コミュニケーション場のメカニズムデザイン
こんにちは、石川竜一郎(@mxb02762)です。大学で経済学を教える傍ら、SciDe Lab 株式会社ファウンダー兼取締役を務めています。SciDe Lab.は、経済学を用いて社会問題の解決を行うために立ち上げられました。
この度、「コミュニケーション場のメカニズムデザイン」という本を慶應義塾大学出版会より谷口忠大さんとの共編著で上梓させていただきました。
私の専門であるゲーム理論を用いたコミュニケーション研究としては、チープトークゲームやベイジアン説得理論などが主流です。しかし、この本で対象とするコミュニケーションはより実践的な場を想定しています。
例えば、共編著者谷口忠大氏が考案したビブリオバトル。みんなに読んでもらい本を紹介しあい、みんなが最も読みたくなった本を投票で決定します。また、現在では全国大会まで開催されているパーラメンタリーディベート。共通の論題を賛成派と反対派に分かれて議論をし合います。議会にも似たこうしたコミュニケーションを体験された方も多いことでしょう。さらには演劇ワークショップや発話権取引など、目新しいコミュニケーション場も紹介されています。
これらのコミュニケーション場に共通することは、必ず場に何らかのルールが設けられていることです。こうしたルールの必要性は、重要な議論や情報を皆でできるだけ効率的に正しく共有したいという考えにもとづいています。そのためには話者にとっては話しやすい状況を、聴衆にとっては意見や情報を収集しやすい状況を設計する必要があります。その設計を、経済学で研究された「メカニズムデザイン」の考え方にもとづいて行おうと試みているのが本書です。
本書を読んでいただくとわかりますが、コミュニケーション場の設計では考えるべき要素が、経済学のメカニズムデザインよりも多くあります。例えばディベートや演劇ワークショップに見られるように、話者になんからの「役割を与える」という点は、経済学のメカニズムデザインでは考えられていません。しかしこうした役割を与えることで、個人として言いにくい意見を演じている役割の立場で発言することができ、多様な観点を提示することも可能になります。
社内の会議や組織内のコミュニケーションに何らかの難しさを感じている皆さんの解決のヒントになればと思います。