第31節 柏レイソル戦 レビュー
神戸戦、山形戦と2戦連続で3失点を喫していた守備陣だったが、見事完封。対する柏は残留争いの中で、こちらはチョン・ソンリョンや車屋、そして大島を欠く中で”総力”が試される一戦となったが、それでもこの試合にかける想いは川崎が勝った。
そして、ついに”勝てば優勝”という位置まできた。だが、選手たちに浮かれた様子は見られない。『広島のことは関係なく、自分らのことだけ見てやること。勝ち点7差があるが、そこは油断ではなく、気持ちの余裕を持ってやれればいい。』と阿部が言えば、中村も『偶発的にこの位置にいるわけではない。自分たちのやるべきことに対する自信はある。優勝の可能性が出てきていろいろ注目されるが、プレッシャーをいい意味での力に変えたい。』と昨季とは違うフロンターレを見ることができた。
さて、今回のラインナップはこちら。
①『攻略法が少しは見えたかもしれない』(阿部浩之)”対3バック”の戦い方。この試合でキーワードになった”3バック”の特徴とは。
②『自分だけじゃなくてお互いがカバーできるようないい距離感でプレーできたと思う。』(守田英正)。大島欠場によって生まれた【守田・下田】のボランチコンビ。ノープロブレムな関係性。
では。
①『攻略法が少しは見えたかもしれない』(阿部浩之)”対3バック”の戦い方。この試合でキーワードになった”3バック”の特徴とは。
選手たちが揃って口にしていた柏の3バック。相手のフォーメーションやシステムを見ながらチームとしてベクトルを揃えながら戦い抜いたところはまさに『大人なサッカー』(鬼木監督)であった。
そこでポイントになったのはどのようにして相手のウィングバックの後ろを狙っていくかというところだ。
単純に『ウィングがあまり守備に参加できていない感じだった』(知念慶)こともあり、前半から幾度も同箇所を突いていたので、柏としては多少なりとも対応に時間を割いてしまったに違いない。
柏は守備時に、両ウィングバックの小池と亀川を一列下げ5バックにし、オルンガを一枚残し、5−4−1のようなブロックを組んできていた。
『相手は5バック気味でカウンター』と登里が言うように、前線に伊東と江坂を配置することによって縦に早い展開を作れる布陣であった。そういう意味で言えば、そこの対策は明確に練られていて、選手たちは柔軟に対応できたに違いない。
そして、中村も『相手が5バックなら攻められたときはカウンターをケアすればいいので、そこもうまく対応できた。』と振り返る。
一方で、敵将、加藤監督は『攻撃に対してしっかり守備をしてというプランで臨みました。』明かした上で、『入ってくるボールを狙っていこうという狙いでシステムを考えて臨んだのですが、前半の失点の部分、少しのスライドの遅れとか、中途半端なプレッシャーとか、そういう部分での指示をしっかり出せなかった』と言っていたが、これを突けたのは先制点である家長のゴールである。
実際に得点シーンを振り返っていく。
19:50のシーンで登里が守田にパスを配給するシーンだが、まず、この時点で3バックの一角である鈴木を引っ張れている。そして、右ウィングバックである小池はボールホルダーである登里にプレッシャーをかけてきていたので、ここで完全にと言っていいほど相手右サイドに大きな穴が生まれた。
『ウィングバックが食いついているのも見えたので、スペースが空いているのはわかった。』とは登里の言葉。そして、守田も『こちらのサイドバックに対して相手のウィングバックが出てきた。』とウィングバックの位置取りを共通認識として持てたことが得点を生んだ。
”そこ”にしっかり入っていける選手とパスを出せる選手がいるからこそ、あのようなゴールは生まれた。この試合の前半はクロスが主体となっていたが、狙い通りの得点を奪うことができた。
クロスの先は家長であったが、ファーサイドにいたエウシーニョも亀川が強く中央にスライドしていたため、仮に家長にマークが突いていたとしてもファーサイドの選択肢は消えなかったはずだ。
柏は攻撃に重点を置きすぎたが故に、ウィングバックの守備強度が弱まったが、このシステムがうまく機能していれば苦しめられていたかもしれない。ただ、油断せずに相手のウィークポイントを執拗に突き続けたことはチームとして大きな収穫と言える。
だが、76分にクリスティアーノが投入されてからは柏全体が縦への意識が強くなり、3点目を奪うまでの時間帯で危ない時間帯が続いた。それでも耐えきって、”3点目”を奪い取れたという要素は「成長」と言っても過言ではない。
②『自分だけじゃなくてお互いがカバーできるようないい距離感でプレーできたと思う。』(守田英正)。大島欠場によって生まれた【守田・下田】のボランチコンビ。ノープロブレムな関係性。
大島がベンチスタートなったこの一戦では、ボランチが1つの注目要素であったが、鬼木監督が選択したのは、意外にも【守田・下田】コンビであった。
大島とどちらかというコンビは観たことがあったが、この2人がコンビを組むというのは中々新鮮ものがあり、試合前から楽しみにしていた。
川崎フロンターレにとって「ボランチ」というポジションは心臓であり、ここが詰まってしまえば血液が送られなくなり、チームは衰退化する。それほどの重要なポジションだからこそ、求められるモノは高い水準であり、さらにはタスクもかなり多い。
だが、この2人は大島不在を感じさせないほどのプレーを見せていた。
守田と下田にはお互いに違った守備でのストロングがあり、それをうまく組み合わせることで、いつも以上にボランチの位置でボールをストップでき、攻撃に展開することができる。
『ディフェンスの距離感もよかった。何本かピンチはあったがたくさんやられているわけではないし、そのなかで無失点で終われたのは大きい。』とは下田の言葉で、このコンビでの守備の出来具合やさらには、失点が重んでいた中での無失点には満足していた。
ただ、この両選手は守備でだけでなく攻撃面でもしっかりと存在感を残してくれた。下田に関しては、「受けて出してまた受けるそして出す」という動きがかなり目立っていて、本人も『相手が思ったよりもボールを取りにこなかったので、チーム全体としてもいいリズムでボールを動かすことができた。』と振り返る。そういう意味で相手の組織化されたブロックをズラすには最適な働きをしていたに違いない。
一方で、守田は前線に付けるパスや先制点の場面のような前線の深い位置に入っていくという作業を淡々とこなしていた。そして、下田との関係性を『意識的に入っていけるなら前に行こうとホクトくん(下田北斗)と話をしていた。』と明かしていて、これには下田も『2点取って少し重くなったので、自分と守田でもう前に出ていければというところはある。』同意見であった。
ボランチから前線にパスやドリブルでいかなければ後ろのところで詰まりが生じてくる。さらには前線が”ハメられた”状況であれば、事態は最悪な状況になりかねない。
そういった部分ではまだまだ発展途中だが、この試合ではかなりレベルの高いプレーを披露してくれた。彼らが本番の試合で存在感を残していくことが出来ればチームは確実に「成長」していく。
(RYUJI.I)
参照:
・DAZN