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あわしまマリンパークの思い出(前編)

突然の閉館

 2024年1月22日、水族館界隈に衝撃のニュースが流れた。「あわしまマリンパーク 閉園のお知らせ」と題された1枚の画像には、突然の別れについて記されていた。閉園日は2月の12日。余りにも急すぎる出来事に言葉を失った。閉園の理由は施設の老朽化ということであるが、2019年に運営会社が変更となるなど、経営面での苦戦が一因にあることは否めないだろう。

 あわしまマリンパークは、静岡の沼津にある古き良き水族館である。最大の特徴は、駿河湾に浮かぶ淡島という無人島の中にある水族館であることだろう。沼津駅からバスで30分程揺られ、入館チケットを購入してから船で淡島へと向かうのだ。船着場から淡島までは数分だが、乗っている間のワクワク感はそれ自体が1つのアトラクションとして機能している。私の知る限り、直接船で渡る水族館はここだけだ。(宮島水族館など、中継で船に乗る水族館は存在する)

三津シーパラダイスのイルカショー
奥に見える山のようなものが淡島である。

 もう1つの特徴として、アニメと全力でタイアップをしている点が挙げられる。私自身が作品に詳しくないので滅多な事は書けないが、沼津自体が「ラブライブ!サンシャイン!!」の聖地のようだ。あわしまマリンパークへ向かうバスは外装内装共にキャラが描かれており、バス内のアナウンスもキャラクターが務めている。淡島もガッツリアニメの舞台となっており、キャラの実家のモデルなど島全体が聖地化しているようで、至る所に等身大パネルやグッズが置かれていた。先述した船の外装も、チケット売り場で流れている音楽も、全てラブライブサンシャインである。従って、ラブライバー達にとっても思い入れのある水族館のようだ。先日訪れた際には本当に沢山のラブライバーが集まっていた。

淡島へ向かう船

思い出の初訪問

 私があわしまマリンパークの存在を知ったのは、2021年3月11日の事だ。私は2020年から本格的な水族館巡りを開始したので、当時はまだまだ初心者であり、全国の水族館をほとんど把握していなかった。
 いつも通りTwitterで水族館の情報を収集していると、フォロー(監視)している水族館写真家の方々が何やら騒がしい。どうやら、珍しい深海ザメが水族館に入ったというでは無いか。その名もオロシザメ。正直聞いたことがないサメである。調べてみると、ほとんど捕獲例がなく、水族館での飼育は三津シーで1度、沼津港で2度、あわしまで1度のみ。激レアである。(水族館における激レア展示には賛否があり、いずれ触れることにはなるがここでは割愛する)
 激レア展示は一期一会であり、その機会を逃せば数年、下手すれば一生直接お目にかかる機会はないかもしれない。幸い今回入った個体は状態がよく、数日は持つだろう。沼津なら東京から日帰りで行ける距離だ。私は沼津へ向かうことに決めた。
 早速下調べをして、早朝から小田急と東海道線を乗り継いで人生二度目の沼津へ。マリンパーク行きのバスは1時間に1本程度なので、30分ほど待ちぼうけ。同じバスに乗ったのはわずか数人であった。その内の一人は同じくオロシザメ目当ての猛者であり、バスも船も館内も一緒で決まずい時を過ごした

平日の昼間のマリンパークはガラガラだった

 マリンパークに入ると、いきなり大きなタイドプールのような水槽が御出迎え。一番驚いたのは水槽の規模にそぐわないメンツの濃さである。オオモンハタ・アカエイ・カンパチ・マダイなど、大水槽を泳いでいてもおかしくない魚たちが隅の方に固まってじっとしている。逆にあわしまの大水槽には彼らのような大物がいない。なんとも不思議な水族館である。
 次に目を引くのが、解説板の充実ぶりである。手書きのパネルや、写真付きのパネルなど、基本的に展示生物の抜けなくしっかりと解説まで書かれている。これには水族館の学術的意義を重視するRYUHA君もにっこり。

入ってすぐの水槽。メンツが濃い
手書きの魚名板は高印象
入口の看板
スタッフの生物愛溢れる解説板は、間違いなくあわしまの魅力だった

 続いて、個性豊かな小水槽がいくつか並んでいる。おおむね4~7種で1水槽となっており、大人でも見やすい高さなのが写真撮影向きでGood。小さめの水族館の良いところは、魚との距離が近いので写真が綺麗に撮れるところだと私は思う。(綺麗に撮れるとは言っていない)個人的には、ナミマツカサとかツマジロモンガラがニッチで良かった。
 小水槽の反対側には、大水槽がドカンと鎮座している。と言っても、他の水族館に比べると展示されている魚と水槽の規模は共に小さいが。それでもクロホシイシモチの大群や、泳ぎ回るタカノハダイにタカベ、堂々としたコブダイなどなかなか侮れない。タマガシラやミナミハタンポといったレアキャラもいる。2021年の写真を見たら、ウチワザメやツマグロハタンポもいたらしい。肝心の魚は見つけられていないが…。

あわしまマリンパークの大水槽
大型魚はコブダイとコショウダイくらい

オロシザメとご対面

 あわしまマリンパークの本館は2階建てである。階段を上ると、そこは深海ゾーンであった。沼津には3つの水族館が存在するが、皆共通して深海生物を強みとしている。沼津が面している駿河湾は深さ2500メートルを誇り、日本三大深湾の一つに数えられている。そのため、地元の漁船に捕獲された深海生物を入手しやすい環境にあるのだ。お目当てのオロシザメも駿河湾で捕獲されている。
 2Fでは地元で採れた深海生物を展示した水槽がずらりと並んでいた。私は生粋の深海大好きマンなので、全部の水槽にかじりつきたくなるが、ひとまず元気なうちにオロシザメを見ることに。深海ゾーンの一番奥。ひと際大きい水槽には「駿河湾~水深200M」と書かれている。そのど真ん中に、幻のサメがいた。これがその写真である。

私の写真、下手すぎ!?

 というのも、当時はカメラなんてほとんど触ったことがなく。ISOもシャッタースピードもなーんにも知らなかったのである。祖父の遺品のカメラなので、画質もなんだか古ぼけている。(この記事の一部の写真が古いのもそのせい)適当な設定で撮影するもんだから、暗すぎでシャッターきれないし、撮れてもブレブレだしでどうしようもなかった。後悔しかない…。
 折角東京から来たのにこれでは残念過ぎるので、スマホでも何枚か写真や動画を撮ったが、やはりいまいちである。この時の後悔から、カメラを新調してもっといい写真を撮りたいという欲望が生まれ今に至っているので、結果的には実りある失敗だったように思う。
  この個体は1週間ほどで亡くなってしまい、翌月再度あわしまで展示されて以降、知る限り日本での捕獲例はない。リベンジできる機会はあるのだろうか。

こんな写真しか残ってなくて恥ずかしいよ俺は

 オロシザメチャレンジに無事敗北した後は、イルカショーを見たり、日本有数のカエル館でヤドクガエル粘りしたり、深海水槽にへばりついたりと満喫して、昼過ぎに沼津港深海水族館へとハシゴすべく撤収した。改めて見返すと正直インスタに載せられないクオリティの写真ばかりだが、初心者時代を思い出して懐かしい気持ちになれる。初めてのソロ水族館遠征、初めてのレア生物狙いの場所として、あわしまマリンパークは忘れられない思い出の場所だ

イルカショーで人生初置きピン
現在は若いイルカなので練度が低く、公開トレーニング形式に変更されていた

後編に続く


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