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Smart-IP社 創業記 その7 ~資金を調達する(中編)~

無事、本田さんへのピッチを終え、人生で最初の資金調達が決まった。貴重な機会をくださった本田さんには本当に感謝している。

さて、資金調達の目標額は最低でも3000万。できれば5000万としていた。
何に使うというかというと、おもに「開発予算」だ。Smart-IP社では「appia-engine」という特許明細書のドラフティングシステムをSaaSとして提供しようとしている。そのための開発予算として、当時見積っていた金額を目安に、資金調達の目標額を設定した。

開発というのはそれなりのお金がかかる。数百万で済むような開発もあるが、低予算での開発は既に他に多数の類似品が市場に出ているようなプロダクトになることが多く、事業目線で見たときに競争力となりにくい。どうせやるなら、きちんとした資金調達のもとでなければ実現できないプロダクトを目指す必要がある。

僕らが考えるappia-engineの最終形態までには、まだまだ道のりが長いが、現時点では最大でも3億円程度の開発予算があれば完成する見込みだ。
しかし、この金額を最初から資金調達する必要はない。資金調達は複数回に分け、段階を経て行う。
創業当初に行う「シードラウンド」、プロダクトを市場に出した後にその市場での成果をもとに行う「シリーズA」、市場のシェア拡大に合わせて行う「シリーズB」や「シリーズC」などと、その時々の目的や会社のフェーズに合わせて行うのが一般的だ。


シードラウンドで目標額達成

Smart-IP社は創業したばかりの会社なので、いま行うべき資金調達は「シードラウンド」となる。このフェーズではまだプロダクトもできていない、あるいはできていてもプロトタイプレベルのものであることが多い。
そのため、投資家には、会社のビジョンや将来性をプレゼンすることになる。最近はシードラウンドでも出資に応じてくれるVCも増えているが、Smart-IP社のビジョンや将来性に共感し、資金以外にも有形無形の支援をいただけそうなエンジェル投資家に絞って活動することに決めた。

仮に、シードラウンド期に3000万-5000万の調達がかなえば、市場にローンチ可能なプロダクトまで作ることができる。
プロダクトローンチによりある程度の売上を確保できれば、企業価値(バリュエーション)が上がる。企業価値が上がれば、次の資金調達、すなわちシリーズAでの調達が有利になる。

本田さん以降の資金調達は、知財業界内の知人や関係者を中心にお声がけさせていただいた。特許事務所や知財ベンダー、個人で出資を希望いただいた弁護士やアナリスト。投資経験のある方から、初めての投資という方もいらっしゃったので、相手によって説明の仕方を工夫した。
また、少ないながら知財業界外の個人投資家にも声をかけたため、そもそもの知財業界の抱えている課題や成長性についても説明した。

ありがたいことに、門前払いになることは少なかった。出資は見送りになるにしても、話自体は聞いてくださる方が多かった。また、声をかけた方々のうち、半数以上の方は出資を決めてくださった。社会における「知財の重要性と変革の必要性」と、「それに取り組む人材が弁理士である」という点に特に魅力を感じていただいたようだった。

結果として、5000万円が集まった。さらに出資したいという声もいただいた。大変ありがたい。その後の資本政策の関係から追加の出資は一旦見送らせていただいたが、周囲からの期待を肌で感じ、いっそう頑張らねばという気持ちにもなった。

実は当初CFOとは「3000万集まれば上出来」という話をしていた。プロダクトがない状態での資金調達という意味で、他のSaaSを提供するスタートアップの数字を見ていると、3000万をシードラウンドで集めるところはそう多くなかったからだ。
しかし、ふたを開けてみれば目標額の上限の資金調達が実現。改めて、「知財×DX」というテーマへの期待の大きさの表れだと感じた。

α版をつくる

その後、その資金を元にα版の開発に着手。
α版はほとんどおもちゃのようなもので、まだまだ商品として価値のあるようなプロダクトにはならない。しかし、机上の空論でプロダクトの議論をしていてもイメージが湧きにくく、議論もしにくい。そこで、イメージを湧かせ、改善点を洗い出し、今後の開発の精度を高めるためにもα版が欲しかった。

出来上がったα版のおかげで、実際のプロダクトを確認しながら改善点を見つけることができた。それ以上に価値があったのが、今後のSaaS開発体制そのものの問題点ープロダクトコンセプトの言語化、プロダクトマネージメント体制、コードの管理体制、権限の明確化、デザインの大切さなどーを抽出できたことだ。

α版の開発には調達した資金をそれほど多く使ってはいなかったので、資金的な余裕もある。α版で洗い出せた課題感を踏まえつつ、開発体制も刷新し、β版を開発することとなった。

だがここで、想定していない事態が起きた。

(つづく、、かもしれない)

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