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執行部の答弁「調査研究します」の曖昧さとその問題点

市議会で議員からの質問や提案に対して、執行部が「調査研究します」と答弁するケースが多々あります。行政側のこうした答弁は、一見すると前向きな姿勢を示しているように思われますが、実際には非常に曖昧であり、具体的なアクションが伴わないことがほとんどです。この「調査研究します」という言葉が抱える曖昧さは、議会や市民にとって多くの不満や不信感を招く原因となっています。本稿では、こうした答弁の問題点を掘り下げ、より具体的な解決策について考察します。

1. 「調査研究します」が抱える曖昧さ

「調査研究します」という答弁は、表面的には丁寧で柔軟な印象を与えるものの、実際の意味合いが非常に漠然としています。執行部がこの答弁を使う場合、以下のようなさまざまな意図や状況が考えられます。

  • 議員からの提案や質問に即答できない場合
    行政側がその場で迅速に結論を出せない場合に、「とりあえず調査する」という姿勢を示す意図で使われることが多いです。しかし、この「調査」自体に具体的なプロセスや期限が設定されていないため、実質的には先送りや一時的な回避策として利用される場合があります。

  • 議題の重要性を軽視している場合
    議員が提案した内容が行政側の優先事項ではないと判断された場合、実行の可能性を探るよりも、「調査研究します」と返答することで関心の低い議題を形式的に処理しようとする傾向も見受けられます。このように使われると、議員や市民からは「無視」や「形だけの返答」として認識されてしまいます。

  • 具体的な検討や調査を行う気がない場合
    行政側がそもそも提案や質問に対して否定的で、実行の意図がない場合にも、「調査研究します」と答弁することで、議会や市民への見栄えだけを気にするケースもあります。この場合、調査が実行される見込みは極めて低く、実質的に何も進展しないことが多いのが現状です。

このように、「調査研究します」は曖昧さを持つ言葉でありながら、さまざまな場面で無難な対応として多用される傾向があります。これが、議会や市民にとって「行政は何もしてくれない」という不満を引き起こす大きな要因となっています。

2. 「調査研究します」の問題点とその影響

「調査研究します」という曖昧な答弁には、いくつかの重大な問題点が伴います。それにより、議会運営や行政と市民の関係に悪影響を及ぼすことがあります。

  • 先送りの習慣化
    この表現が安易に使われることで、議会内での議論が停滞し、必要な政策の決定や実施が遅れる可能性があります。特に緊急性のある議題や市民の関心が高い案件に対しても、形だけの返答で済まされると、次回以降の議会で再度質問が繰り返されることになります。結果として、行政と議員間のやり取りが非効率となり、議会運営に悪影響を及ぼします。

  • 市民の信頼を損なう
    議会での答弁内容は多くの市民に公開されており、行政の姿勢は市民からも厳しく見られています。「調査研究します」という表現が乱用され、具体的な行動が伴わない場合、市民は行政に対する信頼を失い、「行政は市民の声に耳を傾けていない」という印象を抱きやすくなります。特に重要な議題について何も進展が見られない場合、市民の不信感は大きくなり、行政と市民の溝が広がる原因ともなります。

  • 責任の所在が不明確
    「調査研究します」という答弁では、具体的に誰がどのように調査を行い、いつまでに結果を出すのかが不明確なままです。そのため、調査が進まない場合や結果が出ない場合に、責任の所在があいまいになりがちです。これにより、組織全体での責任感が希薄化し、業務の質が低下する可能性もあります。

3. 解決策:より具体的な行動計画と報告の義務化

このような問題を解決するためには、「調査研究します」という答弁をより具体的な行動計画に基づいたものとすることが必要です。以下は、そのための具体的な解決策です。

  • 行動計画の提示と具体的な調査内容の明示
    ただ「調査研究します」と述べるだけではなく、調査が必要な理由や、調査方法、スケジュール、参考にする資料や関連事例について具体的に説明することが重要です。たとえば、「〇〇市の事例を参考に調査し、今後の会議までに中間報告を行う」といった具体的な行動計画を示すことで、議員や市民にも調査の進行状況が明確になります。

  • 調査結果の期限を設定する
    調査が進行中であることを示し、かついつまでに結果を出す予定なのかを明確にするために、調査結果の報告期限を設定することが必要です。これにより、計画的な調査と報告が促され、議員や市民に対しても信頼性のある対応となります。

  • 中間報告を義務化する
    調査が長期にわたる場合には、中間報告を行うことで進捗状況を確認できるようにします。例えば、半年以上かかる調査であれば、3か月ごとの中間報告を義務付けるなど、定期的な報告の仕組みを導入することで、調査が着実に進められていることを議会や市民に示すことができます。

  • 調査結果の共有と次のステップの明確化
    調査結果が出た際には、その内容をできるだけ詳しく共有し、調査を踏まえた次のステップを具体的に示すことが求められます。たとえば、「調査結果に基づいて〇〇の実施を検討する」や「さらに追加調査が必要であるため次回議会で詳細を報告する」といった、明確な方向性が示されるべきです。

4. 他の自治体での取り組み事例

いくつかの自治体では、「調査研究します」という答弁をより具体化し、住民の信頼を確保するための工夫を行っています。たとえば、ある自治体では、議会の質問や提案に対して「調査研究します」と答弁する場合、調査の目的や方法、スケジュールを明確に記載した計画書を作成し、それを公開する取り組みを行っています。この計画書には、中間報告の予定も含まれており、進捗状況が随時確認できるため、住民からの信頼も高いとされています。

また、他の自治体では、議会で「調査研究します」と答弁した事項について、定期的に進捗状況を報告する「進捗報告会」を設けており、住民や議員が調査の進行具合を確認できる仕組みを整えています。このような取り組みは、行政の透明性を高め、市民や議員の信頼を得るための良い実例と

いえるでしょう。

5. まとめ:明確な責任と透明性のある答弁を目指して

「調査研究します」という答弁は、行政側が慎重な姿勢を示す一方で、その曖昧さゆえに議会や市民からの信頼を損なう可能性も高いものです。行政がこの表現を使う際には、単なる先送りや形式的な返答に終わらせるのではなく、具体的な行動計画や期限を設定し、調査内容が実際に進展していることを示すことが求められます。透明性と責任感を持った答弁を心がけることで、市民や議員との信頼関係を強化し、より効果的な行政運営が可能となるでしょう。

このような改善を通じて、「調査研究します」という言葉が単なる曖昧な表現から脱却し、具体的な行動と信頼に基づく答弁として市民や議会に評価されるようになることを期待します。


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