#10 One Last Kiss
私が物語の主人公だとしたら
この人生という物語はどう終わるのだろう。
先が見えない。
窓際に飾った花の開いたはずの蕾は閉じるともなく宛を探していているように見えた。
「ユキ、ユキ、聞いてる?」
「あ、ごめん、ぼっーとしてた。どうしたの?」
「いや最近雨続きで頭痛くないかなって。」
「私は毎日なんとなくで風邪薬飲んでるから平気だよ?ライムきつい?」
「風邪引いてないのに飲んでいいものなの?」
「風邪引かないと飲めない。とは書いてないよ?
15歳以上ならまあ毎日飲んでも問題ないように
作られてるんじゃないかな。」
「僕も真似してみようかな?」
「毎日飲むのは自分でもどうかと思うけど、でも
風邪なんて病気は存在しないし、風邪薬って
販売されてるけど感冒薬だし、栄養剤みたいなものと私は捉えてるよ。」
「なるほどね。」
そう言って彼はクスッと笑った。
笑うところあったろうか。
「あんまり無理しないでね。」
「無理?してないよ?」
「ほら、いつも私、深夜に電話かけたりしてるから。いつもすぐに
飛んできてくれるでしょ?」
「まあね。でもそれが無理になってるんだとしたら、それでもいい。」
「よくない。ある意味、加害者の私が言えたことじゃないんだけど。」
「いいんだ。ユキの笑顔がみられるなら。きっと僕はどんな無理でも無茶でもする。そうしたいんだ。理由なんてそれ以上要らないよ。」
「ライムがそう言うなら、なんて言えないよ。でも笑顔が見れるだけで
なんて言ってもらえるなんて幸せものだなあ。私ってば。」
「幸せものか。僕だって、そうだよ。寂しくてか、なんとなくか、本当に葉巻切らしてかは分からないけれど、夜中に電話掛かってくること嬉しいよ。
幸せだよ。」
考えてもみなかった。私だけが幸せじゃなかったんだ。
他愛もないことを話していた。
気が付くと話しながら彼は寝てしまっていた。
もう時計は丑三つ時をさしていた。
彼のコルツから一本引き抜いて吸ってみた。
彼とのキスはグレープの味が薫りがいつもしている。
起こさないように
彼にそっと口づけてみた。
これが最後のキスになるなんて、思わなかった。
思ってもみなかった。
きっと死んでも忘れることはないだろう。
忘れることはないだろう。