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【湖南市若者まちづくり課】キックオフセミナー第2回「エネルギー×SDGs」

こんにちは。
立命館SDGs推進本部の上田です。

今回は、(仮称)湖南市若者まちづくり課キックオフセミナー・第2回「エネルギー×SDGs」についてお伝えします。

※第2回は「留フェロONLINEカレッジ~Summer~」の一環としてオンラインとのハイブリッドで開催しました。

湖南市若者まちづくり課とは

「若者まちづくり課」は、大学生などの若者が主体的にまちづくりに参加できる「たまり場」を作ることを目的に今年度から動き出しました。湖南市は、滋賀県南部に位置し、自然に恵まれた地域です。「エネルギー」をテーマに市町村として滋賀県で唯一、SDGs未来都市に認定されています。「若者まちづくり課」では、そのような湖南市を盛り上げようという若者と一緒にセミナーやワークショップを通じて湖南市の未来を考えます。

セミナー第1部|イントロダクション

 本セミナーはハーバード大学でエネルギー工学と公共政策を学ぶNPO法人グローバルな学びのコミュニティ・留学フェローシップ 代表理事の髙島崚輔が担当しました。
 セミナーは「なぜ、地域×エネルギーなのか?」という問いから始まりました。まずは髙島より、会場にいる約30名、オンライン上にいる30名に対して、自己紹介を交えながらイントロダクションがありました。

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 髙島は現在、ハーバード大学の4年生。大学では再生可能エネルギーを軸とした分散型エネルギーグリッドについて研究しています。エネルギーに興味を持ったきっかけは、大学1年生の春に福島第一原発を視察したことだったそうです。

 今回のセミナーでは大きく分けて3つから「エネルギー×SDGs」を考えていきました。レクチャーの前、イントロダクションとして投げられた問いは、「滋賀県湖南市をはじめ、なぜ地方自治体がエネルギーについて考える必要があるのか?」というもの。参加者からは、「地方自治体は地元のことを一番知っているから」「企業だと利益を一番に考えてしまいがちだから」「個人ではコストがかかるため再生可能エネルギーなどへのハードルが高いから」「エネルギーは重要なインフラだから」などが挙げられました。

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 さらに、会場に問いを投げかけながら、昨今注目されている地球温暖化の話や2050年までに日本のCO2排出量を実質ゼロにする目標を立てていることについて説明しました。

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セミナー第2部|湖南市エネルギーレクチャー

 続いて湖南市・環境政策課の池本さんから、湖南市のエネルギーの取り組みについて説明していただきました。

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 湖南市は、関西で初となる市民共同発電所「てんとうむし1号」を1997年に設立するなど、早くから地域密着型の市民発電に取り組んできました。なぜ、湖南市はそれ以来市民発電を重視してきたのでしょうか。

 今回はまず、地域循環共生圏という考え方を用いて解説がありました。環境省が提唱している地域循環共生圏とは、地域資源を活かしながら、地域特性に応じて他地域と資源を補完し合うことにより地域の活力が最大限に発揮される考え方のことです。
 湖南市では、太陽光や森林など自然エネルギーを地域資源であると捉え、エネルギーを地域でつくり地域で使うことで地域活性化につなげることを目指しています。
 地域経済循環図では、エネルギー代金として年間180億円ものお金が湖南市から地域外に流出していることが示されました。市民共同の発電所の設立には、地球温暖化を抑制するため自分たちにできる行動をしようという市民の想いはもちろん、地域で経済を循環させようというねらいもあるそうです。

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 市民の動きに対して行政は、総務省の緑の分権改革の実施に取り組みました。これは、人、資源、資金が都会に集中するのではなく、地域で生み出されたものは地域の中で活用し、地域の自給力を高め、成長しようとする動きです。
 そして2012年9月には、全国で初めて条例として自然エネルギーのルールを定めた「湖南市地域自然エネルギー基本条例」を制定しました。

 自然エネルギー活用の具体的な事例の1つがコナン市民共同発電所です。市民から出資を受けて発電所を稼働させ、出資者には配当として地域商品券を配布します。これにより湖南市でエネルギーを賄えるだけではなく、地域の中でお金を使う新たな循環が生まれるという経済効果もあります。2016年には官民連携のこなんウルトラパワー株式会社も設立され、官民が一体となって自然エネルギーの活用を進めています。

 また、農福連携としてのいもエネルギー事業というユニークな事例もあります。さつまいもを発酵させてメタンガスをつくり、発電しようという取り組みです。福祉施設などでさつまいもを栽培し、発電への利用や6次産業化を目指すことで、新たな雇用・利益の創出にも繋がっています。

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 現在湖南市は、第二次湖南市地域自然エネルギー地域活性戦略化プランを策定し、さまざまな取り組みを加速させています。このプランではSDGsの経済的視点・社会的視点・経済的視点・環境的視点から基本方針を定めました。湖南市が目指す将来のビジョンとして、自治体新電力を核として、地域にある自然エネルギーを活用することで、地域循環共生圏の実現とSDGsへの貢献を掲げています。

セミナー第3部|ワークショップ

 レクチャーのあとには「みんなで2050年の湖南市のエネルギーを考えよう」というテーマでグループワークを行いました。

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 設定は以下の通りです。経済産業省の資料に基づき、それぞれの発電の条件を簡易化した上で、湖南市にふさわしいエネルギーはなにかその計画を市民が納得できるように説明するにはどうすれば良いか、考えてもらいました。

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 ミッションを与えられた参加者は、テーブルやブレイクアウトルームに分かれて話し合ったあと、現地とZoom上の代表2チームが全体に共有しました。

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チーム1:火力2、太陽光2、風力1
原子力発電は市民の反対があるのではということで、最初に省いた。火力発電を取り入れたのは自然エネルギーだけでは不安定だから。太陽光は湖南市がすでに実践しているので期待できる。湖南市は風がないというお話もあったが、湖南市民として風がよく吹くのではというイメージを持っていたので風力も一部取り入れた。

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チーム2:風力3、太陽光2
火力は二酸化炭素排出量が多いから使わなかった。原子力発電はイメージや産業廃棄物など発電後のリスクが高いと判断しこちらも使わない。残りの太陽光と風力は、広い場所が必要で災害に弱いという弱点がある太陽光を少し減らし、風力を増やした。

 グループごとにさまざまな視点から話し合われたようで、各チームで組み合わせた発電方法もその割合も異なっていました。
 今回のディスカッションでは、計算上最も合理的に見える原子力発電を選んだチームはほとんどありませんでした。「コストが低く、二酸化炭素排出量も少ないが、原子力は市民の納得が得られないから使いませんでした」というコメントが多く出たことが印象的でした。髙島からは、エネルギー政策を考える際にはどの発電方法が好きか嫌いかではなく、未来を見据えた上で計画し、市民に納得してもらえるように説明を尽くすことが最も大事だとお伝えしました。

クロージング|

 最後に、髙島よりまとめを行いました。
今回のセミナーでは、レクチャーでのインプットやワークショップでのアウトプットにおいて、以下の4つ「3E+S」がキーワードとなっていました。

Environment - 環境への影響
Economical efficiency - 経済性(価格)
Energy security - 安定供給
Safety - 安全性

 この4つのバランスをどのように取り、発電方法を選ぶのか。参加者のみなさんが悩んでいたことは、まさに今、今後のエネルギーの方向性を決める上で湖南市も政府も考えていることです。2050年カーボンニュートラルに向けて、この先いま以上にたくさん取り上げられるようになるエネルギー問題。髙島からは「自分なら自分たちのまちのエネルギーをどうするか、今日の議論を頭の片隅に置いて考え続けてほしい」と参加者へメッセージを伝えました。

 また、髙島の専門分野でもあるエネルギー工学の観点から、「価格や二酸化炭素排出量など、条件は技術革新によって変えられるかもしれない。例えば、台風でも発電できる風力発電、二酸化炭素を地中に埋める技術など、すでに開発されている新しい技術がたくさんある。これらが実用化されると前提条件が変わり、「3E+S」のバランスは今よりも取りやすくなるかもしれない」ということにも少しだけ触れ、セミナーは終了しました。

最後に

 最後までお読みいただきありがとうございました。
 今回は、会場に約30名、オンライン約30名と、たくさんの方に参加していただき、会場とオンラインを繋いだインタラクティブなセミナーとなりました。エネルギーについて日頃考えることは少ないと思いますが、生活に身近でまちや地球の未来を変える可能性があると知ると、もっと関心を持って考える必要があると感じるきっかけとなったのではないかと思います。

湖南市若者まちづくり課についての詳細はこちらを参照ください。


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