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synactive2023

10年に一度集まり、互いの仕事を問い直す

今から20年前、松川昌平さんが主宰した2003年末に開設され、2008年まで続いた「synctokyo」というシェアオフィスをつくるプロジェクトに参加させて頂いた。その時出会った田畠隆志・田中浩也・田中元子+大西正紀・脇田玲・松川昌平・漢那潤・藤村龍至の7組8名で「synactive(シナクティブ)」というイベントを開催した。

synactiveはいわゆる忘年会で、年末にそれぞれの仕事を発表し、互いにレビューし合うイベントであった。2004年末から4年ほど続き、メンバーはもちろん、メンバー以外の人が加わってプレゼすることもあったが、基本は何がやりたいのか、それは新しいのか、と互いに厳しく問いかけるのが流儀で、夜中まで続く議論の場であった。

synactiveの開催は2014年以来なのでおよそ10年ぶりであった。今年がsync開設20周年ということで「synactive2023」を開催することになった。会場は田中+大西が運営する「1階革命」の聖地「喫茶ランドリー」である。それぞれがこの20年を俯瞰し、今後の20年を展望することになった。

松川さん発表。パーソナルインフラについて

前回の2014年末時点ではメンバーのほとんどは30代であり、半分が大学で教えるようになっていたが例えば漢那は沖縄に移住を計画したり、田中+大西がアーバンキャンプをしてまちに関わる主体性に目覚めたり、ちょうど転機を迎えていた頃であった。メンバーもいまは40代も後半であり、気がつけばアートから都市計画まで、そしてローカルからデジタルまで、幅広くカバーするようになっていた。

10年間の飛距離

活動の幅はそれぞれ拡がったのだが、田畠が構造設計の面白さを伝えたいと田中+大西のような職業への奉仕をいい出したり、漢那が「新民家」という松川が研究で発表していたようなパラメトリックな住宅設計のシステムを沖縄で展開していたり、田中大西と藤村がウォーカブルなまちづくりに取り組んでいたりと、離れて活動しているのにもかかわらず仕事の領域は少なからずシンクロするようになっていた。

シンクロしているだけでなく脇田や松川が請負ではなく作品に集中すると言えば田中浩也が研究者としてあえて請負に取り組むと言ったり、漢那と田畠がRCが主流の沖縄で木造に取り組むといえば田中浩也が再生プラスティックとロボットによる型枠のベンチャーに取り組むと言ってマテリアルの循環をめぐって議論が起こったり、藤村が超都市といえば田中浩也が鎌倉を例に中都市と言ったりした(こうして書いてみると田中浩也の批評的な立ち位置が改めて面白い)。

質問やコメントは互いに遠慮なく

私はといえば前回の2014年末はフリーペーパー『ROUNDABOUT JOUNRAL』からの議論をもとに『批判的工学主義の建築』『プロトタイピング』を上梓した頃で、2010年に着任した東洋大学で始めた「鶴ヶ島プロジェクト」の成果として「鶴ヶ島太陽光発電所環境教育施設」が竣工した頃であった。またプライベートでは父を亡くしたことで人生の終末というものを意識するようになった頃でもあった。

あれから約10年、東京藝術大学に移籍し埼玉から離れ、九州で仕事をするようになり、ローカルコミュニティと協働することが多かった埼玉とは異なり、九州では構造家との協働で先鋭的な形式の建築作品を実現するようになった。宣言した単著10冊・自邸・公共施設単独受注のうち、前2者はまだ途上であるが、公共施設の単独受注は無事果たし(「大宮駅東口おもてなし公共施設」2017)、2020年には奈良県十津川村の災害対策本部庁舎の設計プロポーザルで設計者に選定され、前後して各地の自治体からまちづくり関連の業務を数多く受注するようになった。やはり「10年ひと昔」とはよく言ったものでそれなりの飛距離があるものである。

超都市のイメージについて問われ答える

30代は理論、40代は作品、50代は公共、60代は海外だと考えてきたので次の10年の目標は「超都市の建築」を具体化すること・作品集を出すこと・海外で受注することとした。現時点で「超都市の建築」はまだ朧げではあるが、20年後にいま取り組み始めた大宮、岡崎、所沢、上野、神戸でのまちづくりが形をなす頃なので、そのあたりで理論から実践までを含めた建築家としての全体像が明らかになるだろう。

ラストに感想を述べ合う

相互レビューの場を維持する

研究者には学会があるが、作家にとって仕事の内容にレビューしてもらえる関係を確保できるかは重要な課題だ。同業者だけだと事務所経営の愚痴、大学運営の愚痴などに終始しがちであり、大学の研究室の同窓会なども親しい人に会いに行くだけで仕事の内容に踏み込む関係は作りにくく、案外難しいものである。

個人的にも30代の頃から「議論の場を設計する」と自覚的に活動を続けてきたせいもあり、いまも時々仕事の近況報告やレビューをするコミュニティはいくつかあるのだが、例えば合同でゼミを10年ほど続けているGDZは全員が大学の先生、同世代の建築家で集まる76会は全員が建築家なのに対し、 syncのメンバーは7組8名中大学の先生は半分、大半が会社を経営しているがいわゆる建築設計業は半分、と絶妙なバリエーションがあり、たまに仕事を一緒にすることもあるがふだんは程よい距離があり、10年に一度という間隔も刺激を与え合う関係としてちょうどよいのかもしれない。

かつては雑誌が盛んに座談会を組んでいたが今はそれも少ない。また既存の相互レビューの機構としてはアワードなどもあるが、一般的にアワードとはだいたい10歳くらい離れた建築家同士で上から下に贈るもので明確なヒエラルキーがある(が故に社会的には明快な承認機構になる)。

というわけで作家にとって大事なことは20代の頃に程よい仲間に出会い、相互レビューの習慣をつくること、30代、40代では緊張感を維持しながら(褒め合いにならないように)互いの仕事をレビューし合うことなのだろう。50代以降はどんな感じになるのかわからないが楽しみにしておこう。

ちなみに、かつては朝まで続けていたが今回はスライド20枚20秒の強制送り、25分ひとコマのスケジュールとしたが、これがきちんと機能して驚いた。メンバーも多少は大人になったということなのだろう。17:00スタートで休憩やまとめを入れても21:00にぴったり終わり、その後多少飲んでも終電で帰れる。これなら続けられそうだ。

20年前、あの場を始めて下さった松川さんに改めて感謝します。20年後、また笑いとともに互いの仕事の成果を共有し、遠慮なく問い合う関係をこれからも維持しましょう。

集合写真をキメる


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