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建築的思考とは何か

「デザイン思考」と「アート思考」
こんにちは。建築学科で建築を学んで3年目のRyukiです。ニュースを読んでいても、よく「デザイン思考」であったり「アート思考」といった言葉を耳にします。

こうした思考法が広まる、或いは注目される背景には、「イノベーション」に対する需要が高まってきたことが、大きな要因としてあると考えられます。
戦後日本の企業が築き上げてきた社会体制や、一企業の構造は、激しく変化する世界情勢、或いは技術発達の速度の中に追従することができておらず、今後の競争の中で生き残っていくには、抜本的な課題の発見や、それを破壊して再構成するだけの創造性、「クリエイティビティ」が必要だ、という事になったのが背景でしょう。

このように考えると、いずれの場合も、従来常識として扱われてきたものを根本的に変えていくためのスキルとしての「クリエイティビティ」が社会需要としてあるのだと言えます。

前段が長くなりましたが、そうした中で、僕の属する建築の分野では、時折「建築的思考」という言葉を耳にします。
 前述のような「○○思考」という言葉が広間てきた中で作られた、或いは多用されるようになった言葉ではあると思いますが、これはどういった思考法なのか、自分なりに考えます。

建築家は、カッコいい建物を作る、アーティストに近い存在、であるという認識の人も中にはいるかと思いますが、現在建築家が行う建物の設計は、それ以上に社会課題の解決や、仕組みとしての新しい価値の提供に重きが置かれていると学びました。

https://note.com/ryuki784/n/nb9124051eb6d


 また、の他にも建築家に求められる能力は

 ・建築に関する専門知識(図面、構造などのエンジニアとしての素養)
 ・美的感性 
 (少なくとも不格好なものを作ってしまわないくらいには必要です)
 ・場所性、歴史などの文脈を汲み取るスキル
 (建築は長時間一か所に建つことが一般的なので、その場所、人、環境などと調和することが求められます)
 ・解決すべき課題を発見する能力
 ・横断的に価値を生み出すための発想力
 ・建物を利用する人のことを考える想像力


など様々であり、建築の専門スキルだけでなく幅広い教養を兼ね備える必要があり、様々なところに思考を巡らせながら、ベストな建物を「形」や「仕組み」の面で提供しなければなりません。この設計過程で求められる思考法が「建築的思考」であると言えます。

それでは、そうした具体的な思考法とは一体何か。
この記事では文脈を読み取り、課題を発見する上で役立つ「発想手法」として、先入観を壊すことについて、講義で学んだことを基に少しだけ述べます。

先入観の破壊とは、これまで当たり前とされたた問題点に気づくことを意味します。たとえばレム・コールハース率いる「OMA」という設計事務所で新しい建物を作るとなった時、
 まず第一段階でこれまで建てられた似たような建物を思いつくだけとり上げるそうです。そして、第二段階ではそうしてそれらの建物を徹底的に評価することで、建物の設計をする中で避けるべきことを洗い出し、共通の問題点を発見します。逆説的かつ相対的に、これまでの課題を解決する建物の案を固めていくのです。

このプロセスは

「既成のモノの列挙」
「それらの問題点の抽出」
「逆転」


という三段階で、新規性と有用性の二つを兼ね備えた案を作り出す、「建築的思考法」の一つであると言えます。
この手法のポイントは、既存のものを並べ、問題を見つけることで、これまで見過ごされてきたポイントを発見できるところにあるでしょう。

実際クリエイティブなものが求められる中で、アート思考的に自分の中で「面白い!」と思うものを作り上げても、結局
 ・周りがやっていることと大差なかった
 ・新規性はあるが、それ以上に問題点の方が多く的外れなものだった
などという失敗を避けやすくなります。
 
こうした中で重要なのは、すでにあるものの問題点を発見する能力であると言えます。
「何が許せないのか」という問いを最初に立てることは、新しい価値を生み出すうえで非常に大切な作業ではないででしょうか。

この思考法は、知っているだけでは何の役にも立ちません。日々使ってみることで初めて自分のものになり、有用なものになりえます。
日常、或いは仕事の中で、何か「不便だな」と思うようなことが合ったら、似た事例について調べ、まとめ、共通する問題を発見してみる、という事が、新し発想を生み出すのに役立つのではないでしょうか。

次回は、その手法で何か身近な問題を発見して、新しいものを提案してみたいと思います。

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