上野三樹さん(音楽ライター/YUMECO RECORDS主宰)
もう何年も前に訪れたモンゴルで見たのは、そこで暮らす人々の生き方だった。
早朝から牛の乳を絞り、馬に乗って出かけ、山羊の肉を削ぎ、日に焼けた顔で笑う人たち。
ゲルの小さな扉からは緑の大地と青空がまるで絵のように果てしなく広がっている。
日々を生きるためのたくさんの仕事と、まるでご褒美のように美しい夕焼けと星空と。その色濃いコントラストを全身で感じることがその旅の醍醐味だった。
以来、どこかの国にでかけることがあっても観光地を訪れるより、ただ散歩をして路地の隙間にある人々の暮らしを感じるのが好きになった。
どこにいても時々、朝が来るたび、夜になるたび、どこかの国で見たどこかの誰かの暮らしを思い出すのです。
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三樹さんとの出会いは、ニッポン放送のミューコミという番組のコーナー。
2006年にリリースした僕のデビューアルバム『僕のアパートに彗星がおちた日』に収録されている"Home"という曲をとにかく褒めてくださった思い出がある。
愛の唄を歌おう、と連呼するバラードだった。
あれからずっと三樹さんに新しい曲を聴いてもらう時は少し緊張する。
僕の中に三樹さんというモノサシがあって、
ちゃんとそのモノサシに許しをもらえるだけの愛がこのメロディには詰まっているかどうか
そんなことを勝手に脳内で巡らせる。
三樹さんは母になって、ものすごく変わった。
変わったというより、元あった芸術的感性に加え強力な母性がそこにブレンドされ、
ある境地を飛び越えた"強く儚い生きもの"という雰囲気を見にまとった。
より新しい曲を聴いてもらう時のハードルが上がったじゃないか。
それは全て僕が勝手にこしらえて積み上げたものなのだが…
年々、音楽が好きになる。
だから、年々三樹さんと話すのが楽しくなる。
ryuji