言わなくちゃ伝わらない時の方がきっと多くて#07
彼の携帯を鳴らす。
いつもの嘘をつく。
またかよーって彼は笑って受け入れてくれる。
誰にも等しい約束された明日はない。
私達にはそれは余計になかった。
発作や発病、もし来れば、近くに
互いが認められないとなると、
事故みたいな形での終わりが来ることが
予想される。
ライムの場合は自殺率なんておかしな言葉を
使ってみると常人の20倍くらいだろう。
私の場合は20-40倍とかになるのかもしれない。
医学も科学もいつだって仮説からの
実証の反芻がひとつの真理。
服薬はまず防護策のひとつだ。
今はライムがいる。いてくれる。
死にたくて死にたくてどうしようもなかった
私はもうとっくに手を振って存在しない。
今は生の連続をどれだけ紡げるか。
決まって深夜2:00過ぎるとこのコールをする。
コルツが切れちゃったー。という嘘。
ライムはまるで私が死んでしまうんじゃないか?みたいな勢いでベルを鳴らす。
お手洗いなんかで遅れると合鍵を使用する。
3回鳴らして12秒待ってもドアが開きそうな気配がない時はそうする、という二人の
取り決め。万が一の事も想定しての約束。
大袈裟かもしれないが、私達にはとても大切な約束。約束という約束をまずしないふたりであるからこそ、この約束はとても強い拘束力をもっている。
私はライムに恋をしている。
ライムはまだ気づいてない。
気がついた時には発作なのかなんなのか
この心拍が上がる理由がわからず
とっさに水族館のエレベーターに飛び乗った
あの日。
名前なんてつけるからややこしくなるんだ。
でもこれは病気と変わらない気もした。
ライムに会えば、心躍る。
ライムと離れれば、想い募る。
ライムの帰る場所がいつだってどんなときだって、私と同じであって欲しい。
ワガママだとわかっている。
でも私は私らしくありたい。
だからいつだってワガママでありたい。
自分に純粋に忠実に。これが正しいとか正しくないとか考えない。いまどうしたいか?どうできるか?の中でどうしてもやりたいなら全力に尽力する。いつ死んでもおかしくないとわかった時から悩まなくなった。
おかしいっていうやつは言ってればいい。
言ってればいいし言わせとけばいい。
誰から見ても誰もがおかしい。
むしろ私から見た世界は間違いだらけで
正しさの象徴、照明、ライムがそれを握っていた。生まれてから初めての出来事の連続は
私も誰も変わらない中でライムは中途半端な返事を一度だってしない。
ライムに確認して、意見が食い違った物事については、一晩、二晩と考える。
世界の照準はどうだってよくて
次の選択で私が歩く明日は生きやすいか、生きにくいか。ライムはどう考えた結果、その答えを弾き出したか。私を知るために私が考えること思い悩むもの、自然とライムに話してるうちにライムを想うことから起因してるものが
多くあることにも気づいた。
薬とブドウ糖さえあれば、という考え方も
ライムもそうだったから食い違ってないけどその考えを再咀嚼してみた。
答えは色々なものを食べてみよう、になった。
おそらく、この身体の設計的に食べないことから、得られるもの、失うもの。
今すぐの時間が消えない分、若いなんて分類されるうちは食に対することでの時間やお金の消費量は圧倒的に食べない選択の方が現在を多く享受できる。相対的にみて、未来の時間や食べれるうちに食べておけばよかった。
という食に対して今更な考えが今更な頃に生まれた場合。
そして何より感動をシェアできる相手が傍にいるのに、1人でいる時と変わらない食生活を
送ること。これの虚空さ。
食べ物について諳んじられた唄は少なくとも
恋について諳んじられた唄の多さ。
圧倒的に多い。ということは2人が近くに
いるうちにしか、出来ないことの多さが
たくさんあるんだよ、と故人を含めた多くが示している。
私が知らないことについて既に酸いも甘いも経験してきた人間たちが頼まれもしてないのに
している行為。これについては目を背けることはできなかった。本当の意味での恋なんて知るよしもなかった。恋について愛についてなんて生きてく上でなんて無駄なことに時間を費やす人の多さに辟易してたいつかの私が、今の私を少し困らせている。
価値観の一種、恋愛観のようなものについてもっと考えを巡らせるべきだった。
でも恋を知らないものが恋について考えるなんて不思議な話もないだろう。
死にたくて仕方なかったいつかの私。今は
生きること生きていくということ。
彼が生きているということが私がまだもう少し未来を見てみたい、という理由になっている。
彼が死んだら?それについて考えようとすると真っ暗闇の中を歩いてるような景色にのまれていく。決まって考え込む日時は深夜2時頃。
ライムが飛んでくる。その度に言わなくちゃって思っているのに。
ライムはどう思ってるんだろう?
言わずして伝わればいいのに。