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#32 見方が変わった件/泖

【往復書簡 #32 のやりとり】
月曜日:及川恵子〈「言葉を読む」ということ〉
水曜日:泖〈シンプルって最強だ〉
金曜日:くろさわかな

シンプルって最強だ

『笑う犬の冒険』が、自分の中で絶賛大フィーバー中です。

みなさん、覚えていますか?
この番組を観ていた頃、わたしは小学生だったと思います。当時はただゲラゲラ笑っていたのですが、大人になって見直してみると、ハッとしてメモしたくなることばかりなんです。

最近はいろいろ思うことがあったり、ひとつのことを考えすぎたりして、「この世の中で生きていくの、しんどい……」と感じてしまうことがしばしばありまして。

そんなとき、会社で『笑う犬の冒険』のコントが話題にあがりました。
「懐かしい〜!」と言いながら先輩たちと一緒に動画をあさって、あの頃と同じようにゲラゲラ笑っていたのですが、一方で「なにこれ、ちょっと哲学的じゃん……」なんて俯瞰して見ていたのです。

たとえば、この『生きる TERRY & DOLLY』シリーズ。

兄のドリーは「毎日同じことの繰り返しで生きている気がしない」と嘆くのですが、弟のテリーは兄に「生きてる」を実感させようとします。

「生きてるってなんだろう」に対する答えはたくさんあるし、人によって全然違うと思います。テリーの場合は、とにかくフィジカルに訴えかけるんです。まさに、「Don't think! Feel!」状態。

ドリーは「なにすんだよ、痛いよ!」と怒りはするのですが、テリーに「生きてるじゃん!」と言われると、やっと生きていることを実感し「そうだった〜!」とうれしそうに舞い踊ります。

テリーの励まし方は荒療治なところもありますが(笑)、落ち込んでいた人を勇気づけるだけじゃなくて、まずは身体に”生きてる”ことを実感させるという技術がある気がしたんです。

心を励ましても、身体を動かしたりとか、何かを身体に感じさせないと「痛み」に鈍くなってしまう。でも、やっぱり心のケアも大事ですよね。わたし、痛いの嫌いだし。

そこで、葉っぱ隊の『YATTA!』も観てほしい。

「葉っぱ一枚あればいい 生きているからラッキーだ」
「いじわるされても ふとん入れば グーグーグーグー」
「9時間睡眠 ヤッタ!ヤッタ!ヤッタ!ヤッタ!」
「どんないいことあるだろう 生きていたからLUCKYだ!」
「丸腰だから最強だ」

こちらは”生きてる”を、めちゃくちゃメンタルに訴えかけています。
ポジティブな言葉で”生きてる”を包み込み、「そうか、あんなことも、こんなことも、全部ひっくるめて生きてるってラッキーだ!」と思わせてくれます。

特に「丸腰だから最強だ」って、いい言葉ですよね。社会でいろいろ身につけると自分を良く見せようと飾りたくなるけど、等身大でいること、もしくはちょっと相手に油断させるくらいの隙が最強なんじゃないかって思います。

先日、映画『すばらしき世界』を鑑賞しまして、いたく感動したのですが、現代での”生きづらさ”に共感しつつも「ろくでもねぇ世界でも、いまここで生きていることは素晴らしい」と思ったんです。

生きていくうえで「正義」感を持つことはとても大切ですが、正義は時に悪になる場合があります。 この世の中は決して勧善懲悪では分けられない面がある。だからこそ、生きるだけで疑心暗鬼になったり、自分が生を受けたことを疎ましく思ったりする。

でも、『笑う犬の冒険』を大人になって見返したおかげで、生きるってもっとシンプルなことだよな、という基本的なことに気づけました。もちろん理性は重要だけど、もっと、もっと、本能とか、直感はもっと大切にしようと決意したのでした。

今回はここらへんで。バイQ。


追伸。
クラブハウスの流行にさえついていけてないのに、つい先日、クラブハウスを「クラハ」と略している人に出会いました。みんな仕事が早いな、と思いました。



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