牌譜検討⑤
今回で第5回となる牌譜検討です。
今回は攻撃と守備の2つのテーマを中心に検討を進めていきたいと思います。
それではさっそく牌譜を見ていきましょう!
【守備技術】
・ベタオリ手順(優先度★★★★)
基本的なオリ手順は問題なさそうです。
ベタオリ成功率は成績への影響度が高い項目の一つなので更に精度を上げて守備面を強化していきましょう。
ここは2pからのが良さそうです。
現物は2pと9p、7pがノーチャンスで8pもだいぶ安全なので親リーチには降りきれそうです。
注目すべきは上家の河です。
親リーチに両無筋の4mを一発で押しているので勝負手が入っていそうです。
上家の点数状況を考えると聴牌していたらリーチをしてきそうなので、まだ1シャンテンであることの方が多いかなと思います。
上家のダマテンケアをしてここから共通安牌を消費すると将来手詰まりを起こす危険があるので、上家のリーチに備えることを優先して2pから使っていくのが良さそうです。
これは現物の1mの方が明確に良いでしょう。恐らく、直前に通ったのを見落としてしまったのだと思います。
麻雀は一つの情報の有無で打牌が変わることがしばしばあり、特にベタオリの際はそれが顕著です。
一つ一つの情報を見落とさないように確認していきたいところです。
難しい知識や技術などは使えるとカッコ良いですが実は成績への影響度はあまり大きくなく、こういった落ち着いて集中すれば正解できることをどれだけ取り零さずに確実にできるかの方が成績に大きく影響します。
勝利とは地味で地道な行為を積み重ねた先に存在します。
・ベタオリ+αの思考(優先度★★)
西か北が良いと思います。
リーチに対しての安牌は足りているので、あとはどのような順番で切ってオリるのかを考えます。
よく見るとこの手は2シャンテンで、まだ聴牌できる可能性があります。
西・北と切って運良く聴牌したら、1枚切れの白くらいは聴牌料の為に押しても十分見合うでしょう。
もしかしたら将来1mがリーチ者以外に危険になることをケアしたのかもしれせんが、1mは全員に対して完全安牌になっています。
終盤で残り切り番の回数だけ安牌が足りている場合は、ベタオリ+αでできることがあるかを考えてみましょう。
先程と同じ局、1mをトイツ落としした後の場面です。
ここも西か北が良いのですが、先程とは別の理由です。
9pはこの巡目に限り全員に対して完全安牌なのですが、下家の親に鳴かれる可能性が僅かにあります。
残り切り番はここを含めて2回で、西と北を切れば9pを切ることなく流局まで辿り着けますね。
一応、西と北の方はリーチ者以外で地獄単騎に当たり得るのでこの巡目に限り9pの方が安全ではあるんですが、それは考慮する必要もないレアケースでしょう。
9pも実際に鳴かれることはあまりないのですが、切らなくて済むならわざわざ切る必要はないですよね。
これらのベタオリ+αの技術は戦績への影響度は他に比べて小さいので優先度は低く、確実にベタオリをしてミスをしないことの方が重要です。
あくまで、ベタオリを確実にしつつ余裕がある場合に考えれば良い程度のことです。
しかし、これらのことを考える余裕を持つ為にはベタオリ…つまり牌の安全度の比較を少ない思考労力でできるくらい精度を高める必要があります。
新しいことを考える為には基礎技術の精度を高めて基礎技術へ使う思考量を減らし、思考に空き容量をつくることが第1歩です。
結局のところ、地道な基礎技術の積み重ねが一番成績向上への影響が大きいんですね。
【攻撃技術】
・序盤の方針(優先度★★★)
リーチ狙い、手役狙い、鳴き進行など方針によって手組みの仕方は変わります。
序盤の段階でその局の方針をある程度イメージして打牌することで、その局で自分がやりたいことを正確に打牌に反映させやすくなります。
打9sが良いと思います。
現状の形では9sにくっつけて嵌張や辺張を作っても、そこそこリーチのみの愚形待ちになりそうな手です。
それならば東の重なりからの混一色を見た方が価値のある手になりそうですね。
また、状況的にもリーチはあまり掛けたくないので鳴いて混一色のみの2000でも良いので手役を付けたいところです。
※ここでいう状況とは…
ラス前のトップ目、ここを和了ってオーラスを迎えればほぼ連対確定でトップもだいぶ取れそう。
しかしラス目の親はかなり押して来ることが予想でき、親に放銃してしまうと一気に点数状況が悪くなる為、できればリーチで無防備になることは避けたい、という状況のことです。
どちらも9pか南を切るのが良いでしょう。
この手は0メンツで両門が1つあるだけなので先制でリーチまで辿り着くのは少々難しいです。
役牌を重ねて鳴いて進める進行の方が和了がありそうなので、役牌は残してオタ風や孤立19牌から処理していくのが良いと思います。
特にダブ東は1枚切れとはいえ重ねればダブ東赤の5800の和了は十分狙えるようになるので、他に切れる牌がなくなるまでは残したいところですね。
この手はバラバラなので、正直何を切ってもだいたい和了れないです。
ただ、役牌を重ねたときは役バックで守備力を確保したまま和了に向かうこともできるので、そのルートは残して南や8sあたりを切るのが良いと思います。
少なくとも、生牌の南よりは1枚切れの白の方が安全で自分にも利用価値のある牌なので、南よりは白を優先的に残したいです。
この局はだいたい和了れないと見ての打6mかと思います。
ただ、この手はドラの5m(特に赤)を引いたときは和了に向かう価値のある可能性が出てきます。
価値の低い手を守備的に打つことは重要ですが、その中でもたまたま運の良いツモを貰って価値のある手になったときに和了れる可能性だけは残しておくと良いかなと思います。
6m1枚を先切りしたところで守備力は対して上がらないので、8sあたりを切って6mは残しておくのが良いでしょう。
これら序盤の選択は、聴牌から遠い段階でのことなので一つ一つはそこまで成績に影響を与えません。
しかし、序盤の選択はほぼ毎局訪れるものです。
塵も積もれば山となる、と言うように積み重なれば無視できないほどの影響があります。
手牌評価を正しく行い、その局の方針をイメージしながら序盤の選択ができると良いでしょう。
・牌効率、受け入れ枚数(優先度★★★★★)
受け入れ枚数は聴牌速度・和了率に直結する要素です。
1局のうち、最初に和了った人しか和了る権利がなく、和了ればその局に失点しないというルールの麻雀において聴牌速度や和了率はとても重要です。
攻めの技術においては、牌効率・受け入れ枚数が全ての思考の軸となります。
これは7pか5sを切れば、いわゆる完全1シャンテンになります。
5sが赤なので7pを切るのが自然でしょう。
南を切りましょう。
ドラドラあってそこそこ形も良いので全力で和了に向かう手です。
確かに5sと8sで受け被りがあるのですが、ツモ7sで嵌張になるのか両門になるのかは大きな違いです。
価値のある手の序盤では、基本的に守備は考えずに全力で手を組みましょう。
勝負手での守備に関しては、中盤に差し掛かる頃に手牌の進行度合いに合わせて考え始めれば問題ありません。
2sか南を切りましょう。
ツモ6sで5ブロック候補が出来上がりました。
ここから先の余剰牌(2s・南)は、ターツを切り替える為のくっつき候補か安全牌としての機能を担うことになります。
2pが2枚切れで1pの価値は下がってはいるのですが、それでもまだ2枚の受け入れを生成する牌です。
余剰牌の2sや南は受け入れ0枚の牌なので単純牌効率上で1pに劣ります。
なので、2sや南に2枚の受け入れ差を覆すだけの強い価値がない限りは牌効率通り2sか南を切ることになります。
先に述べた通り、勝負手の序盤で受け入れを狭めて安牌を持つべきではないので、安牌としての役割しかない南よりも1pの方が価値があります。
では2sはどうでしょうか。
2sの役割はターツを切り替える為のくっつき候補になります。
現状の5ブロックで一番弱いのは唯一の愚形である68mです。
2sくっつきで嬉しいのはツモ3sでの両門化のみですが、23sは両門と言えど1sが2枚切れかつ4sが二度受けとなっている為に弱い両門と言えます。
68mターツと積極的に振り替えたいほどのターツではないので、2sのくっつき候補としての価値はあまり高くありません。
こうなると手牌に残しておく価値もあまりないので、安牌としての価値がある南の方を残して打2sとするのが良さそうです。
小難しいことを書きましたが、実戦ではもっとシンプルに考えて構いません。
真っ直ぐ聴牌に向かいたい手では基本的に牌効率通り受け入れ枚数重視で打牌を選択しましょう。
そうしておけばだいたい正解で、正解ではなかったとしても大きな損になることはほとんどありません。
受け入れ枚数を多少狭めてでも手に残しておきたいと強く思う牌があったときのみ、牌効率通りではない打牌選択をするかどうか検討する、くらいのスタンスで良いと私は思います。
打發が良いと思います。
現状は雀頭がなく發を重ねて鳴いたとしても、遠い1000点や2000点の鳴きになりそうです。
この手はツモ次第でメンタンピンや三色・一盃口・ドラなど価値のある手に発展する可能性があります。
もうしばらくは真っ直ぐ牌効率通りに打ってみて、数巡のツモを見てから積極的に行くか守備的に行くかを判断しても良いと思います。
ちなみに孤立牌の19牌と28牌では両門をつくるか否かという大きな違いがあります。
両門は一つつくるだけで手牌価値が大きく上がる場面も多いので、この違いは重要な要素となります。
19牌を切って役牌を残すような場面でも、28牌を切ってまで役牌を残すかどうかは19牌のときと比べて慎重に検討する必要があります。
白をツモって6ブロックある手になりました。
ここは5ブロックにする為に89pを落とすのが良いでしょう。
6ブロックに取る打1sとしてしまうと、白をポンしたり暗刻にしたときにシャンテンが進まなくなります。
また1手進んだときに必ず余剰牌が出る為、1シャンテンの形が弱くなります。
5ブロックと6ブロックの選択では5ブロックに受ける方が正解であることが多いので、基本的には5ブロックに受けることをオススメします。
ちなみに67sを払ってチャンタを狙う選択もあります。
しかし、この手は門前で先制聴牌することが稀で基本的に鳴きたい手です。
そして、鳴いた場合は白チャンタor三色チャンタの2000点にしかなりません。
鳴いて1000点の手で受け入れを狭めて2000点にしてもリターンは少なく、南2局トップ目という要素も加味してここは打点よりも和了率を優先する89p払いが良いかと思います。
ラス目で迎えた南3局、中が4枚あってそれなりに整った形の配牌です。
牌効率上、ここでの選択肢は以下の2つです。
・中をカンする
・中を切る
これ以外の選択は全て受け入れでロスが発生します。
例えば、西や南は切ると2枚の受け入れ損が発生します。
雀頭がないこの形では、西や南を重ねてトイツができても和了へ大きく前進するのでたかが2枚といえど逃さないようにしたいです。
注意したいのは、一見するとこの話はカン判断の話だと誤解する恐れがあることです。
【中をカンするか、中を切るか】の選択はカン判断の話ですが、【中をカンするor切るか、中以外を切るか】は牌効率(受け入れ枚数)の話でカン判断の話ではありません。
※ちなみにカン判断の話では、相当カン有利だと思います。
他家のツモ番を1回スキップすることで自分の和了率を上げることができますし、何より普段ならデメリットになり得る他家の打点を上げるという行為が今回はメリットになり得ます。
他家の打点が高い方が横移動のときに誰かが沈んで来てくれますし、子のツモ和了でも3着目の親被りとなって点差は縮まるので打点は高い方が良いです。
自分の放銃と親のツモ和了のときは損をしますが、それらの事象が発生した時点でカンの有無に関わらずラスが濃厚になってしまう為、せいぜい素点分の数ポイントを多く失うくらいのデメリットでしょう。
カン話休題、話を戻します。
正直な話をしてしまうと、序盤の聴牌からまだ遠い段階での2枚程度の受け入れ減は成績への影響は小さいです。
西や南は次に何をツモってもどうせだいたい切ることになる牌で、1巡長く残すかどうかの差しかないですしね。
ただし今は南3局のラス目で、そこそこ形が整っていて中〜高打点が見込める配牌を貰ったという状況です。
ラスが重いルールの段位戦において1,2位を争うほどの和了りたい手牌・状況の第1打ですら2枚の受け入れ損を許容してしまっているという点が、牌効率・受け入れ枚数を軽視しがちであるという思考傾向を象徴しているのではないかと思います。
少し強い言い回しをしましたが、それほど牌効率・受け入れ枚数への意識というのは麻雀において重要な要素なので敢えてこのように表現させて頂きました。
麻雀において和了というのは最強の行為です。
なぜなら
・自分が加点する
・自分の失点を防ぐ
・相手の加点を防ぐ
・相手を失点させる
という4つの要素を全て兼ね備えているからです。
ハッキリ言って強すぎます。
この強すぎる【和了】という行為に一番大きな影響を与えるのが牌効率・受け入れ枚数という要素です。
なぜならこの項の冒頭で話した通り1番最初に和了った人にしか和了の権利がなく、その和了への速さに対して一番重要な要素となるのが牌効率・受け入れ枚数だからです。
2位じゃ駄目なんです。
とはいえ、常に牌効率通り受け入れ枚数最優先で打つ必要はありません。
ではなぜそこまで牌効率の知識が重要だと言えるのでしょうか。
その理由は2つあります。
①聴牌速度を最優先で打ちたいときにその通り打つことができる
②速度以外の要素とのバランスを的確に取れるようになる
①についてはそのままで、使いたい場面で正確に使えるようにということですね。
牌効率通りに打たないのと打てないのとではそこに大きな差が存在します。
②については具体的には打点や守備、押し引きとのバランスに影響します。
牌効率の意識を強く持つと、今の自分の手牌が和了というゴールからどれくらいの距離があるのかということがある程度認識できるようになります。
例えば打点を狙う場面では、どんなに高打点に仕上げても和了れなければ意味がありません。
高打点を狙う中で和了する為に必要な速度とのバランスを取る必要があります。
例えば守備では、自分の和了が遠い手ほど相手の攻撃を受けやすいので守備力がより重要になります。
自分が和了から遠いことを正しく認識できれば、それだけ適切に守備力に手牌のパラメータを割り振ることができます。
例えば押し引きでは、自分の手牌がどれくらい和了できそうかという評価次第で押し引きの判断が変わります。
速度評価(牌効率)の能力が高いほど、聴牌より前の段階での押し引きの精度も高くなります。
このように牌効率の知識はいろいろな要素と密接に関係している、麻雀の基盤となる知識です。
この項についてかなり長く書いてしまいましたが、それだけ重要な項目だと私は考えています。
その重要性を肌で感覚的に伝わるようにしたいという狙いも込めて、意図的に長くしたという側面もあります。
とにかく成績への影響度が大きい要素の一つなので最優先で取り組むことをオススメします。
まとめ
最優先は受け入れ枚数に対する意識を高くすることだと思います。
そして牌効率の精度を高めて、パッと見た段階でおおよその受け入れ枚数が頭に浮かぶようにしておくと、手牌進行の精度を高めつつ+αの思考をする余裕ができると思います。
牌譜を見る限り、基礎の1つ上の段階の引き出しはいろいろ持っている印象でした。
例えば手牌価値が微妙な手では他家の鳴きに慎重に対応して無用なリスクを避ける等ですね。
だからこそ、その土台となる牌理の技術を盤石にすれば一気に成績が伸びる可能性を秘めていると感じました。
なぜなら土台の上に積み上げて行く、上の段階の引き出しはすでにいろいろと持っているわけですからね。
土台さえ盤石なら後はその上に1つずつ積み上げていくだけです。
最後に、牌効率に関して私が学んだ教材を一つ紹介します。
現代麻雀技術論のwebサイトです。
やや古いサイトで、最新のセオリーとは少し違う結論になってる箇所もあるかもしれませんが、それでも物凄く有益なことが書かれているサイトです。
ここに書かれていることを正しく理解して実践すれば、それで十分に魂天に到達でき得るくらいの重要な知識が書かれています。
定期的に反復して読みつつ実戦経験を重ねていけると良いかなと思います。
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