85歳の現役刺繍家、池宮城さんの手仕事にかける思い ~那覇・浮島通りにある謎多き店~
店頭に雑然と吊り下げられたジャンパーや制服、シャツ類の数々―。 外観だけを見ると少し怪しげに見える。 店内を覗くと、細かい刺繍が入った制服やジャンパーが見えた。ミシンの前に腰掛けていたのは85歳のおじいさん。 那覇・浮島通りにある「池宮城刺繍店」の職人・池宮城秀明さんの人生に迫った。
何の店か分からないから...入ってみた
那覇の国際通りから一歩入った「浮島通り」。私の父親が営む店があり、現在通っている専門学校もある。自分にとっては慣れ親しんだ街だ。そんな見慣れた通り道だが、ずっと気になってる店があった。「池宮城刺繍店」がその一つ。外から見ると服がいっぱい吊るされていて、パッと見ただけでは古着屋なのか、制服店なのかさえ分からなかった。
「浮島通り周辺の店を取材しよう!」
専門学校の授業で、そんな課題が出された。生まれて初めての取材なのだから、本当に気になる店を取材したい。そんな思いで、この店に足を踏み入れた。
刺繍一筋65年! 昔は米兵相手の商売だった
店の奥に進むと、柄シャツとデニムパンツをかっこよく着こなす白髪の男性が出迎えてく れた。それが 85歳の現役刺繍家・池宮城さんだった。
池宮城さんが刺繍を始めたのは 1957 年。刺繍家としての歴史は、計算すると何と 65年になる。浮島通りにある現在の店舗は、2015 年に移転して開いたそう。昔は 那覇市の小禄や波之上で店を出していて「妻と店を切り盛りしていた」という。
「米兵のお客さんが多かったよ」と懐かしそうに当時を振り返った。
ハンドメイドへのこだわりが凄すぎる
現在の店では、息子さんと2 人で刺繍を手掛けている。
「目が年々悪くなっていて、細かい刺繍ができなくなってきたからね。でも、息子より僕の方が凄いんだよ」
そう誇らしげに語る池宮城さんに、「何故ですか?」と尋ねると、「僕はハンドメイドだから」ときっぱり。
刺繍の多くは近年、機械に文字やイラストのデータを送り、機械が素早く縫い上げるのが主流なのだそう。だが、池宮城さんは自動刺繍に頼らず、自分でミシンを操作して刺繍を施すスタイルだ。
時間も手間もかかるが、納得できる商品を作り上げるための、池宮城さんの譲れないこだわりだ。
店には、学生服の裏ボタンやスラックス、ロングシャツ、手作りマスクなど、 大小さまざまな商品が並ぶ。値段も安い物から高価な物まである。
池宮城さんが作り上げたこだわりの商品と空間は、人とは違うこだわりのアイテムを探す人にこそオススメしたいと心から思った。
(編集後記)
取材の最後に、「写真を撮っていいですか?」と聞くと 「僕は写さないでいいよ」と言われたんですが。。。 「ハンサムだからいいじゃないですか」と言ったら、「よく言うよ〜」と言ってカメラに向かってポーズを取ってくれました。カッコ よくて可愛い池宮城さんに、皆さんもぜひ会いに行ってほしいです。(田中来武)
(店舗情報)
◆住所: 沖縄県那覇市松尾2丁目12-2
◆営業時間: 昼ごろから20時ごろまで
◆定休日: 不定休 自営業なので体調や都合によって休みの日があります。
(おことわり)
本記事は、琉美学園 沖縄写真デザイン工芸学校の1年次学生が 2021 年 11 月~12 月、 ライティング講座の課題として取材・執筆しました。取材対象者の年齢や営業時間、電話番号等は取材当時のものです。ご了承ください。
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