正社員雇用の「有期化」を行います
こんにちは、南部です!
当社は、令和6年1月より正社員雇用を「有期化(1年更新)」とする方針を決めました。
判断に至った背景や想い、ありたい姿をまとめたいと思います。
個人的には時流や価値観が変容する中で最適を模索すると、当社だけではなくこのような着地に行き着く企業も少なくないのではと考えてます。
特に高い成長性を目指すような企業体(スタートアップ企業)では!
一般的でしかない"正社員"という枠組み
前提となる制度理解について認識合わせです。
少し硬い話になるので、ここスキップいただいてOKです!
そもそも正社員という言葉は労基法等の条文には定められていない
「正社員とは?」を公的文章で検索すると、厚生労働省自身でも“一般的な“という表現を活用してます。
下記のとおり記載があります。※添付赤枠
その中でも、今回は「①労働契約の期間の定めがない」に対して、HANOWAの人事制度の改訂の話です。
“一般的な“という時代の産物
そもそも労基法等の条文等に正社員という言葉はない、に集約されるのですが、雇用の枠組みとして正社員という言葉がないという理解です。
あるのは「人を雇うときのルール」に記載のように、[労働契約の締結][就業規則][労働保険社会保険][障害者の雇用義務]など、仔細なルールのみ。
つまりここでの主張は、雇用の枠組みは本来柔軟性があるということ。
そして、現行の雇用形態※1は時代のニーズにより作られたものである、ということです。
※1.現行の雇用形態の歴史
デスクトップリサーチしました。興味がある方は見てください。
1940年代後半:「アルバイト」が初めて使われ始めた
1955年: 「パート」という呼びかたが定着してきた
1980年前後:「正社員」という用語が一般的に定着してきた
2013年:「限定正社員(勤務時間限定正社員・勤務地限定正社員・職務限定正社員)」が政府の規制改革会議などで推進の方針が示された
その他
「正社員時代の終焉」もよくまとまってます。
解雇規制の緩和?について
こうした雇用契約に関する意思決定は、解雇規制とセットで議論されますのでその点も触れておきます。
雇用の安定の観点から、企業は安易に解雇できない制度(労働法)となっていることを前提に、今回のように期間を設けることで、解雇規制の緩和を図る判断ではないかとの見方もあると思います。
結果的に、本決定により一般的な正社員雇用(無期)よりも企業の解雇に対する難易度は下がると思いますが、主旨ではないことはお伝えしたいです。
そもそも解雇を「契約終了」という文脈で言えば、企業からスタッフに対する提示だけではなく、逆に更新のタイミングでスタッフから企業に対して更新拒否の提示の場合も当然ありうると考えてます。
そのため、詳細後述しますが主旨は解雇規制の緩和ではなく、組織における怠惰の発生予防であり、組織の温度管理です。
また今回の意思決定を前提にしても、制度上には解雇権濫用法理※2という概念があり解雇規制の難易度は維持されていると考えています。
※2.解雇権濫用法理
雇用主が不当な理由で従業員を解雇することを禁止する法的原則で、解雇はその事由が社会通念に照らして相当かという判断になる、という主旨。
今後の[HANOWAの正社員]とは
制度的な↑前提を踏まえ、HANOWAの正社員についての詳細です。
改定後も、一般的な正社員とほぼ変わりないです。
1点だけ全員の雇用契約書へ下記文章が追加されます。
一般的には、契約社員(という表現も条文内にはなく“一般的“な定義)という表現に近しいかもしれません。ただ契約社員というと、社会通念的には正社員よりも負担の少ない業務を受け持ち、賞与(の有無)が正社員と異なる役職、というイメージかと思います。
HANOWAには、一律の雇用制度となるのでそのような差はないです。
契約形態関わらず関わる皆が同列で、事業や組織、マーケットに対して価値をより提供できる方が評価されます。
本取組みの[目的]
何のためにやるのか?
目的は、企業とスタッフの間で適切な緊張感がもたらす、組織の温度の維持です。その実現の為に正社員に対しても、契約更新というセレモニーを意図的に設計し対策の1つとしました。
書籍【組織 ~組織という有機体のデザイン~】の著者 横山 禎徳氏は、人に対する見方を性悪説や性善説でなく「性怠惰説」と表現されます。
人は善悪併せ持つ生物であって、向き合うべきは怠惰であり、それは仕組みで解決すべき、と。
この考えがしっくりきてまして、組織に発生する怠惰の予防として、更新するか否かを確認するセレモニーが中長期の観点で効果を発揮すると考えています。
スタートアップ企業は、年次2~3倍で事業成長をすることを理想とされています。T2D3と表現されますが、PMFの後にARR(年次経常収益)を「3倍、3倍、2倍、2倍、2倍 (Triple, Triple, Double, Double, Double)」のペースで毎年成長させることが理想値です。
その事業成長角度を支えるのは、組織、そして関わる個人の成長(もしくは新規採用)しかないと考えてます。その必要要件に、まず怠惰は発生させてはいけない、企業とスタッフ双方に対して発生する可能性をできる限り低減できる環境整備をすることが今回の目的です。
なにを守りたいのか。[背景や目指すあり方]
大きく3点、この意思決定に至った背景や目指すあり方を説明します。
1.フリーランスと正社員のいいとこどり、な状況
「フリーランスと正社員のいいとこ取り?」というワードを当社エンジニア佐々木が以前インタビューでHANOWAの組織を表現するために活用してました。
このワードが個人的に気に入ってまして、自立を前提とした自由と責任の調和みたいなものを発言した佐々木個人としても、その周辺にある組織としても感じました。
これを維持し守っていきたい、と思っていたことも理由の一つです。
明確な課題解決というよりも、いいとこどりな状態を失いたくないという予防に近い感覚があります。
2.「企業と個人」の「健康と健全」を守る
「HANOWAという組織」と「HANOWAに関わるスタッフ個人」のあり方の話です。適切な状態は、企業と個人が健康と健全であることだと思っています。
まとめると
肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、物事が正常に機能してしっかりした状態であるさま
となります。だいぶマッチョな印象持ちませんか??自分の人生生きてますか?と!
これが前提なのです。目標ではなく、前提!
この前提を維持するために、規定や制度やルールを駆使し組織デザインを行い、組織の体温を保っていく必要があると思ってます。
逆に、「こういう状態を拒否したい」という例を参考までに。
一昔前に聞きなじみのある「窓際社員」や「社内ニート」という状態は適しないと考えています。
また1998年からフジテレビ系で放送されていた、「ショムニ」というドラマご存知ですか?
江角マキコさん主演のドラマで、Wikipediaにはこう説明があります。
「掃き溜め」的部署。絶対ダメですね。このような部署ができるくらいなら、痛みを伴う変革も必要だと考えます。
3.HANOWAという組織の哲学を守る
HANOWAのMISSIONは、「自分の人生を生きる勇気と機会を届ける」です。
こちらをHANOWAという組織の哲学に言い換えるならば、例えば勝ち負けなどにこだわっていないということです。極論HANOWAという事業が、頓挫しても構わないということ。ただし勝ち負けには拘らないけど、挑戦をし続けることは必要だと読み解きます。
その哲学を継続することで、事業が頓挫してもまた新たなストーリーが展開されて「自分の人生を生きる勇気と機会を届ける」が続いていくと考えています。
もし、「窓際社員」や「社内ニート」、「掃き溜め」的部署がHANOWAの中に存在するのであればそれは惰性であり、哲学を守りきれていないことになります。
企業と個人の健康と健全を考えると行き着くシャウト[違和感]
最後に本方針に至るまでの、「”一般的な”雇用制度」で運用していくことで感じていた違和感を説明したいと思います。
1.登山の何号目かで求められるものが違う
例えば上場を目指す会社をイメージすると、[黎明期に求められるスキル]と[上場直前に求められるスキル]は全く違います。
ビジネスという山を登山する際に、1号目に最適なスキルや人材と、9合目に最適なスキルや人材は全く違うということです。
もちろん求められるものの変化に対し、個人のスキル変化はもちろん期待したいし会社も支援できるならしたい。が、そこまでの変化に耐えうるのか?というぐらい[求められるスキル]は異なります。
そのような状況の変化の上で、適材適所でない布陣にて企業の健康と健全さ(事業の成長性・収益性・安定性)は保たれ続けるのか?
会社だけではなく、スタッフ個人の観点でも同様のことが言えます。
自分の人生という山があったとして、1号目と9合目で経験値やスキル、財産等全てにおいて景色が変わる中で、変わらず同じ環境と人々と共にすることが正解であるわけがないです。(正解の人もいる)
ここに個人としての健康と健全さは保たれ続けるのか?
2.「弱い立場」の変化
労働基準法などの[労働法の役割]には下記が明記され、労働者は守るべき対象として明記がされています。
産業によって、そのような状況が起こりうるのは理解します。
ただ当社含む短期間で高い成長性を目指す企業、組織に高度なストレッチをかける企業体では、会社規模よりもさらに先をいく人材要件を定めますので、求める人材の水準は高まり引き合いは凄まじいです。
当然、その業界業種にそのような人材を招き入れることを優先するため、初期は役員よりも給与水準が高いなんてことは当然に発生します。また、ストックオプションの普及により給与報酬以外のキャピタルゲイン収入の機会も増え、一部経営層の旨みもコモディティ化へ向かいます。
つまり機会(引き合い)と報酬(旨み)は、企業と個人とで差は無くなっており、「弱い立場」という表現が合致しにくい場合もある、ということです。
この実態とアンバランスな側面のある[労働法の役割]の上で、「企業と個人」は「健康と健全」な関係性で居続けることができるのか?
3."一般的な"正社員以外、みんな有期
仕事に従事するという観点では、日本中の経営者(経営陣)、アルバイト、パート、業務委託等、みんな期間を与えられてます。
正社員雇用者を除いて!正社員雇用者だけが、無期という存在ですね。
みんな任期や期間があり、パフォーマンスをもって更新の有無を計られます。
現行制度に至ったいろんな背景や、雇用形態を選択した個人の状況は察する努力はしますが、言い換えれば「無期限に給料を貰い続けれる制度?」。ここだけ切り出したら、制度のあり方に健全さにかけませんか?怠惰は生まれませんか?
諸行無常と盛者必衰[まとめ]
最後に腹落ち感向上を目的に”締め”を模索したら『平家物語』の一文が降ってきました。
※「諸行無常」世のすべてのものは、移り変わり、また生まれては消滅する運命を繰り返し、永遠に変わらないものはないということ。
※「盛者必衰」この世は無常であり、勢いの盛んな者もついには衰え滅びるということ。
要は「物事は移り変わるし、勢いの盛んな者もいつかは衰え滅びるよ」と。日本人の大多数に刷り込まれたこの文章においても、「無期なんてない」とおっしゃってます(強引)
この意思決定もまた無期限に影響を与えるものではないと思ってます。HANOWAの哲学(挑戦)を体現するものとして、理想を追求し(状況に応じ変更が加えたい)たいと思います。
以上!