アルバムタイトル曲「The Shade of Life」
「The Shade of Life」をリリースしてから3ヶ月が過ぎようとしていますが、引き続き皆さんからの感想が届いておりまして、とても嬉しく思っています。世の中ではデルタ株が猛威を振るっておりまして、なかなか先の見通せない情勢が続いていますが、皆さん音楽は継続して聴いているようでそれは本当に素晴らしい事だなと実感している最近です。
さて、アルバムタイトル曲「The Shade of Life」ですが、この曲のギターテイクが録れたことは僕にとってはとても幸運な出来事でした。こういう事は演奏生活を続けていく中でもなかなか起きない事じゃないかなというくらい、エモーショナルでマジカルな体験でした。それくらいこの曲のテイクは気に入っておりますが、この曲をお気に入りに挙げて下さってる方も多いみたいで、まさにそういったパッション(?)が伝わってるのかな、と嬉しく思います。さてインタビューされてるSteve Vai みたいな表現はこれくらいにして、、(笑)少し曲の詳細を掘り返してみようかと思います。
タイトルは直訳すると、「人生の彩り」といったところです。ゆっくりゆっくり進行していく人生の時間の流れを表現したかったのかもしれません。少し大きな世界観を描いた曲にしたいな、というのが最終地点でした。
最初の着想は、とあるイベントでのデモ演奏の打ち合わせの時でした。上でポロポロ弾けるようなコード進行を探している時に「こんなのどう?」とShin's Musicの鈴木さんが弾いてくれたのが「The Shade of Life」のイントロの4小節のコードパターンです。3度抜きのこのパターンは3弦のソと1弦のミが持続音として鳴ってる、かなりオープンな響きです。F→G→B flat→A→F→G→B flat、という循環です。
この進行は僕には導入部に聞こえたので、それにその場でセクションBとして、もう一つ進行をくっつけました。それが後に「The Shade of Life」のAメロの進行になります。Fm7→Gm7→Fm7→Gm7→Am7、という進行です。これも持続音で1、2弦を鳴らしています。こういうのはギタリストの専売特許ですね。
イベントでは上に書いた2つの進行だけで演奏しました。曲というより、その進行でどんどんインプロヴァイスしたソロを弾いていく感じだったのを覚えております。なかなか調性のはっきりしない浮遊感のある進行で、その独特の雰囲気が気に入った僕は鈴木さんに了解を頂いて、しっかりした曲に仕上げようと取り掛かった、というのが事の始まりです。
上の2つの進行は当初から導入部とAメロ、、な雰囲気を感じていたので、ここにサビが必要だと思いまして、あまり暗くもなく、明るくもなく、、でもパンチのあるサビ、というのが狙いだったと記憶していますが、そんなサビを何パターンか作ってみて一番欲しい感じにできたものに決めました。内に秘めた熱さを持ったメロディです。
それとイントロ、Aメロ(Verse )、サビ、ともに共通したAtmosphereには「オリエンタル」というテーマも設定しました。大きなグルーヴの中にどこかオリエントな響きを感じ取っていたからです。この場合のオリエントは「東方」の中でも「極東」に近いものだと思います。自分の中の日本人的なマインドがあるならこういう感じだろうな、、といったものを表現したかったのです。
とても個人的な感覚なので、「えー?」と意外に思われる方もいるのかと思われますが、この曲で少し北米から離れて、アジア人としての自分を表現したかったのです。とはいえ、みなさんがどういう印象でこの曲を聴いて下さってるのか、とても興味があります。それくらい捉え所のない、でも大きなうねりのある曲に仕上がったと感じています。
VerseのメロディーはChorusのメロディが出来てから作りました。少したっぷり目の符割りで歌えるメロディが必要でしたが、こちらは先にコード進行がある分、なかなか出来なかったのを記憶しています。コードとシンコペーションに引っ張られないで良いメロディを作るのは少し辛抱が必要ですね。我慢強く何パターンか作ってみました。
さてギターサウンドに関してですが、この曲に関しては比較的シンプルに、バッキングのコードワークを弾いているクリーンのリズムギターと、メロディとソロのメインギター、この大きな2つの柱で出来ています。そしてこの2本は共にFender Staratocaster Shin's Music Active Mod. で弾いています。
リズムギターは3+のClean Channelに、dbx 160X、SONGBIRD TRI STEREO CHORUS、Eventide Pitchfactor、Lexicon PCM70、などたっぷり掛けたサウンド。リードギターは3+のLead Channelで、solo時にIbanez TS-10をかけてBoostしています。
この2本は共に流れをとても重視したので、頭からendまで通して弾ききっているテイクを録りました。集中力と適度な緊張感が必要でしたので、時間を空けて数テイク録った記憶があります。音源で聴けるのはそのうちの一番熱量の高いテイクです。冒頭でも書きましたが自分でもとても気に入ったテイクが録れまして本当にラッキーでした。
残りのエレキはChorus部に入ってくるDistortionのパワーコード。これはリアにハムバッカーが付いた黒いSuhr Classicで弾いています。少しスッキリした、でもヘヴィな歪みが欲しかったので、古いMaxonのSD9と3+の2Channelの組み合わせで歪ませています。それと、後半に出てくるカウンターメロディはJames Tyler Studio Eliteで、E-BowはサンバーストのSuhr Classic (3シングル)で弾いています。どちらもかなりwetにエフェクトを掛けて録ってます。
そしてアコギです。鍵盤に関して、曲調的にはピアノを入れるのが合うと思うのですが、敢えて入れませんでした。ピアノのアタックによって浮遊感が薄くなるかなというのと、Cleanのエレキがシンコペーションしているので、割とそれだけでアタック感、リズムが出てしまってるので、ピアノは無しで、シンセパッドを薄く入れるだけにしました。そしてエレキのシンコペーションに合わせる形で最適なのはアコギかなという判断で、アコギのダブルを背景的に使う形で入れてあります。壁、とまでは行かないのですが、ダブルの自然なコーラス感と、ピアノほどアタックが出ないので、浮遊感を持続できるように思えました。
録音はMartin D-18 を少しオフマイク気味に、1176もソフトな設定にしてEB414で録りましたが、狙い通りの広がり感のある音で録れました。(ヘッドフォンで聴いてみてくださいね!)こういうプレイでのMartinは最適で、薄いピックでストロークするととても上品でいて、太いサウンドが録れますね。
話はズーンと逸れますが(笑)、「True Love」で佐橋さんが弾いているAGは古いGibson J-50なんですね〜。最近Youtubeで拝見して知りました。あのキラキラサウンドはてっきり古いGUILDかMartinだと思ってました。先入観は良くないですね、、勉強になりました。J-50、どこかで弾いてみます。
それと参考にしているAGのテイクに、宇多田ヒカルさんの「Deep River」の今さんの演奏があるのですが、これはもうお手本のような音をしていますね。これはGUILDなのかな、、Cole Clark?、、。誰かご存知でしたら教えてください。
AGのサウンドは上の2曲でもう十分勉強になると個人的には思っています。全体的に洋楽のAGよりJ-PopのAGの方が良いサウンドで録れているように感じますが、(EGのサウンドでは負けますが。。)これは弾き手の問題もあるのかもしれません。全体的に日本の名手達の方が楽器を鳴らすのが上手で、繊細な演奏をしますね。。曲調も違うので、一概には言えませんが。
他に参考にしている曲としては、今滝真理子「Cheap Chic」、大貫妙子さんのアルバム「note」を挙げておきます。とても繊細なギターサウンドが聴けます。
リズムセクションは矢吹さんと道太郎さん、竹本さんですが、皆様見事に曲のグルーヴを具現化してくれました。流石の一言です。大きくリズムを取るのが鍵となってきますが、問題なく良いテイクが録れました。矢吹さんはダイナミックに、そしてとてもレイドバックしたバックビートを。道太郎さんはセクションごとにグルーヴを変化させて曲の抑揚を何倍も広げてくれました。そして竹本さんは沢山のツールを使って、曲の世界観をよりオーガニックなものに広げてくれました。リズムセクションの皆様に大きな拍手と感謝を贈らせて頂きたいです。
DrumsとBassはFreedom Studio InfinityのC studioで森田良紀さんの録音です。
道太郎さんのギアは
DIが HUMPBACK ENGINEERING High Definition D.I
Bassが Fender Jazz Bass 1964
矢吹さんのDrumsは
バスドラ22”(オーク)
タムタム12"(オーク)
フロアタム14”& 16”(オーク)
スネア14”(オーク)
全てYAMAHA、となります。
パーカッションのダビングは稲葉ナルヒさん。こちらはBST StudioのAst でした。
ミックスダウンとマスタリングは森田さんにやって頂きました。こちらも素晴らしい仕事っぷりで、深いサウンドを作って頂きました。
さて今回はアルバムのタイトル曲についてでしたが、通常でしたらこういった曲調のものをアルバムタイトルにはしないのかなと思いますが(アップテンポな明るい曲が通常ですよね。。)、頂いた反響の多さからも、やっぱりこれがタイトル曲でよかったなと再認識しております。またこのタイトル曲が自分らしい世界観を代表しているのかなとも思えます。引き続き楽しんで頂ければと思います。
ではまた!