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連載中無料小説|紬(長編恋愛小説)

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バンド仲間の死を契機に投げやりな生活を送っていた桐山奈月。大学病院の口腔外科で歯科医師として勤務していたが、女癖の悪さから学生に手を出しクビになる。奈月は流れ着いた精神病院の歯科…
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#小説

無料連載小説|紬 0話 プロローグ

人間は、死ぬよりも正気を残して壊れてしまった方が辛いようだ。精神が破壊されたことによる苦…

白瀬隆
1か月前
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無料連載小説|紬 1話 女

大学病院の口腔外科に勤めていた頃、六月の雨除けにはレザージャケットを使っていた。昔ライブ…

白瀬隆
1か月前

無料連載小説|紬 2話 ロングアイランドアイスティー

便利な酒と不便な酒がある。テキーラをショットで飲ませて女を潰すためには、何かしらのゲーム…

白瀬隆
1か月前

無料連載小説|紬 3話 紬

私の高校生活は、一年生の途中までは平凡だけど素晴らしい青春時代だった。入学してしばらくは…

白瀬隆
1か月前
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無料連載小説|紬 5話 高校一年生

入学してすぐの私は女の子らしく、弾き語りに挑戦しようと思っていた。妹の麻穂はピアノを習っ…

白瀬隆
1か月前
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無料連載小説|紬 6話 精神科病院

四葉病院の院長と理事長を前に、俺は応接室のソファで善人を演じている。 「桐山先生みたいな…

白瀬隆
1か月前
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無料連載小説|紬 7話 閉鎖病棟

私は20歳の12月に首を括り、救急病院を退院してからは半年と少しの間は何もない個室に閉じ込められていた。布団しかない四畳半。そこでミトンと呼ばれる手袋をつけられ、手も自由に動かせない状態で転がされていた。どれだけ泣き喚いても無駄だと思い、途方に暮れたところで落ち着いてきた。やっと話ができるようになり、解放された。解放されたといっても出入り口に檻がある病棟の個室だったけど。 出入り口に檻があると聞けば、閉じ込められていると感じると思う。だけど案外そうは感じない。むしろ外の世界

無料連載小説|紬 8話 大麻

仕事が決まったらまず友達に報告しなければならない。祝いをせしめるためだ。しかし私生活が狂…

白瀬隆
1か月前
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無料連載小説|紬 9話 中古車

精神科病院というところは郊外にあることが多い。あまり人目につかない方が患者も通いやすいだ…

白瀬隆
1か月前
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無料連載小説|紬 10話 ベランダ

閉鎖病棟には共用のベランダがある。雨の音を聞くのは好きだったから、一日のほとんどをそこで…

白瀬隆
1か月前
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無料連載小説|紬 11話 歯科診療室

電子カルテの使い方は覚えた。主要な精神科疾患の文献も読んだ。「ご家族のために」と書いてあ…

白瀬隆
1か月前
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無料連載小説|紬 12話 流行

八月になると暑さも本格的になってきて、ベランダにいるメンバーも減っていった。私を含めて3…

白瀬隆
1か月前
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無料連載小説|紬 13話 観光

「奈月先生って呼んでいいって言われたの!」 「いいなー!私そこまでグイグイいけなかったよ…

白瀬隆
1か月前

無料連載小説|紬 14話 ベンチ

翌日、私はいつものように院内の外出を許可してもらい、病棟の外に出て一階の長椅子に座って純露を舌の上で転がしていた。今日は一階の駐車場に面した窓際にある長椅子を選んだ。特に変わった風景ではない、ただの駐車場に車が出入りするのが見える。いつか外に出るのかな。想像もつかない。ここはとても安全な場所な気がするし、ここから出たらまた私は壊れてしまうんじゃないかと思う。 窓の外には病院の職員さんがちらほらと行き来している。制服姿の看護師さんなんかはどこか後ろめたそうな印象だ。そんな駐車