Report_10 [NorwayStudyTour] -漁業博物館でおすすめのドキュメンタリーのこと-
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[NorwayStudyTour]
-漁業博物館でおすすめのドキュメンタリーのこと-
Norwayで一番人気の職業は”漁師”。誰でもなれた漁師も、今では大学卒でエンジニアリングを理解していないと資格がとれないほど専門化している。難しさはその職業の社会的認知度の高さを示している。私もできるならNorwayで漁師になってみたい。漁期(魚の種類にもよるが、話を聞いた漁師は9月から2月くらいだった)以外はスペインでバカンスなんて暮らしもやってみたい。さぞかし、漁師という仕事はやりがいがあって給料も高く満足な仕事なんだろう。
漁師たちは、漁業、漁師という仕事に対してどう思っているのだろう?今回のStudyTourでは”よい部分”しか見えず、日本で下調べしたときも課題についてはあまり見つけられなかった。本当のところ、漁師は漁業に満足しているのだろうか?
ベルゲンに滞在した日に、写真家の陽馬さんとレンタサイクルを使って、町の端っこにある漁業博物館(fiskerimuseum)に行ってみた。古いSeaHouseを改装してできた4階建ての博物館で、メディア・アートを最大限活用したインタラクティブな展示で、こどもたちはどの展示も楽しめる場所。受付でチケットを買ったとき、受付のお兄さんによる見学順路の紹介が終わったあと、「3階にあるドキュメンタリー映像が素晴らしいから、必ずみてね!」と念押しされた。
どんなドキュメンタリーなのか気になって、3階を探すと大きなディスプレイ3つが横になれべられた6畳くらいの部屋があった。英語かノルウェー語か言語が選択できるボタンがあって、さっそく英語を押してみる。すると、左の画面から60代、80代、40代の男性が映し出される。どうやら漁師の家族のよう。内容は、それぞれの年代の漁師が、海での漁、仕事、家族、社会とどう関わってきたかについてそれぞれが語っている。80代の漁師は語る。とにかく漁にでて大家族を養った。海には魚がたくさんいて、とれるだけとった。家族との時間は働いているときはあまりとれなかった。60代の漁師は、魚が獲れなくなった時代。様々な仕事をして稼ぎを維持しつつ、家族との時間をできるかぎり大切にした。40代の漁師は、はじめて国により魚を捕る量を制限され、免許を購入した世代。若い彼は語る。
「漁業からさまざまな事業を展開する野心がはじめはあった。でも、政府による規制がかかって、その熱意は冷めてしまった。漁獲量を買う制度は不平等だ。まだ改善する必要がある。」
私はとっても驚いた。きっと、この博物館には国から運営費が当てられているはず。そこで、現行法に対して批判的な意見のドキュメンタリーをしっかり放映する姿勢がある。入り口のお兄さんがなぜおすすめしてきたのかはわからない。それでも、この国では建設的な意見を積み上げていく姿勢が根付いているのかもしれない。
「でも、そこまで悲観的に漁業をみる必要はないんだけどね。」
と40代の漁師が言ったあと、3人の漁師みんなが笑っていた。ノルウェーの漁師が感じている漁業の現状が、この笑い声に垣間見えた。
民主主義は国民みんなが取り組んで作り上げていくもの。それは、日常の暮らしのなかに、意図的に実践しないと見失ってしまうもの。厳しく現実をみて、よりよい未来を描くこと。ノルウェーの漁業はきっとまだまだよくなる。
■漁業博物館
https://fiskerimuseum.museumvest.no/