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新曲 "The Voice of A Rose" について。

 皆様、How's everything ? ご無沙汰してます。バタバタしている間に2023年も後半に突入してしまいました。コロナ禍もだいぶ対処に慣れてきまして、音楽の現場もワッと活気が戻ってきているように感じます。お陰様であちこちで大きな音で演奏させて頂いてありがたく思っています。
 さて今年も新曲を配信する事ができそうですので、新曲について書きたいと思います。今年はその動機が思わぬ形で、しかも悲しい形でやってきてしまいました。3月末に坂本龍一さんの訃報が届きまして、かねてご様態が悪いことは報道されていた通りですが、他の音楽ファンや音楽家の皆さん同様、僕にとってもかなり大きなショックを受ける出来事となりました。その死によって、メディアやCDで当たり前のように接していた教授の存在の大きさを改めて認識いたしました。常に何かしらのメッセージを音や声、その存在で発信し続けていたんだなと、音楽に携わる者としてその偉業に頭が下がる思いです。
 Tributeというととてもおこがましいのですが、新曲は何か教授の残してくれたものに対して表現できれば、という思いで作曲しました。なんとも言えない悲しさと、教授の残してくれた世界観はやはり音にして表現したいなと、そんな考えが自然と湧いてきた訳ですが、それは4月の晴れた午前中に突然パッと出てきた記憶があります。10分ほどでできたのかなと、そんな感じでしたが、教授が愛したNYのどこかの窓辺から外を覗いて見えるような景色をイメージしたと言いますか、、優しい光が見える曲になりました。
 タイトルの "The Voice of A Rose" は、教授のVirgin America時代のアルバム「BEAUTY」(1989)の収録曲「Rose」という曲で教授のVocalがとても優しく、印象的な事からそこからタイトルに引用いたしました。Pino Palladinoの幻想的なフレットレスベースと教授の甘美な歌とピアノが合わさる、薔薇のポートレートのような曲です。まだご存知なかったら是非チェックしてみてください。
 教授の Vocal は正に薔薇のように繊細で、高貴な印象を与えてくれます。つまり ”The Voice of A Rose" は教授の声を指しています。

 Virgin America時代と書きましたが、アルバム「BEAUTY」(1989)に続く「HEART BEAT」(1991)と合わせて教授はNYに移住してアメリカの音楽シーンに正面から挑む訳ですが、この時代の意欲的な作風は、陳腐な言い方になってしまいますが、国境も何もないようなワールドワイドな音楽のミクスチャーとして、時代の遥か先を走っていたように感じます。

 僕自身で言えば gut label(グートレーベル)時代がちょうど学生時代のリアルタイムと言えるのですが、日本国内のCDマーケットの絶頂期に合わせるような作風が多い gut 時代よりも、Virgin 時代のものを特に面白く、熱心に聴き込んだように思います。(もちろん教授の作る JPop も極上なのですが。。笑)

 さて曲に関してですが、思いついたままを綴っていって、僕にとっては一番ミニマムな形のギター2本のアンサンブルで仕上げた訳ですが、自分でも意外性のあるメロディと雰囲気のものになったため、他の音も足したいなと、だんだんそういう気持ちになっていきました。2021年に発売した僕のアルバムに「Perfect Day」という曲がありまして、これもギター2本による曲ですが、こちらは意識的に綺麗になりすぎないように少し Rythm & Blues のエッセンスを入れて、またギターだけで成立させていたのに対して、「The Voice of A Rose」に関しては Rythm & Blues 方面の要素よりもヨーロッパ的な室内楽的な仕上がりを求めたのかもしれません。あくまでも無意識でのことですが、教授の音楽世界の指向を心のどこかで求めたのかもしれません。

MV撮影風景

 真っ先に足したいなと思ったのはやはりピアノ、そしてシンセサイザーですが、僕よりもずっと教授のことに詳しい、友人で作曲家である高橋浩平さんが一番適任だと思いお願いしました。高橋さんは学生時代に RADIO SAKAMOTO の番組内でデモテープがオンエアされた事があるというくらい、ずっとYMO、教授を熱烈にフォローしてらして、昔から一緒に演奏してきましたが、時折紡ぎ出す音にはやはりその辺りの影響を強く感じます。
 浮遊感たっぷりのセンスの良いPfとSynがすぐさま足されましたところで、仕上げに密かにプランしていた Ondes Martenot 奏者の大矢素子さんに何か音を足してもらおうというアイディアを実行に移すべく音源をお聴かせしたところ、すぐにアイディアの提案を頂きまして、Rec のスケジュールを立てました。
 Ondes Martenot(オンド マルトノ) に関しましてはこちらに専門的な解説はお任せするとして…

その幻想的な音色は生前の坂本龍一氏の関心も寄せまして、大矢素子さんはNHKの「スコラ 坂本龍一 音楽の学校」と、教授が担当された映画「レヴァナント 蘇りし者」(2015 : アメリカ) の音楽の方でもレコーディング・アーティストとして教授と共演されてます。


Ondes Martenot の録音風景


 そんな訳で今回のコンセプトにぴったりのお二人に参加頂きまして、僕の方としては当初の完成予想図を遥かに超えるようなトラックに仕上がってきた訳です。お二人とも曲想を一瞬で掴んでしまっているかのようでした。素晴らしいの一言です。

 ミックス、マスタリングに関しては試行錯誤はあったものの、今回は自分で全て行いました。各楽器のソースはしっかりした音で録音してあったため、極端な処理は必要ありませんでしたのでバランスを取って、なるべくコンプ感のないままに音量を稼ぐ方向でマスターを仕上げていきました。エアの多い楽器ばかりでしたのでエア感もあえて残したままで、サロンで録音している空気そのままで、、という目指した地点にそのまま到達できたかなと思います。
 マイク類はAKG 414 と SM57、それに Universal Audio 1176、Avalon Design V5、ギターは録音では全て Martin D18 を使用しました。

 配信開始は2023年9月16日になります。教授が紡いでこられた膨大な数の音楽はずっと残っていきます。僕も音楽に携わっている者として、少しでも多くの音を残せるように、自分に正直に音と向き合って行きたいと決意を新たにした今回の音源制作でした。
 最後になりますが、ミックスのアドヴァイスを頂いた Shin's Music 鈴木さん、マスタリングのアドヴァイスを頂いたピエールさん、素敵なMVを撮影してくれた樋口ジイ(教授と仕事したなんて羨ましい!)、そして木漏れ日溢れるバルコニーを貸してくれた Cloud9 のハルさん、本当にありがとうございました。皆さんのお力添え無くしてリリースはかないませんでした!

 それでは、たくさんの方々に聴いてもらえる事を祈って、see ya !!

絶好の撮影日和にして頂けたのは教授のお力添えでしょうか!?

 追記:無事に配信開始となりました。↓↓   2023.9.16


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