第20節 横浜Fマリノス戦 レビュー
浦和に敵地で負け、ホームに帰って来たチームだったが、この日の戦いぶりはその試合を全く思わせないようなゲームだった。
特にエース小林は『自分で背負い込み過ぎたところがあったと思う。』と前節の反省をしつつ、『自分だけじゃなくてチームメイトがいて、サポーターがいるので、気負わず楽しくやろうと思っていた。』とこの試合での挽回を振り返った。
さて、今回のラインナップは以下の通り。
①”ハイライン”の相手に対して果敢に”下の”背後で攻めたフロンターレ。 そして、『サイドハーフの選手が中に入るほうが嫌なんだなと気づいた。』と中村憲剛が語る相手の”嫌がるところ”。
②『そこを我慢できたことでまた自分たちのペースに持ち込むことができた。』(谷口彰悟) 我慢するときを乗り越えた守備陣。その中には、”センターバック”車屋の存在有り。
では。
①”ハイライン”の相手に対して果敢に”下の”背後で攻めたフロンターレ。 そして、『サイドハーフの選手が中に入るほうが嫌なんだなと気づいた。』と中村憲剛が語る相手の”嫌がるところ”。
今季のマリノスは例年と比較すればタイプが異なるサッカーをしている。そこでフロンターレがこの試合で狙いたかったのは相手の”背後”である。話は前節の浦和戦のレビューと重なるが、その”背後”は”上”か”下”である。
マリノスはハイラインであるために、”上”の”背後”が空きやすくなってくる。ただ、フロンターレは”下”の”背後”を積極的に狙っていた。
その理由はなぜなのか。それはマリノスのフォーメーションに答えが隠れていた。
『相手は4-3-3なので、アンカーの横をつくのが定石だが、そこを突かれても問題ないという感じで守っていた。』(中村憲剛)
このアンカーは喜田でここの脇を攻略のポイントとして語る選手が多かった。なので、狙いは定めることができたが、中村の言葉を借りると、相手はそこを突かれることは想定内であった。
そこで中村の考えた『中盤に落ちてみよう』という判断がチャンスを作り出すことになる。
本来であれば、中村の動きに付いてくるはずだが、『自分に付いてこなかった』ことで、中村・守田・大島が逆トライアングルを形成する形ができた。
得点シーンを見てみれば、大島がサイドに流れ、家長が寄っていくのでどうしても相手に重心は左に寄る。そういった状況で、守田がダイレクトで”下”の”背後”に通した。
結果的には、ただ単純にボランチの脇を突かれることよりは『サイドハーフの選手が中に入るほうが嫌』であった。
今回、守田が出したあのようなスルーパスが一本取れれば、マリノスのような相手を攻略できる。
2点目に関しても、『守田が走って引っ張っていた』(中村憲剛)からこそ、あのようなスペースが空いて、小林がフリーで受けることができた。
スペースを作る動きが非常に鍵になった試合であった。
前半途中からこの日ワントップまたはゼロトップの位置に入っていた阿部をサイドに流し、小林をワントップに戻したが、これもサイドハーフを阿部と家長にすることで中央に入って来やすくする作戦であった。
それに加え、球際の強度を強めて来たマリノスに中々奪われなかったことも勝因の一つである。先制点を奪い、ペースを握ることができれば早くするのも遅くするのもこちら次第。
『急がずにボールを保持しながらやっていれば、相手に隙ができるというのはわかっていた。後半の円陣のときに、ゆっくりと攻めようと言っていた。』(車屋紳太郎)
夏場特有ではあるが、ペースを握ることはこのサッカーを展開する上での”命綱”である。
②『そこを我慢できたことでまた自分たちのペースに持ち込むことができた。』(谷口彰悟)
我慢するときを乗り越えた守備陣。その中には、”センターバック”車屋の存在有り。
スターティングメンバーを見たときにすぐわかるのは【スピードへの対応】というところだろう。車屋がいつも陣取る左サイドバックには登里が配置され、左センターバックに車屋が配置された。
普段通りで行くならば、谷口と奈良のコンビになるが鬼木監督はそうはしてこなかった。
マリノスは裏を取り、主にスピードに乗った崩しを仕掛けて来ていたので、登里がかなり対応に力を注いでいた。そこで、抜かれたとしても『リョウタ(大島僚太)もシンタロウ(車屋紳太郎)も広い範囲でカバー』(登里享平)できるのでここの部分が致命傷になることはなかった。
では、なぜ対人に強い奈良ではなく車屋がチョイスされたのか。
まずは、サイドバックの裏への対応スピードである。奈良も決して走力がないわけでないが、ここの部分においては車屋が勝る。
そして、もう1つ車屋には突出した能力がある。それが、【組み立て】である。
普段は谷口が最終ラインの【組み立て】を担っているが、この試合は谷口に加え車屋が積極的に関わっていた。そこからは、縦パスやサイドに流れるパスなどを入れたり、少しボールを落ち着かせるなど時間の問題を一切感じさせなかった。
『センターバックになれば、守備により重点を置きやすい』(車屋紳太郎)ので普段のサイドバックよりも体力や集中力を多く使うことができた。
速さが武器の相手に対しての”センターバック”車屋という判断はかなり有効になる。
そして、チーム全体として賞賛すべきは我慢するべきところで我慢できたところだろう。暑さもあり、ゲーム内容が硬ければ選手もしびれを切らす。その中で、いかに焦れずにやるかというところだが、それも車屋がチームメイトにかけた『ゆっくりと攻めよう』という言葉がとてもに生きてくる。
攻撃の舵取りではないが、この試合のペースメーカーはディフェンス陣全員であった。
家長は『どっちが勝ってもおかしくないような時間帯もあった。』としながらも『守備で集中して組織的にできていた。』と守備での我慢強さとその集中力の高さを振り返っている。
「連戦は総力戦」と言えるほど、このJリーグはかなり日程面で厳しいものがある。ただ、選手はたくさんいる。そして、その組み合わせはいくつもある。
その中で、鬼木監督がどのような選択をしていくのだろうか。
夏の鍵は”そこ”である。
(RYUJI.I)