第34節 ジュビロ磐田戦 レビュー
“完全優勝”。
チームが着実にやるべきことに取り組んだことをこの結果が物語っている。
『選手達には記録を目指そうという中で、最後までやり続けてくれたと思っています。』とは鬼木監督。2試合残していた中できちんと2連勝して今シーズンを締めくくった。
来シーズンもこの”名”采配には期待したいところだ。
さて、そんな最終節のラインナップはこちら。
①『自信であったり強気さが欠けた前半』(中村憲剛)を見事修正した後半。そして”2度”訪れた決定機。
②『ヨシトさん(大久保嘉人)に決められた時は、持っているなと思った。』(谷口彰悟)崩された一発。大久保にやらせてしまった”あの”形を分析する
以上の2つです。
では!
①『自信であったり強気さが欠けた前半』(中村憲剛)を見事修正した後半。そして”2度”訪れた決定機。
『前半は、難しかった。』と知念が振り返るように前半は自分たちのペースで試合を進めることが出来なかった。実際、スコアは0−0であり、シュート数も3本しか放てていない。
その原因として守田は次のように言う。
『判断のところで自分たちから考えられていなかったところや、相手のスライドが遅れているのに対してこっちがもたもたしてしまって入れるところ入れ切れなかったり。』
ズレを突けなかったことは中々痛かったはずだ。
パスを用いて相手陣形を崩すという作業までは順調に進むがその先の一手が出ない。そんな状況であった。
そのような焦れている状況下で谷口などが前線に思い切りの良いクサビのパスを付けることでスペースを作り出すことができる。特にこの試合は知念がスタメンであったため、そのようなプレーを多くやるべきであった。
『自分たちから歯車を崩してしまった。』(中村憲剛)という表現が一番当てはまるだろう。
だが、後半になってからは王者の経験値を生かし、見事修正した。ただ、修正できた中で自分たちが先制点を奪えなかったのは非常に勿体ない。そして与えてしまった先制点について中村は『まだ隙がある。』と納得いっていなかった。
得点が生まれたプレーではないが、50分のシーンは相手に対して「ここから攻めて行くぞ」というメッセージを与えるかのようなプレーだった。
このシーンは公式ハイライトで確認して頂きたいのだが、このシーンは田中が自陣から粘り強くキープしたプレーがとても効いている。あそこの位置で簡単に奪われないことには意味がある。
時間は経過し、守田が長谷川に繋いだ後のシーンを見ていくと、長谷川はその後、知念に繋技、知念は家長に繋いだ。
状況からして家長はカットインできる。ただ、家長が選択したのは後ろからの追い越しを図った中村だった。
いわゆるニアゾーンの攻略をすることが出来た。あの場所は得点が非常に生まれやすく攻略することができれば高確率で得点を奪うことが出来る。
川崎は広いスペースで単純な崩しを連続して続けるわけではない。狭いスペースを崩しながら攻略出来るからこそだ。
それに加え、選手の信頼という要素もある。『ケンゴさん(中村憲剛)が絶対にあそこに蹴ってくれるのはわかっていた。』と長谷川が言うように、「出してくれる」という共通認識がある。
「わかっていても止められない」。そんなシーンがこの50分であった。
そして、次にフォーカスするのは決勝点である知念のゴールだ。
このシーンは前述のシーンとは崩したエリアは同じもののそのプロセスが異なる。
中村は『丹念に、ゴール前にバスを置くような相手に、右に左にボールを動かして丹念に、ひっかかることもあったが、それでもボールを回収してハーフコートで』と”丹念”という言葉を2度用いていた。
奈良の同点ゴール後に何度も攻め立ててはいたが、中々状況は打破出来ない。ただ、それでも中村が言うように何度も『ボールを回収して』焦れずに”丹念”に攻撃を続けられたことが、決勝ゴールへと繋がった。
『ひとつ間違ったらクロスとロングボールの選択をしてもおかしくない』(中村憲剛)中で、登里は家長へ躊躇いなく縦パスを付けた。受けた家長はターンをし、ドリブルを仕掛けニアゾーンに侵入。
上げたクロスは相手選手にあたりオウンゴールだったが、『自分が行っていたので触っていたと思っている。』とは知念の言葉。走り込んでいたからこそ、あの位置にディフェンダーがいた。最後まで諦めなかったこと、勝利への執念が”等々力劇場”へと変化を遂げた。
そして、『先制しても勝ちきれるし、今日のように先制されても逆転できる』(阿部浩之)強さを今シーズン身に付けることが出来た。
偉業を成し遂げるために。進化は続く。
②『ヨシトさん(大久保嘉人)に決められた時は、持っているなと思った。』(谷口彰悟)崩された一発。大久保にやらせてしまった”あの”形を分析する
この試合の出来を『ジュビロに加入してからの試合で、一番チャンスがあった』と大久保が言っていたが、確かに前半は川又などにあと一歩というシーンを作られてしまっていた。
あの場面で決められていたら。そう考えれば守備のところは改善の余地があるということである。
さて、本題に入っていく。
77分に相手のスローインが入るが、この時点で谷口が川又のマークに付いている。だが、競ったのは谷口ではなく登里であった。
ここで完全に空中戦に負けてしまった。結果的に谷口と登里は川又を挟みにいったので、その背後のスペースは大きく空いてしまっていた。
松本が抜け出した際には谷口が足を出し足止めを試みるが、見事にかわされてしまい、クロスまでの準備段階という部分を楽にさせてしまった。
一方で、エリア内でもハイレベルな駆け引きがなされていた。
川又が松本にパスを出した際、大久保はまだ奈良とエウシーニョの間にいた。ただ、パスが通った瞬間、大久保はすぐさまプルアウェイし、マークを外す。
そして、奈良は松本の対応をしにいった。この時点で大外に大久保はいるので守田などは直接的には関わっていない。
『本当に(松本)昌也がすごく良いボールを上げてくれました。』(大久保嘉人)と振り返るように完璧に近いクロスを入れられてしまった。
スローインが立て続けにあったため、マークの整理が難しかったとはいえ、大久保の怖さを知らない選手はいない。そういった意味で言えば、マークの整理は状況を問わずきちんとしたいところだ。
一見、簡単そうに見えてしまうジュビロの先制点だが、大久保がゴールを量産してきたように、”あの”形は大久保にとって十八番でもある。
一瞬の駆け引きでフリーになる。それはもはや職人技ではあるが、そういった相手のストロングポイントを消していかなければ失点は防ぐことが出来ない。
大久保は試合を通して周りに指示をしていただけにこちらの守備陣は防ぎたかったに違いない。
ただ、それでも『27失点でもモヤモヤするので、まだまだ減らせるんだなと思う。』という奈良の言葉通り、まだまだ失点を少なくすることはできる。
攻撃と守備の絶妙な融合。それを実現できるのは川崎フロンターレしかいない。
(RYUJI.I)
参照:
・ DAZN