第14節 柏レイソル戦 レビュー
2連敗と嫌な流れの中迎えた”鬼門”での一戦。
32分に伊東に先制点を奪われるも58分に小林の強烈ミドルで追いつき90分+2分にこの日J1リーグ初出場だった鈴木が逆転弾を決め、見事連敗を止めることに成功した。
試合の内容を見れば納得する選手は少ないはずだ。だが、今の川崎フロンターレに必要なのは”勝利”。この勝利が生むチームの自信はかなり大きいはずだ。
『暑い中で前半から飛ばして行ったのでどっちがバテるかというゲームだったと思いますけど本当に気持ちのこもったいいゲームをやってくれたと思います。』(鬼木監督)マインドの強さ。それも1つの勝因だ。
では、今回は2つポイントを絞って解読していく。
①『守田がうまく潰してくれたので、あとはおもいきり打つだけだった。』(小林悠)。先制点のきっかけになった守田の潰し。繊細さに大胆さがある彼のプレーの重要性。
②『とにかく走らせることを意識した。』(中村憲剛)。約350本のパス本数の差からわかる”あるべき”形。
①『守田がうまく潰してくれたので、あとはおもいきり打つだけだった。』(小林悠)。先制点のきっかけになった守田の潰し。繊細さに大胆さがある彼のプレーの重要性。
この試合のスターティングメンバーには大卒1年目の守田が名を連ねた。与えられたポジションはボランチ。相方は大島ということもあり、特に組み立ての部分で意思疎通などの問題は生じない。このペアで数試合戦ってきているのを見ているがかなり相性が良いという印象だ。
近年のフロンターレは潰しの能力に長けた選手がハマりにくいという現状があった。例を挙げれば2014年に所属していたパウリーニョ(現:松本山雅FC)だろう。彼は潰す能力に長け、さらに左右両足から放たれる強烈なミドルシュートという武器も持っていた。だが、「繋ぐ」という観点ではあまり良いイメージがなかった。
しかし、この守田は潰しの能力は前提として足元の技術も非常に高いモノを持っている。大学時代に「守備が巧い」という話は聞いていたため、ゼロックスを観戦した時にはその守備力に注目していたが、いざボールを保持すればドリブルで相手を抜き去ったり、要所での縦パスなどセンスを全面に出すプレーをしていた。
前半はあまり潰す場面を見ることはできなかったが、背負った相手などの対応はしっかりとできていた。『後半のところで言いますと、守田のところをアンカー気味と言いますか、アンカーではないんですけどもCBの前でしっかりカウンターのケアをして、リョウタ(大島僚太)を攻撃に重点に置くような形の指示は出しました。』(鬼木監督)。アンカーではないが、アンカー気味に守田を固定するような形を取ることで前線を攻めに集中させれる。浦和戦・FC東京戦とカウンターで苦しむシーンは多々あったため、今回はそのような包囲網を敷いた。
柏は両ウィングにクリスティアーノ、伊東を配置してきていたのでフロンターレとしてはサイドでの一発を警戒していたはずだ。先制点も伊東にサイドをやられている。
カウンター時にこちら側が3枚ならば確実にどちらかのセンターバックは引っ張られるのでこのボランチの配置は最適だろう。仮にボールが入ってきても守田が奪い取ることができればそこから逆にカウンターを仕返すこともできる。
1点目の小林のミドルに関してはアンカーの位置ではないが、あのような奪い方ができれば確実にその場所にスペースは出来ている。小林のミドルシュートの目が行きがちになるかもしれない。だが、あのゴールが生まれるためには守田の「大胆で繊細な」プレーが必要不可欠だ。
大卒ルーキーで失うものは何もない守田がこれからもチームを引っ張っていってくれる。
②『とにかく走らせることを意識した。』(中村憲剛)。約350本のパス本数の差からわかる”あるべき”形。
前半は相手の体力が全く削れずれないまま先制を許してしまった。そうなれば相手は『カウンターの一本になる。』(中村憲剛)
奪われた得点はカウンターではないが、フロンターレはカウンターを嫌がる。だからこそ、相手が引き出すとこちら側が前に重心をかけに行かなければならなくなるので後ろが手薄になる。「負の連鎖」というところだろう。
しかし、中村の『とにかく走らせることを意識した。』という言葉通り、小さなグループのパス交換がこの試合では何度も繰り出すことができた。
柏サイドに行けば相手は構えてくる。その中で相手をいかに揺さぶっていくか。ここ数試合では”この部分”がうまく行かず、フロンターレのリズムが作れていなかった。ただ、奈良は『精度の部分だけだなと。』と相手の間にパスを付けることに強い自信を持っていた。一方で車屋は『前半に失点して、そこから立ち直れずに終わってしまうという試合が続いていたが、今日はみんながじれずに、ボールを握った中で、ゴールが生まれた。』。ボールを握れば必ず勝てる。という美味しい話はない。だが、とことん”それ”にこだわるチームだからこそ結果は付いてくる。
蓋を開けてみれば支配率は59%、パス本数は791本(成功率は87%)。少し繋ぎすぎた部分はあったが、一番良い数値だったのではないだろうか。
『真ん中が分厚かったので、サイドからというところ。』(中村憲剛)。フロンターレ対策ということで真ん中を固めてサイドに流れたところを狙う作戦があったが、今回はそれに屈せづあえてサイドで起点を作っていた。逆転弾も含め数回のチャンスはサイドから生まれていた。
中央をメインに崩すのが一番スタンダードな形ではあるが、今年は昨季の初優勝もありかなり警戒されてしまっている。「どう崩すか」。一番の課題であり難題である。しかし、その課題を1つずつ解決して行けばもっと良いゲームができるはずだ。
( RYUJI.)
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