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アルバム収録曲「Stay」について

 さてM2の「Stay」についてです。タイトルは受け手側がそれぞれで解釈できるようなone wordにしました。「Please stay」だったり、「I Want to stay」だったり、、色々あって良いと思います。

 音楽的にはこの曲だけ打ち込みのリズムということもあって少し異なったフレーバーになっているかと思いますが、やはりと言いますか、サウンド的には少し苦労しました。

 曲調としては、そうですね、僕は打ち込みループが大好きなんですが、ループを使った曲を、というのもテーマに含まれています。Paul Jackson Jr. だったり、Lee Ritenour だったり、Kenny Loggins、Chaka Khan の作品の影響だと思います。オクターブのテーマと、ドラムループが先に出来まして、Bメロを作ったように記憶しています。なかなかこういうのを最近聴きませんので、だったら僕がやってもいいかなと。笑

 打ち込みループに関しては"教授"の90年代の作品あたりのサンプラーを使ったテイストのものが馴染みがあるのですが、なかなかシェイカーの音色を1日かけて作る時間はありませんので、ソフトサンプラーとソフトシンセ(ともにNative Instruments)のもので作り込んでいきました。画面を見ながら各波形を作っていけるので、昔の1/10以下の時間でこういった作業は済んでしまいますね。最終的に少し風変わりなドラムループが出来て良かったです。

 ではメインのギターに関して。ギターのオクターブ奏法のサウンドは毎回苦労するのですが、これも欲しいトーンが録れるまで色々試しました。欲しいトーンは「出過ぎず、引っ込みすぎず、強すぎず、弱すぎず」といったところでしょうか。最終的に解決してくれたのは1969年製のGibson ES-335でした。ビンテージギターならではの芯のある独特なトーンが全ての条件をクリアして、味わいのあるトーンを聴かせてくれました。ES-335をFender Hot Rod Deluxeに挿して、AKG 414 EB、SURE SM57で録音したものがメインテーマの音になります。ピックを使わず、親指で弾いています。

 芯のある音と書きましたが、エレキギターサウンドに一番大事なのはこの「芯」だと思っています。皆さん新しいギターでもPUを載せ替えたり、コンデンサー、配線をビンテージなものに交換するのは、ざっくり言うとこの「芯」を求めてのことでは無いでしょうか?サウンドの「ガキーン」という部分です。

ではその「ガキーン」は最近の楽器には無いのでしょうか??無いことが多いと思います。トレンドなのか、ギター、アンプ(アンプシミュレーター)、Stomp Box含め、すごく広がりがあって、でも芯の部分が少ないサウンドがほとんどのように思います。好みやトレンドなどの問題もありますが、一番大きいのは各パーツ(vol.ポッドや基盤)の品質の低下の問題もあるのかなと考えられます。ですので知らず知らずのうちに僕らが、広がりはあるけど芯の無いサウンドに慣れさせられてる部分もあるのかも知れません。。The Beatles や The Rolling Stones、Jimi Hendrixの古い音源を聴くと妙にサウンドが太くガッツがあるのはそういった「芯」の部分では無いでしょうか?

 そしてこの「芯」があることによって、適正な配置でギターをミックスできるように思えます。リズムギターで少し遠くで鳴らしたいようなものも、芯のある音で録れているものはフェーダーを下げても沈んで行きません。奥でしっかり鳴ってくれますが、芯がないとフェーダーを下げたら消えてしまいます。すぐに引っ込んでいなくなってしまうのはアタックの芯の部分が無いからだと思います。これでは適正な位置で欲しいサウンドを配置できなくなってしまいます。結果的に全部のギターが前に来て、平面的なサウンドに仕上がる、、という音像になります。こういったミックスが多いのは偶然や時代性だけでは無いように感じますが、これいかに。。笑

 さてさて、話を戻しまして、メインのテーマを欲しいサウンドで録れましたのであとは仮で弾いていたリズムギターとBメロのギターをデモのギターから差し替えていきました(打ち込みの完成と同時に仮のギターをどんどん弾いていってあります)。サイドギターはdbx160Xで強烈に叩いたコンプサウンドでのカッティング。右チャンネルに聞こえるギターで、テーマと同じくらい印象的に目立たせたいパートです。最終的にShin's Musicの鈴木さんにアクティブ改造して頂いたFender Stratocasterで弾きました。何度か鈴木さんにコンプの叩き加減を指摘されてリテイクしましたが、お陰で良いサウンドのテイクが録れました。テーマもカッティングもミックスの際にギリギリ、フェーダーを突きすぎないくらいで済んだのはしっかりと芯のあるサウンドで録れたお陰だと思っています。Coolな温度感のまま曲が進行していくのが肝でしたので、レベルが小さめで済んだ事はとても助かりました。時にはフィルインで入るLINN DRUMのタムの方がギターより大きい、みたいな、そんなバランスにしたかったのです。笑

 BメロのテーマとエンドソロはGibson Les Paul (Custom Shop 1959)です。このパートのギターは逆に前に出てほしかったので、Les Paulで試してみたら、ぴったりでした。Ibanez TS9 (Shin's Music Mod)と3+の1Chの組み合わせです。とても太くてマイルドな押し出しのあるテイクが録れました。TS9のDriveツマミは11時くらい。

 ギター的にはあとはカッティングと反対側に時折登場するWah Pedalでのプレイです。こういうのはほぼ打楽器みたいな考え方で良いかと思います。温度を高めたいセクションに入れていきました。WahでもES-335を使いました。Jim Dunlop Cry Baby GCB-95 Shin's Music Deliceous Mod. を3+の1Chに入れてそのまま弾いています。これも160Xで叩いていると思います。

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 そして他の楽器のお二人がこれまた良いプレイをして下さいました。

Bassの石井裕二さんは曲調を聴いただけでバッチリなスラップをして下さいました。温度感、リズム、ともに絶妙な、欲しいテイクを頂きました。使用楽器ですが、

Bass :Sand Berg California TM4

DI:TDC-YOU BASS DI

Saxの杉田駿星さんはかなり若手ですが、雰囲気のある音色、フレージングをして下さいました。これからどんどん出てこられる、将来が楽しみなプレイヤーです。録音中もフレーズが体中から溢れ出てくる様で素晴らしかったです。

録音は稲葉ナルヒさんがBST Studioで録ってくれました。マイクはU67で、HAはNeve 1076 だったと記憶しています。

 最後にミックスですが、難しいバランスだっただけに、もう仕上げは最初から森田良紀さんにかなり甘えるつもりでした。笑

まず打楽器の定位とリズムギターの配置。これは結局、ギターも含めてリズム楽器が沢山いるのでバランスよく配置するには職人的な耳の良さが必要になってきます。キャンバスの下地に当たる部分ですから、ここが決まらないと上に来る楽器も決まりません。森田さんがスタジオで各リズム楽器を適正に処理していきまして、さてここからが本丸ですが、キックとベースの整理です。こればっかりは家でラフミックスを作る際も絶対に処理しきれない音域のものですので、スタジオで森田さんに詰めてもらうしかありません。毎度ここに関しては「アタックとリリースがバラバラじゃーん。」と突っ込まれますが、家のモニター環境ではローの細部は聴き取れないです。そこが打ち込みものの命なのに、そこが聴き取れないのは中々辛いものがありますね。笑

音量をあまり出せないというのも多少ありますが、単純にモニタースピーカーの性能の問題が大きいです。それでも家ではサブウーファーを使っているのですが。。

まあ、自宅環境とスタジオの大きな差がここにはありますね。ローエンドの処理はずっと課題です。

さて、キックとベースをしっかりトリートメントしていただき、下地が出来上がったら、ウワモノの配置はあっさり終わりまして、マスタリング含め、森田さんが素晴らしいミックスにして下さいました。何度かのリテイクにも付き合って頂き、感謝しています。奥行き感、温度感、雰囲気、欲しい感じにまとまりました。

 冒頭で書きましたようにアルバムの中では異彩を放つ曲となっていますが、僕自身ではひょっとしたら一番お気に入りの曲かもしれません。なかなかこういった仕上がりにするのははっきりとした狙いがないと平面的なつまらない楽曲になりがちですが、立体的でいてsmoothな温度感に仕上がったのは大変嬉しいことです。是非チェックしてみて下さい。

ではまた!











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