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4月からOISTで研究します
Ryuho Kataoka will soon move to OIST, Okinawa Institute of Science and Technology, on April 1, 2025.
2025年4月1日から、沖縄科学技術大学院大学 = OISTで研究します。所属はサイエンス&テクノロジーグループ = STG。肩書はScience and Technology Associate。日本語名はサイエンス・テクノロジーアソシエイト。居室はLab 2のLevel Bのどこかになる予定で、STG(片岡グループ)が郵便の宛先。同僚は宇宙天気のプロが1名、片岡がPIの基盤A雇用のポスドクとして、近々合流してくれる予定です。
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ひとまず業務上メモを3つ。
0.所在地と宛先
〒904-0495 沖縄県国頭郡恩納村字谷茶 1919-1
沖縄科学技術大学院大学(OIST)
STG (片岡グループ)
STG (Kataoka group)
Okinawa Institute of Science and Technology
1919-1 Tancha, Onna-son, Kunigami-gun
Okinawa, Japan 904-0495
1.業務計画
Scientific research for understanding space weather activities such as solar flares, magnetic storms, and auroras.
2.研究を行うにあたっての提供技術
Machine-learning techniques for space weather forecasting. Designing and building all-sky cameras for auroral imaging.
1と2に書いたことは今後、アンサンブル宇宙天気予報の実現や宇宙版再解析データ、火星オーロラ撮像や地球・月・火星環境での放射線被ばく予測など、先の狙いがはっきりと定まっていて、チームで取り組むことで大きな発展が期待できるものなので、そのために必要な予算を申請中です。どうか採択されますように。
加えて楽しみなのは、せっかくの機会なので一旦ゼロから広く捉え直し、これからの新たな挑戦や解くべき難問を設定し直すなどして、実際に何から行動していくか、ということです。量子コンピュータは、自分で手を動かして計算してみるところから。宇宙ビジネスの発展で破壊されていく可能性の高い月・火星も含めた自然環境の保全のようなことを真面目に検討できないか、市民科学の更なる可能性、ポッドキャストで配信していきたいことなどなど、恩納村の海とヤンバルの森と広い空を見ながら、何かしらできることのうち、大事なことをやります。人生は短いから。
現職ですが、2025年3月31日をもって辞職します。計画段階からPIをやってきたオーロラX計画 = 南極の重点観測研究計画(概要はこちら)は6年計画の3年目ですが、前半3年間はチーム全体として開発研究が主でした。私は極限環境で動作する小型オーロラ撮像システムの開発と、オーストラリア、フランス、イタリアの研究者たちと国際的な調整を主に進めてきましたし、昭和基地での宇宙線計測もいよいよフル稼働となります。これから観測データが得られ、成果を出していく計画後半の3年間となりますが、私は客員の教員として計画の終わりまでPIを継続する予定です。北極のほうはアイスランドの研究プロジェクトがあります。この国際Bの分担も、あと3年ですが、こちらも小型カメラのデザインや導入で貢献したいと思います。
これから発展的にどんどん進んでいくAIエミュレータのプロジェクト(基盤A、片岡がPI、概要はこちら)の分担者は多摩地域に集中しています。国文研との共同研究プロジェクト「天変地異の文理融合研究」(片岡がPI)も発展が楽しみです。早稲田大学ほかと進めているISS/CALETの宇宙天気プロジェクトも続きます。これは基盤Sの分担。今はカナダに小型カメラを展開したところ。いずれも2024年度に始まったばかりのプロジェクトということで、しばらく何年かは、東京に飛んで来ることが何度かありそうな気がします。
このほか、主な教育活動としては東京大学の流動講座の教員を継続して、来年度からは宇宙空間物理学の集中講義を担当する予定です。小学生も含む教員活動としては、成蹊学園サステナビリティ教育センターの客員フェローも継続する予定です。いま現在も研究指導は進めています。東大・東北大・北大の大学院生たちなのですが、彼らと話すことは、いつも救いに感じています。今回ちょっと彼らにとっては中途半端なタイミングで、一気に距離が離れてしまうのですが、普段はzoomでも、時折は思いきってOISTにも来てもらえると嬉しいです。いま一緒に研究して下さっている方々も、ぜひたっぷりと日程を確保してOISTにまで足を伸ばして頂けますよう、宜しくお願いします。皆様と沖縄で、幅広く雑談できることを楽しみにしています。
サバティカルで1年お世話になったOISTでは、教科書Extreme Space Weather (こちら)を書き上げたことがひとつ自慢でした。あれは2022年のこと。トンガ噴火で、変わった津波が押し寄せてきたり、どこかの海底火山の軽石が大量に流れ着いて海辺の風景が一変したり、地球と海の不思議さや面白さについて多くを学んだ年でした。コロナ禍で、もともと計画していた世界ツアー的なサバティカルは無理で、OISTにお世話になった経緯がありますので、これからの新たな職場がOISTになるのかと思うと、人生っていうのは、そのときどきに思い切って行動してきたことが、ぐるっと大きく巡ってきたりもして、これほどダイナミックに予想外に変化するものなのだな、と驚いてしまいます。縁とは不思議なものですね。
ちなみに、OISTとはどんなところか、実際のところ研究者の間でもあまり知られていない気がしますので、最後に私の理解をざっと書いておきます。一言で言えば、世界最強の研究拠点のひとつです。それが沖縄の恩納村に作られることになって、内閣府からの予算で10年ほど運営されてきています。日本人よりも海外から来た研究者が多く、皆さんとても活発に研究されています。大学院生もそうで、まさか日本でこんなことが出来るのかと驚くレベルで「国際的な」大学院大学です。全ては英語です。しかし所在地・生活圏は日本なので、日本語を使わない研究者も困らないよう、日本語を完璧に使えるバイリンガルのスタッフも多く、日々の研究者の研究活動を支えていたりもします。分野を問わず世界最高の研究環境を提供するから、世界最高の研究を思う存分やりなさい、という感じで、従来からの古い日本の研究体制の限界を、なんとか突破しようとしている、未来を感じる実験場であり、世界への挑戦でもあります。この環境、日本人は、活用しない手はない、と思っています。