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ライバー×アシスタント物語②


初配信

ポコチャでは、初めて配信をする枠にはたくさんの人が訪れるように特別な高コインBOXが用意されている。
事前に色々と調べた結果、とにかく最初の4日間が勝負。
さらに初見さんGETのため、長時間の配信が必要不可欠なのだと。

鬼門を迎えるのは、配信スタートから4日後。
高コインの出るのBOXが無くなった途端に、初見の人数が恐ろしいほど減るという。
その上、目的のない枠に用はないと言わんばかりにフォローの数も激減する。

最終的な高コインがでる赤BOXは配信4日目。
それも3名限定の早い者勝ちだ。
その赤BOXを目当てにたくさんの人が初日から見に来るため、その4日間でリスナーの心を掴み、フォロワーをたくさん増やし、そしてリピーターを作るのだ。
(※高コインBOXの出現条件:青2日連続視聴/赤4日連続視聴)

その話を友人に伝えたところ、後日ライバー事務所のマネージャーさんからも同じようなアドバイスをもらったらしい。

しかし彼女は、女優の他にもバイトを掛け持ちしていたりとまとまった時間がなかなかとれない。
その上、疲れやすい体質なために長時間の配信も難しいとのこと。
配信日が決まらないまま一ヶ月が経ち、このままではダメだということで
とりあえず2人の休みの日が合うタイミングで、配信を始めることに。

ドキドキの瞬間。
『配信始めるね』の連絡と共に始まった初配信。

知り合いがポコチャの画面内に居るのは、なんとも不思議な気分だった。
私はこの日のために、彼女を紹介するような定期文も作っておいた。
次々と訪れる初見さんに、その定期文を流す。

「女優さんなんですね」「かわいい!」「美人だね」

BOXが目的のリスナーさんがほとんどのため、キラコメと呼ばれるものばかりが流れる中でも、何人かは喋ってくれたのを覚えている。

初配信は2時間くらいで終わっただろうか。
本来ならば6時間くらいの配信を求められるのだが、大量に流れる文字を目で追い続けるのは、アシスタントとして見ているこっち側でもすごく疲れていた。

通常のリスナーであれば、他の人のコメントを読まなくてもいいわけだが
ライバーさんのお手伝いをしている身としても、そうダラダラと何かをしながら配信を愉しむわけにはいかない。
ずっと画面を見て、タイミングよく定期を流し、アイテムをくれた人にかけるお決まりの言葉を打つ。
アシスタントとして、そんな業務を私はこなしていた。

あっという間に時間は過ぎて行き
初配信を終えた後、すぐに彼女と電話をした。

お互い心の底からでる『疲れたね…』の一言。
この時既に、想像以上の労力を必要とするんだと思い始めてはいたが
まだ実際には少し休憩すればまたいけるだろうと言う気持ちだった。

しかし、友人にとってはそれがとても疲れたらしく
次の日に配信をする体力が残っていなかった。
私は、最初が肝心なのに配信できないなんて…と、焦りと不安を感じている部分もあったけど、ここで無理をしては本末転倒。

友人も『本業は女優で、ライバーは本業じゃないから気楽に楽しくやりたい』と口にしていたから、ランクやメーターなど気にしない配信をする方向でいこうという話も後日した。


魔の5日目

そしてついに赤BOXが無くなった最初の配信日。
いつものように配信がスタートしても、人が全然来ないではないか。
昨日までは怒涛に来ていたリスナーさんたちが、助言通りパタリと来なくなったのだ。

そう、これがポコチャでいう魔の5日目である。

配信が始まってしばらく誰も来ないため、二人きりでの会話が始まる。
この時はまだ、彼女のレベルも低いためにファミリーを作ることはできなかった。
ゆえに、初見さんを呼び込むための手段”タグ付け”もすることができなかった。

フォロワー数を見ると、やはり激減している。
そもそも配信時間を長くとれなかった彼女は、フォロワーの人数も他の枠に比べたら少なかったのかもしれない。

何分か経つと、ちらほらと訪れてくれる人が現れる。
BOXを取ると出て行ってしまう人も多かったが、彼女との会話を楽しんでくれる人もいた。

「明日は何時に配信するの?また来るね」

そんな言葉をかけてくれる人が少しずつではあるけど増えて行った。
毎回来てくれるリスナーさんがいると、配信も楽しくなる。
私もリスナーさんが帰ってくると「お疲れ様!」「おかえりなさい!」と声をかけるのが当たり前に。

その時は、友人もすごく楽しそうだった。

でも、毎回配信が終わると「ありがとう」の電話と共に
凄く疲れる。正直こんなに疲れるとは思ってもいなかったと話してきたのだった。

私自身も、毎日毎日22時~1時くらいまでずっと配信に付きっきり。
その後は反省会がてらの電話。
たった2~3時間の配信ではあるが、以前みたいにただダラダラと推しを見ていた頃のリスナーとはわけが違うのだ。

蓄積していく疲労が二人を襲う。
たった数日のことなのに、あっという間にも感じるし、すごく長くも感じる。

2週間も経てば、彼女にもファンがつく。
推しマと呼ばれる、推しマークを付けてくれる人も現れた。

ただひとつだけ、今まで見ていた枠と違うことは
大きなアイテムが飛ぶことがないってこと。
小さなアイテムが飛ぶことはあっても、推しを見ていた時のように大きなアイテムが飛ぶこともないし、ランクが上がることもない。

そう
ただただ、毎日雑談する日が続いたのだった。












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