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【翻訳】エコヘルス・アライアンスがDARPAへ提出したDEFUSE計画への助成金申請書についてのDRASTICによる簡潔な分析-1 背景と概要

DRASTICによって公表された、エコヘルス・アライアンスがアメリカ国防高等研究計画局 (DARPA) に提出したDEFUSE計画への助成金申請書についての解説です。今回も何回かに分けて翻訳していきます。原文はこちらです。

背景と概要

エコヘルス・アライアンスが申請したコウモリの研究について記述したこれらのリーク文書は、以下の文脈に照らして考慮するべきである。

2021年8月27日、米国情報機関は、5月下旬にバイデン大統領が命じた合同調査によって導き出された結論の502語の要約を発表した。この簡潔な声明には、議会での証言で提示された証拠が情報機関の分析の一部であったことの証拠は、少なくとも公開された非機密版にはなかったことがはっきり分かる。

2017年末に、P3CO (Potential Pandemic Pathogen Care and Oversight) フレームワークにより機能獲得研究 (gain-of-function) のモラトリアムが解除されたことで、SARS類似コロナウイルスを用いた機能獲得研究研究は、事実上制限がほとんどない状態で再開が許可された。特に、機能獲得研究の明確な定義がないこと、ガイドラインの独創的な解釈、研究プロジェクトを諮問するかどうかの裁量的な決定は全て、米国連邦政府の他の機関が積極的に機能獲得研究の基準を維持しているにもかかわらず、P3COフレームワークの有効性を低下させることに寄与した。

DRASTICは最近、エコヘルス・アライアンス (EHA) が武漢ウイルス研究所と協調して2018年春に国防高等研究計画局 (DARPA) の資金提供募集に提出した助成金申請書において、明らかに機能獲得研究に該当する高度なヒト病原性コウモリコロナウイルスの研究プロジェクトの実施を検討していたことを示す文書を知った。EHAと武漢ウイルス研究所の申請 (「DEFUSE」と名づけられた) は、機能獲得研究ガイドラインを回避したこともあって、最終的に全額助成は却下された (ただし、一部助成の道は残されていた)。

言い換えると、EHAの研究の諸要素およびそれに対応する武漢ウイルス研究所との共同研究計画は機能獲得研究の定義に該当すると連邦政府の一部門がすでに判断していたが、保健福祉省は2018年と2019年にP3CO審査なしで同様の研究を承認することになった。特にP3COフレームワークはワクチン開発のための大きな柔軟性を持たせるように設計されており、2018年6月、国立衛生研究所 (NIH) のワクチン研究センター (VRC) は、汎コロナウイルス (CoV) ワクチンのプラットフォームの全面的な研究を含むようにモデルナとの既存のパートナーシップを拡大した。エコヘルス・アライアンスは、この柔軟性を繰り返し活用し、武漢ウイルス研究所との研究を継続した。

DRASTICは、これらの文書の内容を確認した。これらの文書には、武漢ウイルス研究所 (WIV)、華東師範大学 (ECNU)、ノースカロライナ大学チャペルヒル校、シンガポールのデューク国立大学、アメリカ地質調査所国立野生動物健康センター (NWHC)、パロアルト研究センター (PARC) の研究者との共同研究における過去の成果と計画された実験が詳細に記されている。

この助成金申請書には、すでに科学論文で公表されている内容と共に、これまで公表されていなかった研究も含まれている。これらの研究内容には、組換えSARSコロナウイルススパイクタンパク質をナノ粒子またはオルトポックスウイルスベクターに入れてエアロゾル化したものを用いて野生コウモリにワクチンを接種させることや、SARS-CoV-2の起源に関する我々の理解における既存のギャップを埋める可能性のある、公表済みおよび未公表のコロナウイルス株の研究を進めることなどが含まれている。

これらの助成金申請書には、国家的関心事 (DURCなど) に関してEHAが武漢ウイルス研究所と共に驚くほど深いレベルで関与していることも示されており、例えばDARPAの助成金で武漢ウイルス研究所の主要研究者の給与のかなりの部分を支払うことや、これらのWIV研究者の一部をアーリントンのDARPA本部に招待すべきことが提案されている。その間、適切なリスク評価や倫理的・社会的問題への考慮はなく、何が機能獲得研究を構成するかの評価は不正確であった。

主要な文書

DARPA PREventing EMerging Pathogenic Threats (PREEMPT)プログラム (HR00111880017) について:
● 簡潔な紹介: https://www.darpa.mil/program/preventing-emerging-pathogenic-threats
● プレスリリース: https://www.darpa.mil/news-events/2018-01-04 (アーカイブ版)
● 助成金募集: https://www.grants.gov/web/grants/view-opportunity.html?oppId=300198
● 助成金募集の主なファイルのコピー: https://bit.ly/39yeFNj
● 採択されたチームの説明: https://www.darpa.mil/news-events/2019-02-19
このチームは、(1) オートノマスセラピューティクス社、(2) パスツール研究所、(3) モンタナ州立大学、(4) パーブライト研究所、(5) カリフォルニア大学デービス校が率いている。ほとんどのチームは米国、英国、オーストラリアのパートナーで構成されており、エストニア (タルトゥ) のパートナーが1つとアジアにあるパスツール研究所のネットワークが加わっている。採択されたチームに中国のパートナーは含まれていない。
● 資金提供を受けたPREEMPTプロジェクトの例。
〇 カリフォルニア大学デービス校チームのPREEMPTプロジェクトに937万ドルの援助金
〇 モンタナ州立大学チームのPREEMPTプロジェクト

DARPA PREEMPTへのEHAの「DEFUSE」申請書:
● D1: 75ページの「申請書: 第1巻」 - リンク
● D2: 8ページの予算書 - リンク
● D3: 不採択通知の概要 (DARPA) - リンク
● D4: エグゼクティブサマリーのスライド - リンク
DRASTICのページ

注: ページ番号は、対応するPDF文書のn番目のページとして示されている。したがって,(D1、10ページ)は文書D1のPDFの10番目のページを意味する。

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