「なぜ今、この提供価値であるべきなのか?」から世の中に受け入れられるのかを確認する
こんにちは。NEWhのフルカワです。
大企業における新規事業やサービス開発に特化したデザインコンサルティング&スタジオのNEWhで、サービスデザイナーとして多種多様な企業のサービスコンセプトやビジネスモデル開発のご支援をしています。
今回は、サービスの提供価値を検討した後に、「なぜ今、この提供価値であるべきなのか」を確認・検討する際の視点と問いについてのお話です。
一般的には「なぜ今、やるべきなのか?」と「なぜ、我々がやるべきなのか?」(=既存事業のシナジーや自社アセットの活用による競争優位性など)はセットとして語られています。
ただ、今回は「なぜ今、やるべきなのか?」(=「社会の潮流を適切に読み取った提供価値を実現、顧客へ提供できるのか?」)という問いへフォーカスを当てた記事となっています。
市場検討の際の「なぜ、今やるべきなのか?」との違い
一般的には参入する市場検討の際に「なぜ、今やるべきなのか?」の検討は重要だと言われています。
今回、ご紹介した視点と問いは参入する市場を決定し、その市場において「どのような提供価値を提供するのか」、を具体的に検討したタイミングで「なぜ、今やるべきなのか?」を確認する考え方として整理しております。
市場検討と提供価値検討では同じ、「なぜ、今やるべきなのか?」を確認する際に、求められるポイントが異なります。
市場検討は自社としてどの市場に参入するか機会を発見していくフェーズです。その際に重要となるポイントは「自社としてこの市場に参入する意味はあるのか?(=自社として取り組む意義があるのか)」となります。
一方、提供価値検討の際には解決する顧客課題/欲求、具体的な提供手段・機能までが検討されているフェーズであり、重視するポイントは「社会は(検討した提供価値を)受け入れてくれるのか?」です。
市場検討の際では中心となる視点は自社、提供価値検討では社会と検討する視点が異なる点が違いとなります。
因みに、参入市場検討の際における「なぜ、今なのか?」に関しては弊社の小池がこちらの記事でまとめております。
なぜ、「なぜ、今やるべきなのか?」を確認・検討するのか?
社会・市場の潮流を読み取り、適切なタイミングでのサービス・プロダクトの提供でなければ社会には受け入れてもらえません。これまでになく画期的である、もしくは適切に潜在的な顧客課題を捉えている提供価値であったとしても、社会・市場の潮流とは異なると社会・市場・顧客には受け入れられる土台がなく、失敗に終わってしまう可能性もあります。
例として、2010年代前半に世界的な大ヒットになった「自撮り棒」が挙げられます。自撮り棒は2014年にTIME誌が"The 25 Best Inventions of 2014"の1つに選定されるほどの商品でした。
しかし、世界で初めての市販品としての自撮り棒は1980年代初頭に日本で発売されていた過去があります。当時はスマートフォンではなくフィルムカメラの時代です。自撮りの文化も普及しておらず、撮影した写真をすぐに確認できる技術もありませんでした。そのため、社会・市場・顧客が自撮り棒を受け入れる土台はなく、ヒットには繋がらずに30年以上経った後にスマートフォンの普及と共に大ヒットとなりました。
(自撮り棒の歴史については👇の記事で詳しく書かれています。)
自撮り棒の例は「早すぎた」事例ですが、逆に「遅すぎる」場合には競合他社が既に市場に参入している、検討していた顧客課題自体が別の手段によって消滅してしまっているという事態となり、失敗に終わってしまう可能性もあります。
(遅い事例としては👇の本で「イリジウム」を例として挙げられています。)
このように適切なタイミングでのサービス・プロダクトの提供は成功の要因としては不可欠です。ここからは「なぜ今、この提供価値をやるべきなのか」を確認・検討する際の切り口と問いについて話していきます。
「なぜ、今やるべきなのか?」を確認・検討する視点と問い
視点と問いは👇のようなシートでまとめています。
「技術」、「市場」、「規制」の3つの切り口から構成されています。それぞれの切り口に問いを設定しています。
「技術」の視点は検討した提供価値の実現可能性を左右します。そのため、
新たな技術の普及により実現できるのか?」と「ユーザーの期待を満たせる体験を技術的に実現できるのか?」が問いとなります。
「市場」の視点は社会・顧客を取り巻く環境を読み解き、(顕在的・潜在的な)ニーズの把握、提供価値を選択し、利用するハードルがないのかから、市場の受容性を反映します。「市場は受け入れられる準備ができているのか?」が問いとなります。
最後に「規制」の視点です。法的な枠組みや業界のルールの変化によって機会が生まれているのかを確認します。「規制の変化によって新たな機会が生まれる可能性があるのか?」という問いを設定しています。
これら3つの視点を総合的に確認し、「なぜ今、この提供価値をやるべきなのか」を明らかにします。
また、企業の新規事業においては「技術」の問いで自社特有の技術を活かせる、「市場」の問いで自社の既存顧客が対象となると、「なぜ、我々がやるべきなのか?」という問いへつなげることも出来ます。
「なぜ、今やるべきなのか?」問いの検討例
例えば、ストリーミング音楽配信サービスSpotifyの創業当時を例にすると次のようなシートになります。(因みにspotifyの創業者のダニエル・エクは創業当時の2006年頃に音楽業界で問題になっていた違法ダウンロードへの怒りからスタートしているという話もあります。)
また、先ほどの例で挙げた自撮り棒で、最初の発売当時とブームになったタイミングでまとめると次のようになります。
3つの切り口、4つの問い全てを埋める必要はありませんが、これらの問いに答えられる提供価値は理想的なタイミングであり、社会・市場の環境の後押しにより受け入れられる可能性の高い提供価値です。
提供価値を考えた後にそれぞれの視点と問いと提供価値を照らし合わせ、確認とブラッシュアップの検討を行う使い方となります。
まとめ
今回は、サービスの提供価値を検討した後に、「なぜ今、この提供価値をやるべきなのか」を確認・検討する際の視点と問いについて事例を絡めてお話をしました。
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