謙虚さと熱量こそ、原点
後期リーグで積み上げた勝点はわずかに6。
首位とは勝点差3の4位でリーグ戦を折り返したものの、今は熾烈すぎる残留争いに巻き込まれている。
この奈落っぷり。
当事者としても驚きは隠せない。
消化試合数が少ないからチャンスはまだまだあるが、厳しい戦いが続くことは間違いないし、下位2校の直近のエネルギーを見ればそれは一目瞭然だ。
何より、我々は早慶戦に負けた。
絶対に負けてはいけない相手に負けた。
リーグ戦も兼ねていた今年の定期戦。
これでまた、敵を勢いに乗せてしまった。
我々が受けたダメージは計り知れない。
出ていた選手の喪失感。
失った自信を取り戻すのは簡単ではない。
厳しすぎる残り4試合を戦うメンタリティを整える格好の機会になるはずだった。
それが、自分たちを地獄に突き落とす結果にしてしまった。
恥ずかしながら、今更、慶應に負けたあの夜にいろいろと考えた。これまでを振り返り、何がいけなかったのかを改めて考えた。
2年前にも同じような状況に陥り、同じようなnoteを書いた。
4年にもなったんだし、全体の前で言うべきだった。でも、今日の練習までに考えがまとまりきらなかった。とはいえ、言葉にせずに後悔する方がもっと嫌なので、批判を恐れずに書いていく。
卑怯だと思う。だけど、どうかお許しください。
あの頃は、ピッチ上の11人がみんな謙虚だったし、必死だったな。
と、勝てていた時期を思い返す。
プレシーズン中は「なんとかなるんじゃないか」という甘さが4年生中心にチームにあり、当然結果も出なかった。2部相手に練習試合で負け続けた。天皇杯予選では、都リーグ所属の青学に完敗した。当然の結果だった。4年生として逃げていた。甘かった。情けなかった。申し訳なかった。
そこから選手たちは立ち上がった。立ち上がってくれた。
不安しかなかったリーグ開幕戦。2部から昇格してきた相手に終始攻め込まれた。でも、その試合展開が自分たちにスイッチを入れたような気がする。謙虚に、必死に、身体を張り続けた。「かっこよさ」とか「美しさ」なんてなかった。前年度2位のプライドなんてどこにもなかった。「勝ちたい」という気持ちに向かって、正直に戦い続けた。みんなの熱量に感動した。「こんなにできるじゃないか」と。「なんでそれをプレシーズンから見せてくれなかったんだ」と。後半途中からピッチに立った2年の奥田がファーストプレーで相手GKに果敢にプレスをかけ、ミスキックを誘った瞬間に雄叫びを上げたシーンは今でも忘れられない。彼はストライカーだ。決して前線からのプレス要員で投入されたわけではないはず。それでも、自分に今求められている役割を理解し、それを体現した。あれこそが、あの謙虚さと熱量の出し方こそが、我々が立ち返るべき原点だ。
でも、開幕から3勝1分で迎えた流経戦で勝ったあたりから、どこかチームが天狗になり始めた気がする。何かを勘違いし始めた。
前半の約25分間、J1内定7人を擁するタレント集団に一方的に攻め立てられた。開始1分でゴールも決められた。敵の中野監督も試合後のインタビューで言っていたが、前半だけで4-0、5-0になっていてもおかしくない展開だった。
そんな試合を、たまたま拾った。
試合が終わったあと、センターバックとして相手の猛攻を跳ね返し続け、必死に身体を張り続けていた俊也がピッチに倒れ込み、しばらく動けなくなるシーンを見て心動かされた。
それだけ大変な試合をモノにしたんだなと。それだけピッチに立っていた選手は戦っていたんだなと。
ただ、この勝利がどこかチームに慢心をもたらした気がする。
試合中に選手のやりたいことのベクトルが合わず、バラバラになり始めた。下級生からもエゴが出始めた。全員が謙虚じゃなくなった。中盤がスカスカになって、嫌な失い方をしてカウンターを受けるのが悪目立ちし始めたのもちょうどこの頃くらいからだった印象がある。
流経戦の次の駒澤戦は完敗だった。相手との相性だとか、AGFで勝てていないだとか、いろいろとうまくいかない要因はあった。それでも、1-2というスコア以上に自分たちの天狗の鼻をへし折られる結果だった。
その次の国士舘戦は0-0だったものの、前半から相手の10番にスカスカに開いた中盤のスペースを使われてヒヤヒヤさせられた。数的不利に陥りながらも、得点チャンスを多く作った。決めきれなかった。だから「惜しかったね」でどこか終わった感覚があった。まだこの頃の早稲田は強かった。相手のコーチも試合後、「10人になっても、試合終盤でも攻撃の手を緩めないエネルギーを生み出せる早稲田はすごい」といったような内容の立ち話をしていた。
しかし、自分たちを覆っていたメッキも徐々に剥がれていく。
弱くて脆い自分たちが露わになっていった。
桐蔭戦は3-4で負けた。先制されても追いつき、勝ち越されても逆転し、このまま勝てる雰囲気だった。でも再逆転を許して負けた。4失点目の取られ方がまさに「選手のやりたいことのベクトルが合わない」を物語っていた。
延期試合を含めた直後の3連戦。優勝争いをするためにも、絶対に3連勝しようと臨んだ。
法政戦。勝った。ずっと攻め込まれていたけど、勝った。まさに、開幕5戦を負けなしで走り抜いた頃の早稲田らしい勝ち方だった。必死に、謙虚に、愚直に、泥臭く戦って勝った。この試合も、試合終了後にGKの袈依廉が膝をついてガッツポーズする姿が印象的だった。
順大戦はどっちに転んでもおかしくない試合展開だったが、その中でも決定機を相手よりも多く作りながら決めきれなかった。後半に2度あったGKとの1対1を仕留めきれなかった。
そして迎えた明治戦。1年生の頃から明治相手には終始押し込まれているイメージしかなかった。特に前半は。相手の運動量が落ちて試合展開がオープンになる後半になれば早稲田もなんとかチャンスを作れる…。勝った試合もあったが、常にそんな感じだった。その明治相手に前半からチャンスを多く作ることができた。荒れた芝の状態もあり、相手の出方がいつもより慎重だったこともあるかもしれない。だけど、近年の早明戦からはあまり予想がつかないような試合の入りだった。それだけに、前半のチャンスを決めきれなかったこと、自分たちのミスから失点したことが本当に悔やまれた。スコア上は0-3の完敗だった。
メッキが剥がれかけては修復し、を繰り返しながら、なんとかメッキコーティングを保ち、勝点18の4位で前期リーグを終えた。強くはなかった。安定もしていなかった。でもなんとか、謙虚に、必死に耐え抜いて、上位に食らいついた。
そんな矢先に暗雲は立ち込める。エースストライカーの加藤拓己が怪我をした。得点こそ思うように取れていなかったし、監督からも「内定が決まってから何か勘違いしている」と何度も怒られていた今季だったが、それでもエースとして苦しい時に点を取ってくれた。そんな彼が長期離脱を余儀なくされた。サッカーの能力だけでなく、彼の明るいキャラクターもチームには常に必要だった。チームにぽっかりと穴が空いた。
迎えたアミノバイタルカップ。
1回戦は苦しみながらもなんとか勝った。2-0だったけど、後半は見ていて結構苦しい試合だった。前半は完璧だっただけに、スカスカになった中盤を使われてカウンターを食らいまくった後半の出来が心配だった。
2回戦、日大には完膚なきまでに叩きのめされた。今シーズン戦った中で1番強かったんじゃないか。前半25分間の流経よりも強かったかもしれない。正直、画面越しからだったが勝てる道筋が見えなかった。自分なりに必死に勝機を見出そうとしたが、なかなか見えなかった。シュートを20本以上浴びせられ、0-3の完敗を喫した。「1部を食ってやろう」という日大の気概に屈した。これは冗談だが、ドーピングでもしているのではないかと疑うレベルの完成度だった。
総理大臣杯出場は叶わず、東伏見での活動を送る日々。またしても試練はやってきた。2度に渡る活動停止。結果的に9月19日まで公式戦ができなかった。アミノで日大にボコられた7月13日から、約2ヶ月。
復帰明け、大学サッカーの聖地・西が丘で挑戦する機会を得た。少しでも景気付けにと、試合前アップの時間帯に会場BGMで「君に捧げる応援歌」をかけた。我々にとっては縁のある楽曲だ。心の底から勝ってほしかった。でも負けた。復帰明け直後ということで、当然だと思われたかもしれない。ただ、負けるような試合ではなかった。スコアレスドローが相応しかった。
選手は苦しそうだった。試合を通して印象的だったシーンがある。ベンチから外池さんが「自分たちで、たぎらせろ!」と檄を飛ばし続けていた。選手はそれに必死に応えようと努力はするが、自分を奮い立たせないといけないのは頭では分かっていても身体が追いつかない。明らかに心技体がバラバラだった。苦しそうだった。またもや、メッキが剥がれた瞬間だった。
特に、俊也の不調ぶりは心配になるレベルだった。上背こそないが、今まではある程度勝てていた空中戦で全く勝てない。勝率0%に近かった気がする。失点に直接つながるミスも犯した。後半になっても一向に調子が上がらない。楔の縦パスをことごとく引っ掛け、カウンターを食らう。苦しそうだった。怪我人が続出し、台所事情がかなり苦しかったのは事実。特にDF陣はレギュラークラスのセンターバックがこぞって長期離脱し、前期リーグから本職ではない俊也がセンターバックをやらないといけない緊急事態だった。当初相棒を組んでいた西田も含め、2人とも1シーズンを主力として戦うのは大学に入って初めてだった。そんな中でも、彼らはタフに、たくましく戦い続けてくれた。それでも、彼らはまだ脆かった。まだ成熟しきっていなかった。すぐにメッキは剥がれてしまった。西田も立正戦の直前に怪我をした。あまりにも痛手すぎた。
次の国士舘戦。試合に挑む選手の姿は眩しかった。たぎっていた。立正戦で出せなかった雰囲気を自分たちから生み出せていた。立ち返るべき原点がそこにあった。前半だけで2点のビハインドを負ったが、心配はしていなかった。なぜなら、前半終了間際に見た相手の顔がとてもキツそうだったから。みんな疲弊していた。予感は的中する。後半はワンサイドゲームになり、後半だけで4点をとって逆転した。「奇跡だ」みたいに思う人もいたかもしれないが、必然の結果だったと個人的には思う。
ここから波に乗れるかと思ったが、うまくはいかなかった。
迎えた筑波戦、試合を優位に進めていたものの、もったいない失点の仕方で敗れた。
桐蔭戦はまたもやド派手な打ち合い。これこそまさに奇跡の逆転勝利という感じだった。
それでも、その後は駒澤、明治、慶應と3連敗。筑波戦と同様、失点の仕方がもったいなさすぎた。だから負けた気が全くしなかった。勝てなかったかもしれないけど、勝点1は拾えたはずだった。でも、その勝点1でさえもスルリと逃してしまった。
失点が止まらない。得点は取れているのに。しかも、その失点の仕方が本当に嫌な感じ。得点直後の失点。前半や試合終了間際の失点。1番集中しないといけない時間帯でことごとく失点を重ねる。やられてはいけない場面でことごとくやられる。自分たちのリスク管理の甘さが如実に出てしまっている。
ここで冒頭の感情に戻る。
あの頃は、ピッチ上の11人がみんな謙虚だったし、必死だったな。と。
最近は守備陣を中心に、この謙虚さと必死さが欠けている。
例えば国士舘戦、得点直後のキックオフの流れから早稲田が一度もボールに触ることなくヘディングシュートを決められた。
桐蔭戦も、ミスをした山下がすぐに切り替えられずにポジショニングが遅れ、空いたスペースにドリブルで切り込んだ相手にミドルシュートを打たれて前半終了間際に同点ゴールを許した。勝ち越しゴールも、パスミスをきっかけに相手の見事なワンツーにも翻弄されてフリーでシュートを打たれる。完全に崩された。でも、シュートは一度クロスバーを叩いてゴールインした。もしかしたら、1番近くにいた俊也がカバーリングに入っていれば掻き出せたかもしれなかった。でも、諦めて完全に足が止まってしまっていた。
駒澤戦も明治戦も早慶戦も全部そう。全部が全部、スーパーゴールだったわけじゃない。全部が全部、完全に崩されたわけでもなかった。謙虚に、必死に、感覚が研ぎ澄まされていれば絶対に防げた失点だった。
早慶戦では、小倉が3失点全てに絡んでしまった。正確無比なプレーの裏で時折見せる脆さが完全に出てしまった。慣れないセンターバックでの出場。難しさはあったと思う。それでも、一瞬の気の緩み、一瞬の判断ミスが招いてしまう悲劇の大きさは身をもって痛感したはずだ。これは前期の駒澤戦も桐蔭戦もそうだった。この”一瞬の判断”をどこまで追求できるか、これは彼がサッカー選手として今後突き抜けられるかどうかに大きくかかってくると思う。今年1年での成長ぶりがすごいと思うからこそ。1年の頃は淡々とプレーしていた印象でしかなかったが、最近は練習中も試合中も自分の感情を表に出せるようになってきた。上級生相手でも、臆せずに要求ができるようになった。強く言えるようになった。心が充実してきているように見える。それを表すようなシーンが早慶戦で見て取れた。早稲田の2点目のシーン、ゴールを決めた1年の駒沢のもとに真っ先に駆けつけたのは3年の柴田だったが、ほぼ同タイミングで駆けつけたのはセンターバックで出場していたはずの小倉だった。一目散に駆けつけたのだろう。後輩に抱きついて喜び、「よくやったぞ」というふうにポンポンと身体を叩く。そんな兄貴分のような振る舞いは、1年の頃の彼の姿からは想像もできなかった。”強くなった”なと。だからこそ、もう一皮剥けて欲しいんだ。
ピッチに立つ人間が、ピッチ内に落ちている自分たちの隙やリスクを感じ取り、埋め合わせる努力ができていれば。埋め合わせるためのコミュニケーションが取れていれば。繋がれていれば。
今年のチームは別にそれができないわけじゃない。勝てていた序盤戦はそれが素直にできていた。
ベンチから指示を出すのは簡単だ。でも、実際にプレーして局面局面で判断するのはピッチに立つ11人でしかない。
別に、最近元気のないDF陣を批判したいわけではない。
とてつもなくレベルが高い関東大学サッカーリーグという大学最高峰のリーグで、屈指のタレント集団を相手に、本当に毎試合必死にボールを跳ね返し続けてくれている。彼らDF陣の頑張りがなければ、我々は今ここにはいない。
とはいえ、だからこそ、最近の彼らの姿勢にはどこか物足りなさを感じてしまう。
当然、いろいろ難しいのは分かっている。それぞれに置かれた状況があり、取り巻く環境があるから。
10回のピンチがあって、いくら9回を防いだとしても最後の1回で自分のミスから失点してしまったら戦犯になってしまう。それがDFやGKの難しさ。
10回チャンスがあって、たとえ9回外したとしても最後の1回をモノにしてチームが勝てばヒーローになれるFWとは大違いだ。
それほど難しいポジションを、役割を彼らは担ってくれている。
そこに前線の選手はリスペクトを持たないといけない。
簡単に失点をしてしまう現状を見て「何やっているんだよ」と思うこともあるとは思うが、自分たちが1点でも多く取れればDF陣はもっと楽になれるし、なんなら守備はFWのプレスから始まることも多いはずだ。
お互いがお互いの役割を理解し、置かれた状況や取り巻く環境に共感の気持ちを持ち、ともに認め合い、補完し合う。
これができるチームは本当に強いと思う。
今年のチームは全てが全て悪いとは思わない。着実に前進している。選手も成長している。心身ともに充実してきたなと実感する人もいる。結果が出なかったり、うまくいかないのも、結局は最上級生の至らなさではある。外池さんは「4年生」というワードを常々口にする。逃げたくなることはある。でも、逃げていても現状は変わらない。ただ、4年だけでなんとかできる問題でもない。全員が当事者だ。
つらつらと長文を綴ってきたが、
僕の主観から、最近のチームの課題を端的に挙げよう。もしかしたら間違っているかもしれない。
これまで何度も言ってきた通り、謙虚さや必死さが欠けていること。
そして、ピッチ内の人間で判断し、自分たちから熱量やモチベーションを生み出せていないこと。総じて、ピッチの中に主体性がないこと。
何を偉そうに、と。
それは事実でしかない。
でも、自分にできることはこんなことしか残っていない。
もどかしさは常にある。
選手でもないし、ピッチに立って戦うことはできない。
ベンチに入って指示ができるわけでもない。
むしろ、いつもは運営という中立な立場だから、試合中に何か耳打ちしたくてもそれができない。言いたいことが言えなくてウズウズすることはよくある。試合中にピッチに向かって叫びたい衝動を、理性を働かせて口に出す前に寸止めしなきゃいけない。危惧していたことが現実になることもしばしば。でも試合中、自分には何もできない。もどかしさをしまい込むことしかできない。
学連をやっていたり、チームの中でも型にはまらないような特殊な仕事をずっとやってきたから、「チームにコミットできていないんじゃないか」とか思われていそうだけど、試合結果にはかなり一喜一憂している。チームが負けたら心の底から悔しい。むしゃくしゃして、お酒を飲まずにはいられない日もある。(後期リーグは負けが込んでいるから、お酒を飲むことも増えた。ちょっと太った。)
それだけ勝ちたいんだ。
降格なんてしている場合じゃない。
怪我人も続々と復帰し、選手層はかなり厚くなってきたし、メンバー争いは熾烈になってきている。調子が良くてもメンバーに入れない選手だっている。それくらい激しい競争がチーム内でできている。この前の明治戦では、西堂安斎光田による豪華すぎるジョーカー起用もあった。正直、スタメンの質では明治や法政、流経などには敵わないかもしれないが、切り札の多さは確実に今季の関東リーグではトップにいると思っている。
だからこそ、簡単に負けるはずがないんだ。負けていいはずがないんだ。
ピッチに立つことが許されないスタッフだからこそこんなことが軽々しく言えてしまうのかもしれないが、恐れずに言わせてもらう。
逃げるな、闘え。
それだけだ。