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暗黙知を腑分けするための補助線

これは昨日からの続きの文章だ。昨日は、野中の暗黙知が前提としているふたつの仮想敵をとりあげた。ひとつは、ピーター・センゲの「学習する組織」のコンセプトであり、もうひとつは「資源ベースアプローチ」だ。

先行研究の課題

学習する組織については、学習の概念が刺激−反応という行動主義的コンセプトにとどまっていて知識の創造という観点が欠如している点や、学習する個人の集まりとしての組織が想定されているだけで、組織を通じた学習ということが考察されていないとした。また、組織ベースアプローチに対しても、知識の生成に言及されていないこと、組織の担い手としてミドルマネジャーの重要性を見逃していてトップとボトムの応答だけで説明している点などを不満としていた。いずれも、組織における知識創造という文脈にそのまま繋がる問題意識だ。

『知識創造企業』のなかではこの他にも、さまざまな理論に対する対比が記載されている。取り上げようと思えば、もっと多くの理論を紹介することもできた。しかしあえてこのふたつの理論を取り上げたのは、いずれも野中の暗黙知やSECIモデルの議論においては、親和性の高い理論だと受け取られているからだ。しかし厳密に見ていくと、そこには違いがあり、野中の研究動機の背景にこのふたつの理論に対する不満があることが見えてくる。だからこそ、野中の暗黙知を議論する際には、このふたつの理論との違いを受け止めておく必要があるのだ。

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先行研究からの3つの発展

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