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【おすすめの小説】レーエンデ国物語

■レーエンデ国物語

出版社:講談社 様
筆者:多崎 礼 様


□この小説について

読みやすさ:★★☆☆☆
世界への没入感:★★★★★
意外性:★★★★☆

□どんな人向けか

・ファンタジーの世界に没入したい人
・ファンタジー小説が好きな人
・小説をある程度読みなれている人

□この作品について

この作品は全5部作で2024年10月現在4部まで出版されている。
この作品の良いところは、レーエンデの世界に没入してしまうことである。
読んでいると、森の中の葉っぱの香りやひんやりとした風、川のせせらぎや鳥の歌声が聞こえてくるような、そんな作品である。
また、自分も世界の一員になったような感覚になり、登場人物の喜び、悲しみ、苦しみ、悔しさが伝わってくるような部分も作品の魅力である。
そうさせているのは筆者の洗練させた表現力によるものであろう。
決して、読みやすいとはいけないが、丁寧に読み進めることで情景が全身を駆け巡るような感覚に陥る。
しかし、飛ばし読みをしてしまったからと言って、物語の流れが分からなくなることはない、これも筆者の技術によるものだろうと思う。
この作品の一番の見どころは「革命を実現するために、命を懸けて、時代を超えて、紡がれていく物語」であるといえる。
世の中の理不尽や不条理、差別、貧困、そういうものをなくし、良い世の中を作るために立ち上がるたくさんの人々と時代の話であり、革命の話である。
特に心が熱くなる部分は、主人公たちの成長と命を懸けて想いを次の世代に繋げていこうとする信念と、それでも簡単に踏みつぶされる理不尽とが混ざり合う瞬間である。
正直にいうと、1部作目を読むのは、なかなか根気がいる。
理由は「またその世界の住人になることができていない」からである。
この作品は2部作目、3部作目と読み進めるうちに、この世界の歴史の当事者になることができるが、1部作目は物語の始まりのため、どことなく他人ごとに感じてしまう部分がある。
私も1部作目では、この作品の魅力に気付くことができなかった。
しかし読み進めていくうちに、この世界の人たちに共感し、共に「悔しがる」ことができた。
ぜひ1部作目で諦めずに、根気強く読んでいただきたい

□筆者の多崎礼(たさきれい)様について

代表作:「煌夜祭」「"本の姫"は謳う」「レーエンデ国物語」
活動期間:2006年- 
人物像:
工学部(画像工学)関連の大学を卒業後、広告代理店に入社したが、1年半ほどで退職。
その後、17年間アルバイト生活をしながら小説を投稿し続けた。
もともと小説を書くことに関心があり、中学1年生で初めて小説を書き上げる、その後、高校卒業までで約50冊のノートを書き上げるほど作品を作っている。
筆者は猫を飼っており、「自分と猫が生きていくくらいの収入があればよい」と話しており、自分の好きなことをして生きていきたいと語っている

□作品内容と筆者の人物像を見て感じること

筆者はある種、自己満足でこの作品を描いているように感じる。
それはネガティブな意味ではない。
この作品が売れるとか、売れないとかそんなことは興味がなく、
「自分の想い描いた世界の中で生きる人のすべてを表現したい」
という感情がむき出しになっている。
まるで、その人たちを見てきたかのような表現力は素晴らしく、自分自身や小説と向き合った時間の長さが、それを実現させているのではないかと思った。
この筆者は小説をあまり読んでいない私からすると「玄人」のように感じる。この作品を見たとき、これは職人芸だと思った。
この筆者の表現力は唯一無二であり、しかし、万人受けするものではないのであろう。
しかし、普段から経営やマネジメントをしている私にとって、多崎様の作品は尊敬に値するもので、天才であり秀才であることが良くわかる。
この方が2006年に出した煌夜祭も今度見てみることにする。

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