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米国政府の概要 – 立法府 ― 議会の影響力

政府には、法律を作る力が含まれる

— アレクサンダー・ハミルトン、『ザ・フェデラリスト』、1787~88年

合衆国憲法第1条は、連邦政府のすべての立法権を、上下両院から成る連邦議会に付与している。憲法に基づき、上院は、各州が2人ずつ選出する上院議員によって構成される。現在の上院議員数は100人である。下院の議員数は、各州の人口に基づいて決められるため、憲法で具体的に定められてはいない。現在の下院議員数は435人である。

憲法採択後100年以上にわたって、上院議員は、国民の直接投票によってではなく、各州の議員によって選出され、それぞれの選出州の代表と見なされていた。彼らの任務は、すべての立法において自州が公正に扱われるようにすることだった。1913年に採択された修正第17条によって、上院議員は直接選挙で選ばれることになった。

憲法制定会議の代議員たちは、各州政府の代表と人民の代表という、2つのグループの双方が、すべての法案を承認しなければならないようにすれば、連邦議会が拙速のうちに法案を可決する危険がほとんどなくなる、と考えた。すなわち、英国議会のように、一方の議院が常にもう一方の議院を抑制することができる、というわけである。修正第17条も、両院の間のこうした力の均衡を大きく変えていない。

制定会議では、連邦議会の構成と権限を巡って白熱した討論が行われたものの、多くの代議員は、立法府の重要性は比較的低いままだろうと思っていた。連邦議会は主として対外問題を扱い、国内問題は州および地方政府に任せるものだ、という見方も一部にあった。しかし、こうした見方は明らかに誤っていた。実際には、連邦議会は極めて活発な存在となり、国家のあらゆる問題に関して広範な権力と権限を有してきた。行政府に対する立法府の力は、米国の歴史を通じて盛衰を繰り返してきたが、議会が大統領の決断を自動的に承認する存在だったことは、一度もない。

連邦議会議員の資格
憲法の規定により、合衆国上院議員は、少なくとも30歳に達しており、9年以上米国市民であり、選出州の住民でなければならない。下院議員は、少なくとも25歳に達しており、7年以上米国市民であり、選出州の住民でなければならない。これ以外にも各州が連邦議会議員の資格を設定することは可能だが、合衆国憲法は、所属する議員の資格を決定する権限を各議院に与えている。各州は2人の上院議員を選出することができる。従って、全米で最も小さいロードアイランド州(総面積およそ3156平方キロメートル)も、最も大きいアラスカ州(およそ152万4640平方キロメートル)も、上院議席数は同じである。また、推定人口が48万人のワイオミング州も、3227万人のカリフォルニア州も、上院議席数は2議席である。

下院の総議席数は、連邦議会によって定められてきた。各州が選出する連邦下院議員数は、州の人口に基づいて決められる。ただし、人口にかかわらず、どの州も少なくとも1人の下院議員を選出することができる。現在、アラスカ、デラウェア、モンタナ、ノースダコタ、サウスダコタ、バーモント、およびワイオミングの7州は、下院議員が1人しかいない。一方、20人以上の下院議員を連邦議会に送っている州が6州あり、カリフォルニア州だけでも52人に上る。

憲法は、10年ごとに国勢調査を行い、人口の推移に従って下院議席数を再配分することを規定している。憲法は当初、下院議員数は人口3万人につき1人の割合を超えてはならないと規定していた。当初の下院は65議席から成り、第1回国勢調査の後、これが106議席に拡大された。3万人につき1議席という規則がそのまま続いていたら、米国の人口増に伴い、現在の下院議員数はおよそ7000人に増えていたはずである。実際には、この規則は徐々に改定され、現在では下院議員数は、ほぼ人口60万人につき1人となっている。

各州議会は、州を下院選挙区に分けているが、これらの選挙区は人口がほぼ均等でなければならない。各選挙区の有権者は、2年ごとに下院議員を選出する。

上院議員は、偶数年に行われる全州選挙で選出される。上院議員の任期は6年で、2年ごとに上院議席の3分の1が改選される。従って、上院議員の3分の2は、常に国政レベルの議員経験を持つ人たちで占められることになる。

下院の場合、理論上は新人議員ばかりで構成されることもあり得る。しかし、現実には、下院議員の大半は再選を繰り返してきており、下院でも上院と同様、中核となる経験豊富な議員の集団を常に頼りにできる。

下院議員の任期は2年なので、連邦議会の会期も2年間と見なされている。合衆国憲法修正第20条により、連邦議会は、同議会が別の日を定めない限り、毎年1月3日に通常会期を開始することが定められている。議会は通常、年末近くに議員が休会を表決するまで開会している。大統領は、必要と見なした場合、特別会期を召集することができる。議会は、ワシントンDCの連邦議会議事堂で開催される。

下院と上院の権限
連邦議会のどちらの議院も、あらゆる事柄に関して法案を発議することができる。ただし、歳入の徴収に関する法案だけは例外で、下院で発議されなければならない。従って、国庫に関する決定に際しては、大きい州の方が小さい州より影響力を持つように思えるかもしれない。しかし、実際には、いずれの議院も、もう一方の議院が可決した法案を否定する決議を行うことができる。上院は、下院の歳入法案を否決したり、あるいはその法案の性質を変えてしまったりするような修正条項を付加することができる。その他の法案に関しても全く同様である。そうなった場合には、各院の議員から成る両院協議会の調整によって合意に達することができない限り、この法案が法律として成立することはない。

また、上院のみに与えられた権限は、ほかにもある。大統領が指名した連邦政府高官や大使を承認する権限と、3分の2の表決により、あらゆる条約を批准する権限である。いずれの場合も、上院が否決すれば、大統領の決定は無効となる。

連邦政府職員の弾劾に関しては、下院だけが、弾劾裁判につながるような不正行為の起訴を行う権限を有する。そして、上院だけが、弾劾裁判を審理し、有罪または無罪の判決を下す権限を有する。弾劾裁判で有罪となった連邦職員は、公職を解雇される。

合衆国憲法第1条には、以下のような連邦議会の広範な権限が挙げられている。

— 税を賦課し、徴収すること
— 国庫のために金銭を借り入れること
— 各州間の通商と外国との通商に関する規則と規定を定めること
— 外国人の帰化に関し、全米で同一の規則を定めること
— 貨幣を鋳造し、その価値を定め、偽造者に対する罰則を規定すること
— 度量衝の標準を定めること
— 破産に関して、全国で同一の法律を定めること
— 郵便局と郵便道路を建設すること
— 特許と著作権を発行すること
— 連邦裁判所制度を設立すること
— 海賊行為を処罰すること
— 戦争を宣言すること
— 軍隊を招集し支援すること
— 海軍を維持すること
— 連邦の法律を執行し、無法状態を鎮圧し、また侵略を撃退するための民兵を招集すること
— 政府所在地(ワシントンDC)のあらゆる法律を制定すること
— 合衆国憲法の執行に必要なあらゆる法律を制定すること

これらの権限の中には、今や時代遅れとなったものもあるが、その効力は継続している。修正第10条は、連邦政府に委任されなかった権限は、それぞれの州または国民に留保される、と規定することによって、連邦議会の権限を明確に制限している。さらに合衆国憲法は、具体的に、連邦議会が以下のような措置を取ることを禁止している。

— 反乱または侵略に際し必要とされる場合以外に、人身保護令状の特権―犯罪の被疑者は、収監される前に判事の前に、あるいは法廷に、出る権利があるとする規則―を停止すること
— 審理抜きで犯罪または違法行為の有罪判決を下すことのできる法律を可決すること
— 特定の行為を遡及的に犯罪と見なす遡及処罰法を制定すること
— 市民に対する直接税を、すでに行われた国勢調査に基づく割合によらずに賦課すること
— 各州から輸出される物品に課税すること
— 通商または徴税に関して、特定の州の港湾あるいはそれらの港湾を使用する船舶を特に優遇すること
— 貴族の称号を授与すること

連邦議会の役員
合衆国憲法の規定により、副大統領が上院の議長となる。ただし、副大統領は、可否同数の場合を除き、表決には加わらない。副大統領が欠席の場合は、上院が臨時議長を選任する。下院議長は、下院が選出する。下院議長と上院臨時議長はいずれも、常に各議院の多数党の議員が務める。

連邦議会の新たな会期の初めには、各政党の議員が、法案の流れを取りしきる院内総務やその他の役員を選出する。これらの役員は、議長や各委員長とともに、立法のさいに強い影響力を持つ。

委員会のプロセス
連邦議会の主な特徴のひとつは、議事進行に際して各委員会が果たす、極めて重要な役割である。委員会が今日そのような重要性を持つに至ったのは、憲法が企画したわけではなく、進化によるものである。憲法には、委員会の設置に関する規定がないからである。

現在、上院には17(*)の常任委員会があり、下院には19(*)の常任委員会がある。各委員会は、外交、防衛、金融、農業、商業、歳出など、立法の特定の分野を専門に扱う。各議院で発議される法案は、ほとんどすべてが委員会に付託され、委員会が調査・勧告を行う。委員会は、付託された議案を承認、修正するが、葬り去ったり、無視したりすることもできる。下院でも上院でも、法案が委員会の承認を経ずに本会議に到達することは不可能に近い。下院では、法案を委員会から外して本会議にかけるためには、議員218人(定員の過半数)の署名が必要である。また上院でも、全議員の過半数(51人)の支持が必要である。実際には、そのような委員会審議打ち切り動議が、必要な支持を得ることはめったにない。(*訳者注: 2007-2008年の第110議会では、常任委員会の数は上下両院各21ずつとなっている)

各議院の多数党が、委員会の進行を取りしきる。各委員会の委員長は、党員のコーカスか、特別に指定された議員グループによって選出される。少数党は、各議院における自党の勢力に比例した数の委員で代表される。

法案はいろいろな方法で提出される。常任委員会が作成する法案、特定の立法課題を扱うために設置された特別委員会が作成する法案、そして大統領または他の行政幹部が提案する法案などがある。市民や議会外の組織が議員に法案を提案することもあれば、議員自身が法案を発議することもある。提出された法案は、指定された委員会に送られ、ほとんどの場合その委員会が公聴会を開き、当該法案に賛成または反対する人々の意見を聞く。公聴会は、立法の過程を一般市民に公開するもので、数週間あるいは数カ月間にわたって続くこともある。

委員会制度の利点のひとつは、議員およびそのスタッフが、さまざまな立法分野でかなりの専門知識を蓄積できるという点である。この共和国の初期の、まだ人口が少なく、連邦政府の任務の幅も狭く限定されていた時代には、そうした専門知識がそれほど重要ではなかった。それぞれの議員が何でもこなし、あらゆる分野に知識をもって臨んだ。しかし、今日の国民生活の複雑性に対処するには専門知識が必要となり、議員は公共政策の1、2の分野で専門知識を身につけていることが多い。

委員会が法案を支持すると、法案は本会議での公開討議に送られる。上院では、規則により、事実上、無制限の討論が許可されている。下院では、議員数が多いため、議事運営委員会が通常、討論を制限する。討論が終了すると、議員は、投票により、法案を可決するか、否決するか、棚上げする(保留により事実上の廃案にする)か、または委員会に差し戻す。一方の議院で可決された法案は、もう一方の議院に送られ、審議される。そこで法案が修正された場合には、各院の議員から成る両院協議会が、その差異の調整を試みる。

両院を通過した法案は、大統領に送付される。憲法の規定により、法案が法律として成立するためには、大統領の承認を得なければならないからである。大統領は、法案に署名してこれを法として成立させるか、または法案を拒否することができる。大統領が拒否した法案を法として成立させるためには、両議院が3分の2の表決によって、それを再承認しなければならない。

また大統領は、法案への署名も拒否権の発動も、ともに拒否できる。その場合、法案が大統領に送付されてから10日後(日曜日は除く)に、この法案は大統領の署名なしで法律として成立する。この規則の唯一の例外は、大統領に法案を送付した後、上記の10日間の期間が終了する前に、連邦議会が休会した場合である。その場合、大統領が処置を取らないことによって、法案は無効となる。これを「握りつぶし拒否権(pocket veto)」という。

連邦議会の調査権
連邦議会の機能のうち、立法以外で最も重要なもののひとつが、議会による調査権である。この権限は通常、常任委員会、特別な目的のために設置された特別委員会、両院の議員から成る合同委員会のうち、どれかに委任される。調査の目的は、将来の立法の必要性に関する情報収集、すでに採択された法律の有効性の検証、立法府以外の政府の部門の職員や幹部の資格や実績の調査、そして、まれに、弾劾手続きの下準備などである。委員会は、調査公聴会の実施や詳細な調査報告書の作成のために、外部の専門家の協力を頻繁に要請する。

こうした調査権には、必然的に重要な結果が伴う。そのひとつは、調査とその結果を公表する権限である。委員会の公聴会は、ほとんどが一般公開され、マスコミにより広く報道される。従って、議会による調査は立法者にとって、市民に情報を与え、国家的な課題について一般市民の関心を高めるための、重要な手段のひとつとなる。また、議会の委員会は、証言をしたがらない証人に証言を強制する権限や、証言を拒否する証人には議会侮辱罪で、また偽証をした証人には偽証罪で、出頭を命じる権限を有する。

連邦議会の非公式の慣行
ヨーロッパの議会制度とは対照的に、米国の連邦議会議員の選出と行動は、中央の政党の党紀とはほとんど関係がない。共和党にせよ民主党にせよ、米国の主要政党はどちらも、地方および州の組織の連合であり、4年ごとの大統領選挙期間中、全国政党として団結する。従って、連邦議会の議員がその地位を得ているのは、全国政党の指導者や仲間の議員のおかげではなく、それぞれの地元の、あるいは州の有権者のおかげである。その結果、立法の際の上下両院議員の行動は、有権者の多様性と、忠実な支持層を個人的に築いてきたことによる自由とを反映して、個人主義的かつ独自性の強いものとなる傾向がある。

このように連邦議会は、階層的な組織ではなく、合議的な組織である。企業のように権力が上から下へ流れるのではなく、事実上あらゆる方向へ権力が流れる。賞罰の権限がほとんどないため、中央の権威は最低限しか存在しない。議会の方針は、争点ごとに立場を変える議員たちの合従連衡で決められる。ホワイトハウスからの圧力や、重要な経済団体あるいは民族団体からの圧力など、いくつかの圧力が対立する場合には、影響力の大きい部門との関係を悪化させないために、議院が手続き規則を利用して決断を遅らせることもある。関連する委員会が十分に公聴会を開催しなかったという理由で、審議を遅らせることもできる。また、議会が審議を行う前に、特定の機関に詳しい報告書の作成を指示することもできる。さらに、いずれの議院においても、議案を棚上げし、その中身に判断を下すことなく、事実上廃案とすることができる。

連邦議会には、非公式あるいは暗黙の行動規律があり、それが特定の議員の任務や影響力を決定する。立法の任務に専念する「インサイダー」議員の方が、国家的問題について発言して認知度を高める「アウトサイダー」議員より、議会では大きい権限を持つことがある。議員は、同僚議員には礼儀正しく接し、相手の政策がいかに受け入れ難いものであっても、個人的な攻撃は避けなければならない。また議員は、あらゆる立法課題について専門知識があると主張するよりも、いくつかの政策分野を専門に扱うことが期待される。このような非公式の規則に従う議員の方が、有力な委員会や少なくとも有権者の大部分の利害に影響を及ぼす委員会の委員に、任命される可能性が高い。

委員会制度
合衆国憲法は、議会による委員会設置を具体的に定めてはいない。しかし、国家の成長とともに、審議中の法案について、より徹底的な調査を行う必要性が高まってきた。委員会制度は1789年に始まった。下院の議員たちが、新たな法案を巡る果てしない議論に行き詰ったため、この制度が導入された。当初の各委員会が扱った課題は、独立戦争の損害賠償請求、郵便道路や区域、対外貿易などであった。その後、政治、社会、経済の変化に対応して各種の委員会が設置され、解散されてきた。例えば、独立戦争損害賠償委員会の必要性は、もはや全くなくなったが、その代わり、上下両院には復員軍人委員会が設置されている。

第106議会(1999~2000年)では、下院に19、上院に17の常任委員会があったほか、両院の議員を委員とする合同常任委員会が4つあった。それは連邦議会図書館、印刷、課税、経済の各委員会である。このほかに各議院は、特定の問題を調査するための特別委員会を指定することができる。また、作業量の増加に伴い、合計約150の小委員会が、常任委員会から派生している。

では、これらの委員会は実際に何をするのか。議会に提出される各法案について、しかるべき委員会が、提案の内容を徹底的に調査する責任を持つ。通常、委員会は、専門家の証言を得るための公聴会を開催する。これらの専門家は、当該委員会に加わっていない連邦議員、行政府の職員、民間部門の組織代表、そして一般市民などである。

委員会は、あらゆる事実が集められた後、その法案を支持する報告書を提出するか、それとも修正付きの可決を勧告するかを決める。また、法案を棚上げし、事実上検討を打ち切る場合もある。委員会から法案が本会議に送られ、下院または上院の本会議でそれぞれ可決された場合は、別の委員会が、下院と上院の法案の差異を調整する活動を始める。この委員会は両院の議員から成り、「両院協議会」と呼ばれる。両院協議会は、全員が満足するような形の法案を完成させ、この法案が各院の本会議に送られ、最終的な審議・投票が行われる。通過した法案は、大統領に、署名のため送付される。

連邦議会の常任委員会

下院

農業委員会
歳出委員会
軍事委員会
銀行・金融サービス委員会
予算委員会
商業委員会
教育・労働委員会
政治改革・監視委員会
下院管理委員会
国際関係委員会
司法委員会
資源委員会
議事運営委員会
科学委員会
中小企業委員会
倫理委員会
運輸・インフラ委員会
復員軍人委員会
歳入委員会

上院

農林委員会
歳出委員会
軍事委員会
銀行委員会
予算委員会
商業・科学・運輸委員会
エネルギー・天然資源委員会
環境・公共事業委員会
財政委員会
外交委員会
政府活動委員会
衛生・教育・労働・年金委員会
インディアン問題委員会
司法委員会
議事運営委員会
中小企業委員会
復員軍人委員会

連邦議会の監督権
辞書によると、「監督」の定義は「注意深く監視すること」である。「監督」は、連邦議会が行政府に影響を及ぼすための最も効果的な手法のひとつとなっている。議会による監督は、浪費や不正行為を防止し、市民の自由と個人の権利を保護し、行政による法の順守を確保し、立法および市民教育のための情報を収集し、行政の実績を評価する。この監督は、内閣を構成する行政各省、各種行政機関、規制委員会、そして大統領職に対して適用される。

議会による監督には、以下のようなさまざまな形態がある。

— 委員会による調査と公聴会
— 大統領との公式協議と、大統領からの報告 — 大統領による任命、ないしは条約に関する上院の助言と同意 — 下院による弾劾手続きと、その後の上院による審理 — 大統領が執務不能となった場合、または副大統領職が欠員となった場合に、修正第25条に基づき行われる、上院と下院による手続き
— 連邦議員と行政府高官との非公式の会合
— 政府委員会への議員の参加

— 議会の委員会や、議会予算局、会計検査院(*)、および技術評価局などの議会が持つあらゆる部門による調査
(*訳者注:2004年会計検査院は政府説明責任局―Government Accountability Office―に組織替えされた)

議会の監督権は、行政官を更迭したり、政策を変えさせたり、行政府に対する新たな法的規制を提供したりすることに貢献してきた。例えば、1949年には、上院の特別調査小委員会が詳しい調査を行い、トルーマン政権の高官たちの間の汚職が明かるみに出た。その結果、一部の機関が再編成され、政府の汚職を調査するためのホワイトハウス特別委員会が結成された。

1960年代末には、上院外交委員会の公聴会のテレビ中継が、ベトナム戦争反対派の動員に貢献した。1973年には、議会がウォーターゲート事件を調査し、その結果、ホワイトハウスの高官たちが、政治目的のためにその地位を違法に利用したことが暴露された。そして翌年には、下院司法委員会がリチャード・ニクソン大統領に対する弾劾手続きを開始し、大統領を辞任に追い込んだ。また、1975年と76年に行われた特別委員会による調査で、情報機関による重大な不正行為が明らかになり、これが、特定の情報活動を抑制する新たな立法につながった。

1983年には、米国税関庁と移民帰化局の国境検問活動を統合する提案を議会が調査した結果、行政官が新たな立法なしにそのような変更を実施することに対する疑問が提起された。1987年には、当時の政権がイランに武器をひそかに売却し、その利益を、「コントラ」という名で知られるニカラグアの反政府軍の支援に流用するという違法行為を行っていたことが、議会の監視活動で明らかにされた。こうした議会の活動の結果、同様の行為を防止する法案が提出された。

1996年と97年には、超党派の議会委員会の調査と、その後の上院公聴会によって、所得税の徴収を行う連邦機関である内国歳入庁(IRS)の職権乱用と管理不行き届きが明らかになった。上院財政委員会で、IRSの職員は、未納の税金を徴収するよう極めて大きな圧力がかかったために、納税者が嫌がらせを受けることもあった、と証言した。また税金未納の疑いで、IRSから誤った告発を受け、執拗に追いまわされたという一般市民の証言もあった。1998年に議会は、IRS改革法案を可決した。これによって、独立した監視委員会が設置され、また、税金を巡る紛争で、立証責任を納税者からIRSに移行させるなど、納税者に対する保護が拡大された。

連邦議会の監督権は、大統領職を監視し公共政策を管理する重要な抑制機能であることが、これまでに何度も証明されている。

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