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出猟(カモ撃ち)

夜明け前が一番寒い・・・。
銃猟は日の出から日の入と定められており、危険防止の為、発砲が禁止されている。
溜池の手前で車を停め、茂みに隠れて日の出を待つ。

「日の出だ。弾をこめて、静かに前進!」
師匠に言われるまま、弾をこめるが、寒さにかじかんだ指先は弾よりも固くなかなか入らない。
「いいか。見つけたらすぐ撃て!こっちに気づかれたらカモは一瞬で逃げる!」
まだ薄暗い溜池に銃口を向けたが、カモはいない。
「よし、次行こう。」

2~3ヶ所猟場を変えたが、まだカモに出会えてない。
辺りが明るくなり初めた頃、山辺の溜池に着いた。
今度こそ、いるカモ?。
銃口を水面に向けるが・・・・・
鏡の様な水面にはカモの姿はなく、朝日が輝いていた。

次の猟場は川辺だ。
いた!10羽の群れだ。まだこちらには気づいていない。
銃口を向けるが、竹藪が邪魔で定まらない。
藪をかきわけて水辺に出た時には、すでに遅し。
大空へ飛び立っていた。

人間よりも遥かに優れた視力を持つカモに近づくことは、簡単ではない。
見つかる前に撃つ。奇襲だ。
何度も猟場を変え、師匠と100m程離れて同時に銃口を向ける。どちらかが外せば、発砲音で飛び立ったカモを撃ち落とす。
しかし、周囲に民家や建物があれば発砲してはならない。
近隣住民から通報されるケースもある。
今回の猟では師匠が3羽獲った。
僕は1羽も獲れず・・・。
二人で毛むしりをし、師匠が解体。
僕の羨望の眼差しを見て、
「いる?」
「一番小さいの下さい・・・」

高速道路で1時間かけて6時半に待ち合わせ。
7時から14時まで、昼食もとらずに猟場をぐるぐる回ったあげく、満タンだったガソリンは5分の1まで減っていた。
「肉なんてスーパーで買えばいいじゃないか」
その通りだ。お金があれば何でも買える。
お金があれば人生も何となく進んでいくが、お金で解決したくない。
自分の力で生きている実感が欲しいからやっているんだ!
と、自分に言い聞かせながら、ガソリンメーターのように気分も沈んだまま帰宅。

カモはオーブンで焼いて美味しく頂いた。
ご馳走さまでした。

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