【翻訳】エコヘルス・アライアンス理事会に対し、ピーター・ダザック博士の代表解任を求めます
以下は、DRASTICのメンバーを含む世界各地の有志がエコヘルス・アライアンスに宛てた手紙の日本語訳です。Covid-19の調査およびそれ以前のDEFUSE計画におけるピーター・ダザック博士の責任を問う内容になっています。原文はこちらです。なお、Ccに含められているアメリカ国立衛生研究所 (NIH) の所長フランシス・コリンズ博士は、この文書が発表された直後の10月5日に、2021年末に辞任することを表明しました。
To:
エコヘルス・アライアンス理事会議長 ナンシー・グリーン氏
エコヘルス・アライアンス理事会副議長 カルロタ・ボルハルト氏
エコヘルス・アライアンス理事会代表 ピーター・ダザック博士
Cc:
アメリカ合衆国保健福祉省長官 ハビエル・ベセラ氏
アメリカ国立衛生研究所所長 フランシス・S・コリンズ博士
アメリカ国立アレルギー・感染症研究所 アンソニー・S・ファウチ博士
2021年9月30日
主題: エコヘルス・アライアンス理事会に対し、ピーター・ダザック博士の代表解任を求めます
親愛なるグリーン議長
COVID-19パンデミックの発生と、その後のパンデミック調査において、あなたが議長を務める「エコヘルス・アライアンス」(EHA) が果たした役割は、ますます物議をかもすと共に、今や大きな注目を集めています。
つい先日、コロンビア大学持続可能開発センター長で、Covid-19ランセット委員会委員長のジェフリー・サックス博士が、「起源に関するランセット・タスクフォース」を解散させた際の言葉がウォール・ストリート・ジャーナル紙に引用されました。
「私はただ、この起源の探求全体の主要な問題の1つに明らかに関わっていたタスクフォースを望まなかったのです。それは、エコヘルス・アライアンスでした。」
残念ながら、このような好ましくないメディアや科学界の注目の背後にある要因は、EHA代表のピーター・ダザック博士の行動と振る舞いから生じています。それがエコヘルス・アライアンス代表としての公的な立場であっても、科学的権威としての立場であっても、COVID-19の起源を調査するWHO-中国ミッションの主要メンバーとしての立場であってもです。ダザック博士は現在、いくつかの極端な利益相反状態を隠し、重要な情報を公表せず、虚偽の表現によって世論を誤導したことが証明されています。にもかかわらず、EHA理事会がダザック博士の振る舞いを不支持とする様子は全く見られず、ニューヨーク州法の下で要求されていると思われる理事会による調査もないようです。
EHAの使命は、「人間や野生動物の健康と、慎重に扱うべき生態系との間の重要な関係についての最先端の科学的研究をリードすること。この科学によって、我々はパンデミックを防ぎ、自然保護を促進するためのソリューションを開発する」と述べています。このような重要な使命を果たすためには、倫理的で健全なリーダーシップに加えて、公共的・制度的信頼が不可欠であることを指摘いたします。
ダザック博士の容認できない行動と、EHAが支援している貴重な活動への深刻な結果のために、私たちはEHA理事会から認識可能な公的批判や意義のある回答がないことに深い懸念を抱いています。
ピーター・ダザックの倫理的・科学的規範に関する数多くの気ままな行動のうち、ジャーナリストや科学者が記録した例をいくつか挙げます。
● ダザック博士は、SARS-CoV-2ウイルスの発生と伝播に研究室での事故が何らかの役割を果たしたという「証拠はゼロだ」と繰り返し主張しました。さらに、非常にあやふやな一般論を超えた利用可能なデータの欠如を指摘した人々を、「陰謀論者」などの軽蔑的・中傷的な表現を用いて酷評し、悪者扱いしています。ご存知のように、研究関連の事故は、無視することが無責任になるようなもっともらしいシナリオと公式に見なされており、WHO自身も起源についての最新のイニシアチブにしっかりと含めています。
● ダザック博士は、武漢ウイルス研究所において彼の共同研究者は生きたコウモリを保持していなかったと誤って主張しました。実際には、武漢ウイルス研究所は2009年以降、時折野生のコウモリを捕獲・保有しており、コウモリのケージやコウモリのコロニーの維持管理に関する特許を申請し、2017年には12個ものコウモリのケージを公式に登録したことも記録されています。DEFUSE助成金申請書には、捕獲された20匹のキクガシラコウモリを武漢ウイルス研究所において保持する計画が言及されていることから、ダザック博士は少なくとも2018年初頭にはこれらの動きをすでに把握していたに違いありません。
● ダザック博士は、武漢ウイルス研究所のウイルスサンプルと配列のデータベース (現在はすべてオフライン) について、多くの矛盾した主張を行い、その後、この問題を調べないようにWHOチームを説得しようとしました。彼はこれらのデータベースを「エクセルのスプレッドシート」と表現しましたが、実際にはこれらは600GBのデータを持つ16個のデータベースです。彼は、これらのDBに何が入っているか知っている (WHOチームとの会話) とか、中国の協力なしにはこれらのDBから重要なデータにアクセスすることはできない (EHA NIH助成金の復活を求めたとき) といった、さまざまなことを明言しました。さらに彼は、2019年9月以降それらが利用できないことを、パンデミック中にハッキング攻撃を受けたためハッカーから守るためにオフラインにしたという根拠のない主張を繰り返すことで正当化しました。
● 最近浮上したDEFUSEへの助成金の申請は特に驚愕すべきものです。それは、SARS-CoV2よりもはるかに致死率の高いMERS-CoVの実験を含め、人間に感染するために最適化された、未知で計り知れない大惨事を解き放つ可能性のある新しいキメラウイルスの作成を提案しているのです。この提案書は、機能獲得研究について不正確に述べるにとどまらず、バイオセーフティ、懸念される軍民両用研究、ELSI (倫理的、法的、社会的問題) に関しても、どう見ても信じられないほどずさんな内容となっています。DARPAは助成金を拒否する理由をすべて挙げています。
● DEFUSEへの助成金の申請に基づいた、ヒトに最適化された機能獲得ウイルス構築体を年に3~6個作る計画は、それ自体十分に衝撃的です。バイオセーフティやDURC、ELSIをこれほど蔑ろにしてこのようなことをするのは、最高レベルのプロフェッショナルとしての失態であり、ダザック博士が一歩踏み込みすぎて、共同研究者や人命を危険にさらしていると結論づけるには十分でしょう。
● 最後に、ダザック博士は、WHOやランセット委員会でSARS-CoV2ウイルスの起源に関する重要かつ非常に発言力のある立場に就いていながら、肝心のDEFUSEへの助成金の申請の存在には一切触れていないという事実が示す、科学的・倫理的規範に対する不遜な態度は、前例がないほど甚大です。ランセット委員会とWHOの両者は、現在はダザック博士と距離を置いています。
ダザック博士の振る舞いは、すでに科学と科学者に対する公共の信頼に多大な損害を与えており、今後何年にもわたって、米国および世界における科学的誠実さの最低点として響き渡ることになるでしょう。
このような混乱にもかかわらず、エコヘルス・アライアンスは貴重な科学的使命と、私たちの現在および将来の世代のための重要なメッセージを提示しています。しかし私たちは、ダザック博士がこれ以上エコヘルス・アライアンスに関与すると、この使命が大きく損なわれるという不可避の結論に達しました。
そこで私たちは、エコヘルス・アライアンス理事会がその役割を全うし、ピーター・ダザック博士の代表からの解任に向けて、直ちに措置を講じることを求めます。
敬具
● ボルドー・モンテーニュ大学博士課程 (フランス) ファビアン・コロンボ
● ジャック・モノー研究所上級研究員 (フランス) ヴィルジニー・クーティエ
● データサイエンティスト、オープンソースインテリジェンス (ニュージーランド) ジル・ドゥマヌフ (DRASTICのメンバー)
● ルーヴァン・カトリック大学名誉教授 (ベルギー) アンドレ・M・ゴフィネ (DRASTICのメンバー)
● 筑波大学准教授 (日本) 掛谷英紀
● メリーランド大学公共政策学部 (アメリカ) ミルトン・ライテンベルグ
● アトランティックカウンシル上級研究員 (アメリカ) ジェイミー・メッツル
● アガルカー研究所理学博士、科学者 (インド、プネー) モナリ・C・ラハルカー (DRASTICのメンバー)
● 理学修士、経営学修士、歴史家、アナリスト (アメリカ) チャールズ・リクシー (DRASTICのメンバー)
● ハンブルグ大学教授 (ドイツ) ローランド・ウィーゼンダンガー