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特許事務所の顧問契約について考える(告知あり)

はじめに

2024/7/30(火)に「創業6年で顧問先が累計50社 知財コンサルのニーズの最前線と、毎年6社顧問先を増やす方法 ~明細書作成支援システムの紹介付き~」というテーマでセミナーを開催することになりました。
セミナー詳細や申し込みフォームは以下です。

◾️セミナー詳細

◾️申し込みフォーム
https://share.hsforms.com/1HQjl87fmTG6r5EBBCF5UrQcydgr

セミナー開催にあたって、普段知財コンサルや顧問契約についてどんなことを考えているか、記事にしてみたいと思う。今回はSmart-IP社CEOというよりは、一部IPTech弁理士法人または湯浅竜個人の観点からの記事になる点、ご容赦いただきたい。


顧問契約のアイディアが生まれたきっかけ

僕は30代前半の頃、IT企業のドワンゴで知財部のマネージャーをしていた。ドワンゴ時代には、知財部門の立ち上げや、業務オペレーション構築、経営部門や開発部門とのコミュニケーションを通じた三位一体の知財戦略の立案・実行、係争案件、訴訟などを幅広く手掛けていた。

ドワンゴを退職した後、いくつかのIT企業の経営層や事業部長、知財担当の知人などから「うちにも知財体制を作りたい」という相談をもらうようになった。いざ外に出てみて「ドワンゴでの経験は貴重なものだったんだ」と事後的に実感した。

IPTech創業当時は顧問という形をとっていなかった気がするが、知財体制の構築全般の相談に乗ってほしいというクライアントが何社かいたため、月額10万円で月1回の定例会議でアジェンダの抽出や優先順位を決定、進捗確認も行いながら進めていくスタイルをとった。
「職務発明規程を作りたい」「事業部から知財部門への問い合わせ体制をどうしたらよいか」などインフラのような話もあれば、「知財戦略を作りたいから事業部の部門長と会議してほしい」「発明数を増やしたいから定期的にブレインストーミングができる体制を作りたい」という話もあった。

そんな中、ある会社から「いっそのこと入社してくれないか」という話をもらった。その発想はなかった。月1回の会議では、知財体制の構築にそれなりの時間がかかる。内部に取り込めば話が加速度的に進むという算段だ。社長からの直接の声がけでもあったので、うれしいオファーではあった。
ただ、現実問題として、IPTechを創業して1年目くらいの時期だった。雇用している従業員もいるし、僕が抜けた場合のマネジメントへの影響も大きい。そのため、オファーは丁重にお断りしつつ、「顧問契約」を結ばせてもらい、週1回の頻度でクライアント先に常駐させてもらうことにした。フルタイムのメンバーほどのコミットメントは出せないが、この体制にするだけで、内部の事情や情報が早く入ってきた。使える作業工数も増え、フルコミットに近い仕事もできた。

クライアント側の提案がきっかけで生まれたものではあるが、この時のニーズを改めてパッケージ化し、IPTechとして「知財顧問」「知財コンサル」という言い方でサービス展開するようになったのが、顧問契約を行うようになったきっかけだ。


コンサルスキルを個人からチームのナレッジへ

ただ、顧問契約サービスの提供当初、この対応ができるメンバーは事務所内に僕だけだった。コンサルティングは属人的な側面が強いという僕の思いこみから、ナレッジとしての横展開、つまり他のメンバーに教える発想に思い至っていなかった。
しかし、ドワンゴ時代からお世話になっている知財業界の方と食事に行った時に、「IPTechの他のメンバーでもできるようにしたほうがいい」とのアドバイスをもらい、直感的に「これはチャレンジしてみたい」と思った。

まずは提供しているサービスを細分化し、コンテンツとして作れるものはすべて作った。例えば、出願のフローや、予算表などはクライアントごとに共通化できるところもあるので、それらを汎用性の高い形にして用意した。
それから、コンサル業務に興味があるメンバーに、OJTでの個別指導を始めた。クライアントとの定例会議の前にIPTech社内で仮想的な会議を実施。そのうえで、僕が本番の会議で実演。本番の会議が終わったら振り返りを行う。ある程度本人が自信をつけたら、段階的に本人に任せていくスタイルだ。

この動きを加速させるため、IPTech内にコンサル支援部を立ち上げた。コンサル支援部では、各種コンテンツの整理やクオリティ向上、勉強会、OJT体制の支援、他のクライアントでやったユースケースの情報共有を行い、継続的に各自のレベルが上がるようなPDCA体制を回している。コンサル支援部専任のメンバーもおり、現在ではこのPDCAが組織としてよく回るようになっている。


知財業界におけるコンサルティングの重要性

知財業界や弁理士界隈で「これからはコンサルティングが重要」と言われることがある。主張自体の言いたいところはわかるが、個人的にはこの言い方は誤解を与えるのではないかと思っている。

というのも、我々弁理士・特許事務所のメインの業務はどこまでいっても「明細書作成」だ。「これからはコンサルティングが重要」という言葉には、「これからは明細書作成では食っていけない。だからコンサルティングスキルが必要だ」という後ろ向きな表現も含まれているように思える(そうじゃない使い方をしている方がいたらごめんなさい)。

弁理士はあくまでも明細書作成のプロだと思うし、そうあるべきだとも思う。弁理士法人はそのようなプロをどう擁するか、チームとして育てることができるかが最も大事だと考える。そのため、「これからはコンサルティングが重要」という言い方には若干の違和感をおぼえる。

では、なぜ僕はコンサルを重視するのか?それは「明細書の質」を高めるために必要だからだ。
明細書の質と一口に言ってもはいろいろあるが、例えば記載要件違反が少ない、権利範囲が広い、文章に論理的一貫性がある、誤字脱字が少ない、外国での権利化に耐えうるなど、いろいろな要素から評価される。
しかし、最も重要なことは、明細書が事業に役立つ書面になっていることだ。そして事業に役立つ書面を書くためには、事業を理解しなければならない。

 外部組織である弁理士や特許事務所はどこまでクライアントの事業を理解できているだろうか。クライアントとは会議をしている、発明提案書やアイデアシートも書いてもらっている。筋のいい弁理士であればクライアントのIR情報を積極的に確認したり、競合企業の情報収集なんかもするかもしれない。
  しかし、多くの弁理士は、まずは目の前に出された「発明」の権利化にフォーカスするのではないだろうか。目の前の発明はいわば「点」のようなもので、事業全体の中でどのような意味があるのか、事業という「線」の上において、この発明がどのような位置づけがあるのかということを、解像度高くとらえられる人は決して多くはないのではないか。

これは弁理士の能力が「低い」と言っているわけではない。外部組織である弁理士や特許事務所では構造的に事業の全体像を解像度高く聞ける、理解できる「立場にいない」(ことが多い)ということを言いたいのだ。
では、クライアントの事業を高い解像度で理解する環境を属人的にではなくビジネスモデルとして実現するにはどうすればいいのか。僕は、その一つの答えが顧問契約だと考えている。

(おこがましいが)顧問契約のすすめ

顧問契約により、クライアントとの定期的な議論の場を設けつつ、クライアントの組織課題そのものや、新規事業立上げの情報を早い時期に共有してもらえることで「発明」という「点」だけではなく、「事業」という「線」でクライアントを捉えることができる。知財戦略を共に立案し、その過程ですべての事業部の部門長とも意見交換をする。経営層とも意見交換し、今後のロードマップの構想を聞く。そのような関係性をクライアントと築けたときの事業に対する解像度は非常に高いものとなる。点としての発明の権利化をどんなに重ねても、この解像度の高さにはなかなか到達しえないだろう。

それを構造的に実現するための方法として、IPTechでは顧問契約を重視するようになった。現在、創業して7期目のIPTechだが、これまでの累計での顧問数は50社を超える。1社あたりの顧問料も決して安くはなく、ミニマムでも月額二桁万円だ。しかし、その分高いコミットメントを発揮することができ、より質のよい権利化を目指すことができている。

セミナーでは、顧客との距離感を近づけるための顧問契約の重要性や、顧問サービスの作り方などについて参考になるような話をできればと思っている。
ご興味を持ってくださった方は、ぜひ申し込みをお願いします!


◾️セミナー詳細
https://smart-ip.jp/seminar/20240730

◾️お申し込みフォーム
https://share.hsforms.com/1HQjl87fmTG6r5EBBCF5UrQcydgr

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