仕事がなぜ楽しいか、楽しくないか〜ゲーミフィケーションとしての仕事とクッキークリッカー〜
この記事は 知財系 もっと Advent Calendar 2023 #IP_AC 12/15のエントリーです。何を書こうか考えたのですが、社内で「クッキークリッカーと仕事の相似について書いてほしい」と言われたので、今回はこのテーマで書いてみます。
仕事は「ゲーム」に例えられることがあります。ここでいう「ゲーム」って何なんでしょうか?ゲームというものを構造的に分解し、最後の最後に残るものは何なんだろうと考えたとき、ある種の答えが「クッキークリッカー」だと思っています。
クッキークリッカーとは
「クッキークリッカー」という言葉を初めて聞いた方も多いと思うので、少し紹介します。クッキークリッカーは海外発のブラウザゲームで、2013年頃に爆発的に流行しました。
ゲームとしては非常にシンプルなつくりです。ユーザーは、クッキーを1回クリックすると1ptもらえます。本当にシンプルですね笑。ポイントをたくさんもらうために、ユーザーはクリックを連打します。
ある程度ポイントを貯めたら、ブーストアイテムを買うことができます。ブーストアイテムを買うことで、1回あたりのクリックに対して得られるポイントが1ptから2ptになります。一度貯めたポイントはアイテム購入により消費されますが、その代わり、次は倍のスピードでポイントを貯めていくことができます。
ポイントを貯めていくと、より強力なブーストアイテムを買うことができ、1クリックあたりに得られるポイントが5→10→100とどんどん増えていきます。その都度アイテム購入により貯めたポイントを消費しなければなりませんが、だんだんアイテムによるブーストが効いてきて、クリックの効率性が高まっていきます。ここに高い中毒性があり、流行したというものです。
最初はクリック自体が楽しいのですが、そのうちそれに飽きてきて、飽きたころにブーストアイテムが手に入ることで、またクリックが楽しくなって...の繰り返しです。
クッキークリッカーの構造
大した内容ではないのに、なぜかハマってしまうスマホゲームやソーシャルゲームは、すべてこのクッキークリッカーと同じ構造を持っていると思っています。ここで具体的なタイトルは出しづらいのですが、いわゆるスマホの広告にでてくるようなゲームですね。
王道のゲームには、ドラゴンクエストのようなRPG(ロールプレイングゲーム)というジャンルがあります。RPGは魅力的なキャラクターやストーリーなどにより演出されているのが大きな特徴ですが、ゲームとしての要素を「最小化」した場合はどうなるでしょうか。
つまるところ、「戦う→経験値/ゴールドを得る→ステータスアップ/武器を買う→より強い敵を倒して経験値/ゴールドがより多く手に入る」を繰り返しているといえ、「戦う(クリック)→ゴールド(ポイント)→武器を買う(ブースト)というループは、クッキークリッカーと構造的には同じです。
これがゲームの最小単位だと思うのですが、このクッキークリッカーの構造は「『なぜか』癖になる」んですよね。なぜ癖になるかはよくわかりません。しかし、多くの人が実際に癖になる。
僕は人間の脳みその「バグ」のようなものだと思っていて、ちょうど人間の脳が気持ちよく感じてしまう報酬系にうまく刺さっているんだと思っています。
ソーシャルゲームを提供する会社などはその点をよく理解していて、如何にユーザーに課金させるかを考え、ユーザーの報酬系にいい感じに刺さる構造のゲームを作っています。あとはそれをかわいいキャラクターとか、ストーリー性とかいろいろなもので演出(装飾)して、ゲームとしての差別化をしています。
仕事の楽しさは、ゲームフィケーションに似ているかもしれない
仕事が楽しい、気持ちいいと感じる人と、つまらないと感じる人とそれぞれいると思うのですが、僕が見る限り、仕事を楽しいと感じている人は、仕事をゲーム、特にクッキークリッカーの構造に置き換えている人が多いように感じます。
やりがい、社会的な課題へのチャレンジ、スキルアップ/キャリアアップなどと、仕事において得られるものはいろいろありますが、仕事が「楽しい」(あるいは気持ちいい、癖になる)かどうかという視点だけで言えば、クッキークリッカーの構造にどれくらい落とし込めるかだと思っています。なぜなら、理由はよくわからないけれど、クッキークリッカーは人間が「はまる」ようになっているから。
例えば、「明細書を書く→売上が上がる→年収が上がる」という視点だけで弁理士の仕事を捉えていると、最初はいいのですが、どこかでしんどさを感じる可能性があります。
おそらくこのタイプの方は、初期段階(明細書作成を経験してて10年くらい?)は楽しいと思うのですが、明細書を書くことでなんらかのブーストアイテムを取得できていないので、どこかで明細書を書き続ける(クリックし続ける)ことにしんどさを感じてしまうかもしれません。
一方で、「明細書を書く→スキルが上がる→年収が上がる→難易度の高い明細書を書けるようになるために自己投資する(語学、セミナー参加等)」とか、「役職が上がる→部下の育成・チームをマネジメントする→チームとしてより大きな売上を達成する」という方向に少しずつ仕事の舵を切っていくと、自己投資やマネジメントスキルがある種のブーストアイテムの効果をもたらし、仕事を継続的に楽しい、気持ちいい、癖になるような状態にさせたりします。
「仕事の報酬はより大きな仕事」という言葉がありますが、一つの仕事にとどまることなく、自分にとってのブーストアイテムが仕事のどこにあるのかを模索しながら、さらに大きな仕事をなせる構造として捉えると、新たな仕事の楽しみ方が見えてくるかもしれません。
お読みいただきありがとうございました!
明日は「おかざき@商標・著作権」さんの記事をお楽しみください!