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27.Fラン大学不用論に反論する(補足:脱偏差値)THE日本大学ランキングについて


1. OECD国際成人力調査

同調査において日本は読解力で世界2位になったのはご同慶の至りだが、この調査で日本の高等教育終了者の平均点は308点(OECD平均260点)、これは後期中等教育終了者に比べて34点勝っているとのことである。調査対象者は住民基本台帳から16歳以上65歳以下を無作為抽出されている。つまり高等教育修了者の中にはFラン大学在学生、卒業生も含まれているのは言うまでもない。Fラン大学も含めて日本の大学は4年間で学生を(平均的には)成長させているのだ、とも言える。

2. 良い大学、悪い大学をどのように見分けるのか

偏差値は大学の入りやすさ入りにくさを判断する目安になるが、当然のことながら大学の良し悪しを示すものではない。入学試験のことであって大学の内容とは何の関係もない。それでは大学の内容の良し悪しはどうしたら知ることができるのだろうか。一つの手がかりとして大学認証評価制度がある。これは全ての大学が7年に1回、認証評価機関(第三者機関)による認証評価を受けることが義務付けられていて、その結果が公開される。しかし認証の結果は「適合」か「不適合」かどちらかしかなく、「不適合」の大学が出るのは1年に1回もない。だから大学同士を比較することはできない。ただし、評価は「適合」であっても是正意見や改善意見がつくことがあるので判断の参考にはなる。例えば某Fラン大学には「適合」であっても「教育内容の充実等を通じ、収容定員未充足の改善に努めること」というような意見がついている。しかしこれはFラン大学だけではない。例えば立教大学には「既設学科等(法学部国際ビジネス法学科)の収容定員超過の改善に努めること」と言う意見がついている。これは教員の人数等は収容定員によって決められているので、定員を超過していると十分な教育ができないと判断されるからである。また帝京大学には「教育内容の充実等を通じ、収容定員未充足の改善に努めること(外国語学部国際日本学科)」と言う意見がついている。一方でFラン大学であっても「適合」だけで是正や改善の意見がついていない場合が多い(なお、日本大学は「不適合」で是正や改善意見もたっぷりついているのはいたしかたない)。

3. THE日本大学ランキング(旧名称:THE世界大学ランキング日本版)

偏差値ではなく大学の中身を比較する手掛かりの一つとして、世界大学ランキングを手掛けるTHE(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション)とベネッセが提携して2017年から発表しているTHE日本大学ランキングがある。これはそれぞれの大学の教育リソース(34%)、教育充実度(30%)、教育成果(16%)、国際性(20%)と言う4つの分野を評価して点数化し(かっこ内は総合評価のウェイトづけ)各大学をランク付けするものである。もちろんランキングがすべてではないが、今のところ大学の中身の良し悪しを比較できる唯一の指標である。

このランキングについては、評価の方法・中身を見ずにあれこれ論評する人が多いので、あえて指標の出し方をホームページから引用する。全部で16項目を下記の方法で評価し点数化している。

「教育リソース|どれだけ充実した教育が行われる可能性があるか
「教育リソース」は5項目で構成され、全体の34%を占める。
学生一人あたりの資金(8%)
学生一人あたりの教員比率(8%)
教員一人あたりの論文数(7%)
大学合格者の学力(6%)
教員一人あたりの競争的資金獲得数(5%)

教育充実度|どれだけ教育への期待が実現されている               「教育充実度」は5項目で構成され、全体の30%を占める              学生調査:教員・学生の交流、協働学習の機会*1(6%)
学生調査:授業・指導の充実度*1(6%)
学生調査:大学の推奨度*1(6%)
高校教員の評判調査*2:グローバル人材育成の重視(6%)
高校教員の評判調査*2:入学後の能力伸長(6%)
*1 日本の大学に在籍する学生を対象に実施。各大学の教育改革を学生が認識できているがどうか。その度合いを0~10点で回答。質問内容によって、「教員・学生の交流、協働学習の機会の程度」「授業・指導の充実度」「大学の推奨度」に分類してスコアを算出。
*2 高等学校の進路担当教員を対象に「大学に関する印象調査」を実施。卒業生からさまざまな情報を集めて多くの高校生に進学のアドバイスをしている進路担当教員の意見により、見えにくかった大学生の満足度を推し測ることができる。

教育成果|どれだけ卒業生の活躍が期待できるか                 「教育成果」は2項目で構成され、全体の16%を占める。               企業人事の評判調査*1(8%)
研究者の評判調査*2(8%)
*1(株)日経HRによる「企業の人事担当者から見た大学のイメージ調査」。卒業生の活躍を多面的に評価。
*2「THE世界大学ランキング」において高等教育機関研究者を対象に「教育力の高い大学」を調査。

国際性|どれだけ国際的な教育環境になっているか                「国際性」は4項目で構成され、全体の20%を占める。                外国人学生比率(5%)
外国人教員比率(5%)
日本人学生の留学比率(5%)
外国語で行われている講座の比率(5%)
各大学の改革が急速に進んでおり、グローバル化への対応度合いが端的に表れている。」https://japanuniversityrankings.jp/method/
                   
ご覧のように大学への聞き取りや発表資料だけでなく、企業や高校教員にたいする調査、学生アンケートなど客観的なデータを基にした点数化によりランクが決まる。学生アンケートは大学が協力して実施するのだが、回答には関与できないので学生がなんと答えているかひやひやものである。また、大学合格者の学力は偏差値に近いと思うが6%しかウェイトづけされていない。偏差値至上主義者はその意味を考えるべきだろう。

ところで、筆者の前任校(その年の学部学科によってはBFになる=Fラン大学)は国際性の分野で2023年度全国62位である。下には64位お茶の水大学、73位東京女子大学、75位明治大学、78位青山学院大学、79位法政大学、というようなFラン大学ではないと思われる大学が並んでいる。国際性の指標を比較すればこうなる。

Fラン大学不用論者はこのランキングをじっくり見てもらいたい。知らない名前の大学が上位にたくさんあるはずだ。これはどういうことか考えてみよう。
https://japanuniversityrankings.jp/rankings/total-ranking/

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