授業のあいさつで子どもが注意するアレ
ご無沙汰になってしまいました。ふと感じたことを思い綴ります。
よく授業のあいさつで、子どもがクラスメイトを注意する場面ありませんか?アレってみなさんはどう思いますか?
私は、子どもに注目を与えてしまう要因になってしまっているケースが多いです。4月から継続している学級をいくつか拝見するのですが、行動改善に至っていないように感じます。
経験則だけで話しても仕方ないですので、研究の力を借りましょう。以前に渡辺道治先生のこちらの書籍を紹介しました。
こちらをヒントにして、行動改善に至らない理由と改善方法を導いていきたいと思います。
1.行動改善につながらない条件
まず、「行動」そのものに焦点を当てていきます。
行動には必ず、目的が備わっています。それは、
避けようとするため
何かを獲得するため
の2点です。ここには人間の不快感が関わっているのではないかと考えています。苦手な人、嫌いな人をを見つける遠回りする、鹿威しの音が心地よくて、ついつい足を止めるなどです。
そして、この2つの目的をさらに細かく分けていくと、4つの行動機能に分類できます。
2.4つの行動機能
渡辺先生が提案する順番に紹介します。
2-1 逃避行動
読んで字のごとく、逃げる・避ける行動のことです。基本的に人間は不快感の覚えるものは避ける傾向にある生き物です。歯磨きが口にある感覚を恐れて、歯磨きを避ける子どもがいます。ジェットコースターの早いスピードや高所が怖くて、乗るのを避ける人もいますよね。これが逃避行動です。
2-2 要求行動
次は要求行動です。自分自身の要求を通す目的があります。大きな声でやりたいことを主張する、自分が先にやりたいから友達を押す、がんばったからご褒美を求めるなどに当たります。
そしてこれの典型的な例が、「おもちゃを買ってもらいたくて、だだをこねる子ども」です。みなさんだったら、どうしますか?3章で触れるので、少し考えてみてください。
2-3 注意喚起行動
いわゆる「私を見て!私を認めて!」タイプです。エヴァであれば、アスカがこれに当たります。(マニアックですみません。)
褒められたくて描いた絵をもってくる、すぐに先生のところに話をしてくる、突拍子もない発言をして笑いを得るなどです。このタイプは、どの教室にもいるのではないでしょうか?
赤子は発言がうまくできないため、自分に注目をひくのは難しいです。ですから、「泣く」という行動が備わっているのかもしれません。
2ー4 自己刺激行動
これは若干性格の異なる機能です。よく椅子の前足をあげて、ゆらゆらしている子いませんか?そして、ガタン!先生に注意される…という一連の流れは教室あるあるですね。
これは自己刺激行動というものです。特定の行動をすることで、自分に快の刺激を入力をします。椅子ゆらゆらって、ちょっと楽しいですよね。
ニトリのNウォーム、ふかふかで気持ちいですよね。ついつい触りたくなってしまいます。赤子のほっぺも触りたくなりますよね。自分の五感を通して、心地よさを感じるための行動機能になります。
3 それぞれの対策
では、学校現場でどうしたらいいのかは渡辺道治先生が詳しく教えてくれますので、ぜひご覧ください(笑)
ここでは、ざっくりとだけ書きます。
逃避行動:逃避先よりも教室に価値がおけるように環境調整をします。逃避して快の入力が少なければ、強化されにくいです。
要求行動:一切合切とりあいません。要求する気持ちには理解を示しつつも、その行動の仕方が間違っています。駄々をこねても、やんわりと「そんな言い方じゃなくて、優しく教えてくれたら考えてあげる」と返します。子どもは「この要求の仕方じゃ叶わない」と学習していきます。反対に、本来間違っている行動を許容してしまうと、行動改善は難しいです。
注意喚起行動:周囲から目線を集めることで、快の学習をしていきます。これを利用します。間違った注目の集め方をしている場合は、やはり取り合いません。ポジティブノーリアクションです。手で制止する、スルーをする、視線を向けないなどです。「無視するのか!」という主張もありそうですが、望ましい行動には力強く注目をあてます。視線を集めるのがねらいなのですから、そこに望ましい行動とセットにしてあげます。
自己刺激行動:快の入力場面を意図的に設定します。あえて、立つ時間をとる、音読のときに立つ、座るを繰り返す、5回手をたたいたら立つなどです。ADHD傾向のある子どもに対しては、動きを伴う活動を時々いれるといいそうです。
4 授業のあいさつで子どもが注意するアレ
では、冒頭に話した場面は、どの行動機能に当てはまるでしょうか?
まず、注意される側の子どもです。4月から言い続けて減っていないのであれば、注意されていることが快の入力になっているかもしれません。あいさつする人が「Aさん、手を止めてください」「Bさん」など名前を言って注意します。すると、AさんとBさんに注目が集まりますよね。仮に周囲が前を向いて、背筋を伸ばしていたとしても、名前は教室に響き渡ります。
よって、注意喚起行動として、おそらく手を動かすなどで注目を集めている可能性があります。
また、注意する側。こちらはどうでしょう。少しならいいのですが、やや過剰じゃないかってくらい注意する子もいます。前に出て、だれか合法的に注意できる環境です。その瞬間はあいさつする児童の思うがままです。注意される側とは、やや異なりますが注意喚起行動か自己刺激行動(注意することが楽しい)のかもしれません。
では、どうするのかというと注意させないのが手っ取り早いかと思います。そして、すぐに授業が始められるように仕組みます。
ねらいは短い休み時間の5分休みです。中休みと昼休みはおいておきます。1時間目の授業が終わるときに、こんな感じで語りかけてみます。
「よくさ、授業のはじまりのチャイムが鳴った時に、困ったことが起こりやすい。なんだと思う?」
と聞けば、チャイムが守られていないことや授業準備ができていないことを言う子どもはいるでしょう。
「そうだよなあ。先生も思うんだ。だからさ、次の時間はできるように準備しようよ。」
と、これでもかってくらいアシストします。物を出させて、トイレ行かせて。絶対にチャイムスタートのあいさつをします。
チャイムが鳴りました。「いい姿勢をしてください!」という号令とともに、
この姿を大いに褒めます。
「そうだよ!これ!」
褒めているときは、不思議と子どもたちは姿勢を崩しません。これが望ましい姿ですから。注意喚起行動をよくする子には、自然と目線を合わせてあげてもいいですね。そしてあいさつをして、こう語ります。
「問題なくあいさつができるときって、こんな感じよね。でもさ、あいさつするぞ!ってときに注意が入ると、集中力持たないし、がんばるぞ!って気持ち保てないよね。だから、チャイム→あいさつを短くして、集中力を高めよう。」
短くて雑なら、「本当にそれで、集中して勉強できるの?中途半端な気持ちで学んでも、自分のためにはならない。」「本当に、それって〇年生としてふさわしいの?」「さっきはできました。もう一回できる?(できたら)それ!続けていこうよ☆」と指導すればいいです。
そして、確実に繰り返していけば、どこかで小さな蕾が花を咲かすように、少しずつ指導したことが結実します。子どもの姿で現れる日が来ます。そんなときに、
「(あいさつ後)先生、感動しちゃった。今ね、〇〇さんが本当にまっすぐな気持ちであいさつをしているのが、その姿を見てよくわかった。前はさ、注意していた(されていた)ときもあったけど、あの頃から大きく成長したんだね。僕と握手してくれないかい?君の成長を心から喜びたいんだ。」
とこれでもかというくらい、賞賛の言葉をあびせます。この子どもが、注意喚起行動をする子どもなら、なおさら効きます。確実に注目を浴びているからです。そして、だいたいこういうタイプの子ども自己肯定感が低い傾向にあるような気がします。
ここまでをまとめると、
①まずは間違った注意を集める要因を作らない
※もちろん子どもに「無視しよう」とは言えませんが、そこは腕の見せ所
②クラスの実態と掛け合わせせる(あいさつ)
③望ましい行動を教え、繰り返す
④自然とできるようなった瞬間を見逃さず価値づける
というようになります。
5 その指導・活動の意図は?
初任4年目の授業公開した際に、とある方が話していたことをよく覚えています。
「指導すべてに意図がある。」
です。
ならば、子どもがあいさつするときに注意するシステムには、何の意図があるのか考えてみましょう。もちろん、注意する子を育てるためではないと思います。もしかしたら、「子どもがきちんとあいさつできるようにするため」と答えが返ってくるかもしれません。であれば、それは先生が指導するべきです。意図せず続けていけば、悪いところばかり見つけるクラスになってしまいます。
6 おわりに
今回話した4つの行動機能を知っていると、子どもの見方、授業の見方が変わります。うまくいっていない学級には、どこかしら要因があります。子ども本人にかかわることもありますが、意外とその要因を先生が生み出してしまっていることも少なくないです。自戒の念をこめて、
①4つの行動機能を念頭に、子どもと接する
②それを踏まえて、どのような対応・指導をするのかを考える
というようにしていくと、行動改善につながりやすいように思います。今回もお読みいただき、ありがとうございます。
【参考文献・サイト】
ABAスクールTogether(2024)「困った行動を良い行動に変える方法 behavior intervention」ABAスクールTogether,https://www.togetheraba.jp/post/behaviorintervention(参照2024-11-13)
渡辺道治(2024)『発達が気になる子の教え方 THE BEST』東洋館出版社
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