都市を構成した結果、生活の質が急降下し疫病が蔓延し「良い」とは言えない空間が発生していました)。では「良い空間」とは一体何かという事ですが、最終的には以下の四つに収束されるのではないでしょうか。
・対外的な安全価値(シェルターとしての機能)
・定量的な価値(実験、数値に基づく快適性評価)
・統計的な価値(ワークショップなど)
・情緒的な価値(定性的)
以上の内、上三つは定量的である一方、最後の一つは定性的であり、意匠はここに分類されるよな、というのが僕の結論ですね。
安全価値、定量的価値
大まかに、構造家の仕事が一つ目、環境家や設備の仕事が二つ目でしょう。これらは数字で客観的に妥当性を示すことができる(素人や僕のような建築初心者には理解は難しいですが)ため、ミスることがないというか、リスクを回避する上で非常に重要な分野であると言うことができます。正直、僕はつい最近まで建築の提供できる価値にはこの二つしかないと感じていて、とくに快適な空間を環境分野からアプローチしていく事に興味がありました。
情緒的価値
あと二つ、一番下の情緒的価値、について。
建築は新しく敷地に建つものですが、そこには地域の歴史を汲み取っていたり、ある種の象徴性が求められたり、そうした数字や目に表せない性質を形で表現することが求められます。実用書と小説の違いに近いと感じますが、そうした直接的な機能があるわけではない物の、形態がもたらす作用が、利用者の心に何かを働きかける、という事があるようですね。(解像度が低く、抽象的な言葉が並んでますが)
この形をしているからこういう情緒や表情が空間の中に生まれるのだ、というような事を求めている人もいて、それをかなえるのが建築化(意匠)の仕事といえるでしょう。
ワークショップ
そして、それにさらに説得力を持たせるための手法として、ワークショップなどがあるのではないか。意匠建築家は需要にたいする答えを提供する、という-→+の作業ではなく、むしろ何もないところに主もしないような価値を生み出す0→++の仕事なイメージがあります。これは建築化各々の感性や哲学によって差別化されるため、各々の良いと思う空間を「情緒」の側面から掘り下げ、具現化する作業が必要になります。そして、ワークショップはそれをより多くの人の意見で補強し、妥当性を担保するための作業として非常に価値がありますね。
意匠の情緒と、実社会で求められる性能や機能合理性をどう両立するのか、というのは今後も続いていく深刻な課題であるとは思いますが、建築家は機能性と快適性を備えた上で、更なる価値を提供できる分野であることも分かりました。「情緒」とは何なのか、より具体的に考えを深める必要性もあると感じましたが、学生のうちに、自分にとって良いと感じる「情緒」が何かをより深く思考してみようと思います。