【ショートコント】不完全な入れ替わり

〔登場人物〕
姉：高一。二段ベッドの上で寝ている。
弟：中一。二段ベッドの下で寝ている。

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姉：（寝起き。跳ね起きる）うわーっ！　……夢か。変な夢だったな。チョークの代わりにうどん？　なんで、黒板にうどん貼ってんの？　まあ、線が太くて見やすかったけど。
弟：（二段ベッドの下から、あくびまじりに）なんだよ、ねえちゃん。朝っぱらからでかい声出して。
姉：変な夢見ちゃってさ。チョークがうどんなんだよね。
弟：意味不明。それより、風邪ひいた？　声おかしいよ。
姉：（咳払いをする）ほんとだ。喉がおかしい。（喉を触る）何か、すごい腫れてる。骨みたい。ヤバいかも。
弟：うつすなよ。
姉：それより、おしっこ行きたい。下半身がおかしい。
弟：そういうこと言うなよ、恥ずかしい。黙って行けよ。俺、もうちょっと寝るから。（布団をかぶる）
姉：うわあ！　なんじゃこりゃあ！
弟：言葉遣い！　そんなことばっかり言ってるから、声がおっさんみたいになるんだよ。
姉：（二段ベッドの上から弟を覗く）ちょっと！　わたしの顔、どうなっちゃってんの！
弟：（布団を剥いで顔を見せる）何言ってんだよ！
姉：（弟の顔を見た瞬間、指を差しながら）あー！
弟：（ほぼ同時に）あー！
姉：わたしの顔！
弟：いや、そっちこそ、それ俺の顔！
姉：何で？　これ、体が入れ替わってんの？
弟：そんなこと、ある？
姉：ちょっと待って。あんたの声、おかしくない？
弟：え？　何？　あー、えー、そばー。焼きそばー。……あれ？
姉：（頭を抱える）いやだー！
弟：何だよ、ねえちゃん。
姉：わたしの顔から、弟の声がするー！
弟：（顔や体を触りながら）そういうことか。体はねえちゃんなのに、声だけ俺だ。
姉：体、触るな！
弟：定番のやりとりだな。
姉：なんで、わたしのかわいい顔から、あんたのもっさい声が聞こえてくるの！
弟：他に気にすべきところあるだろ。
姉：わたしの声は、どこいっちゃったの！
弟：もしかして、他にも入れ替われてないところ、あるんじゃね。
姉：確かめんな！　体、触んな！
弟：うるさいな。（髪をかき上げる）あ。
姉：もう、しゃべんないでよ。
弟：髪質が、俺だ。
姉：うわー！　最悪すぎ！　今使ってるトリートメント、めっちゃ高いやつなのに！　返してよ！　トリートメント代、返してよ！
弟：金かよ！　てか、ねえちゃんの髪、どこ行ったんだろ。そっちの頭にあんのかな？
姉：坊主じゃ確かめらんないじゃん！　なんで野球部なんか入んだよ！
弟：いや、坊主だけど、野球部じゃないから。サッカー部だから。
姉：サッカー部なら、サッカー部らしく髪伸び散らかしなよ！
弟：あっ！（おもむろに顔を触る）よかったー。
姉：何が！
弟：ひげ、ちゃんと生えてる。最近、やっと生えてきたところだったんだよね。
姉：あんたの思春期に、わたしの顔を巻き込まないで！
弟：他の毛はどうかな。
姉：やめろ！　毛の話はすんな！
弟：分かったって。まあ、そのうち元に戻るだろうし。
姉：これ、ちゃんと元に戻るの？
弟：俺が知るわけないじゃん。
姉：だったら、わたし、もうこのままでいい。ぼさぼさ髪で、ひげ生えてて、声がおっさんの女の子になるぐらいなら、ぼさぼさ髪で、ひげ生えてて、声がおっさんのおっさんになる方がいい。
弟：中一つかまえて、おっさんはやめろ。
姉：あ！　いいことおもいついた！　わたし、最強に頭いい！
弟：やめて、それ。めっちゃ頭悪そうに見える。
姉：うどんを食べればいいんだ！
弟：は？
姉：夢が伏線になってたんだよ！　黒板に貼り付けられたうどんを食べれば元に戻るにちがいない！
弟：俺の顔でこれ以上バカなこと言わないでくれよ。あーあ。脳みそも入れ替わってて欲しかった。

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