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生成AIと人間で役割分担をしてインタビューを分析する

こんにちは。NEWhのフルカワです。

大企業における新規事業やサービス開発に特化したデザインコンサルティング&スタジオのNEWhで、サービスデザイナーとして多種多様な企業のサービスコンセプトやビジネスモデル開発のご支援をしています。

今回はチームでインタビューした後の分析における生成AIの活用方法についてお話します。


チームでインタビューをする際の課題と生成AIの活用

顧客課題や提供価値の検証の際にチームでインタビューを実施することがあるかと思います。
その際にはインタビュー対象者のスケジュールが優先となり、チームメンバー全員がインタビューに参加できないこともあるかと思います。
その場合には参加できなかった人はインタビューの書き起こしや録画を見て、インタビュー内容のキャッチアップしますが、これには時間がかかってしまいます。(特に録画の視聴だと1.25倍〜1.5倍速で視聴しないと大変です、、)

生成AIには大量の情報を要約し、処理すること、人間にはないフラットな視点で分析することが得意です。
そこで、インタビュー時の声のトーンや会話の熱量、細かなニュアンスを含めた分析はインタビュー実施者が行い、参加できなかったチームメンバーは生成AIによる要約と課題抽出で素早くインタビュー内容のキャッチアップと課題発見をすることで、「役割分担をしつつ、全員が同等のインプットをした状態でディスカッションができるのでは?」と考え、実行してみました。

役割分担

🚨生成AIが要約・課題抽出を行ったから参加していない側の作業が終了するわけではありません。要約をして詳しく知りたい箇所は書き起こしや録画を確認してしっかりと理解することまで作業です。
🚨生成AIとインタビュー実施者で意見が異なる可能性があります。その場合はしっかりとディスカッションし、チームでの答えを導くスタンスで実施します。

進め方と分析のフレーム

今回、インタビューの分析の進め方は以下のように進めました。

1. インタビューの実施(書記はできるだけ詳細に書き起こしレベルのインタビューのメモをとる)※notta等の書き起こしツールの利用も可
2. インタビュー非参加者はメモを活用して、生成AIでの分析を実行
3. インタビュー実施者は回答のニュアンスや発言を踏まえて個人で分析を実行

進め方

分析のフレームは対象者1名ずつに対して下記のmiroボードを用意して、実施者による分析生成AIを活用した分析が同時に確認できるようにしました。

分析のフレーム

また、プロンプトは次のようなプロンプトを利用しました。
インタビューの内容を踏まえて#アウトプットの項目に沿って生成してもらうプロンプトになっています。
生成された内容を上記のフレームの「非同席者のワーク」箇所に貼り付けます。

#命令文
あなたは新規事業開発の上級コンサルタントであり{{#新規事業}}の新規事業を検討しています。{{#インタビューの書き起こしデータ}}にある顧客インタビュー内容の要約とインタビュー内容から顧客課題を抽出する{{#アウトプット}}を生成してください。



##新規事業
- 新規事業の概要を記載する



##インタビューの書き起こしデータ
- 書き起こしデータのファイル名を記載する


## アウトプット1. 対象者の属性
- **名前**: (インタビュー対象者の名前)
- **性別**: (インタビュー対象者の性別)
- **年齢**: (インタビュー対象者の年齢)
- **職業**: (インタビュー対象者の職業)


2. インタビューの要約
- **主なテーマ**: インタビュー全体で扱われた主要なトピックを簡潔にまとめる。
- **対象者から得られたユニークなポイント**: 対象者が強調したポイントや重要な視点をすべて列挙する。対象者の独自の観点を詳しく掘り下げる。
- **ポイント1**: 対象者の観点や意見を具体的に記載
- **ポイント2**: 別の観点や関連事項
- (必要に応じて追加可能)


3. 特徴的な発言の抜き出し
- **発言1**: 対象者が特に重要だと感じている具体的な発言を記載
- **発言2**: 別の重要な発言を記載
- **発言3**: (必要に応じて追加可能)
- (発言の数に制限はなく、必要な数だけ抽出可能)


4. 顧客課題の抽出

*課題と関連する発言の数を制限せず、自由に記載する。*
- **課題1**: 対象者の発言を踏まえ抱えている顧客課題を抽出する。
- **発言**: 「具体的な発言」
- **課題2**: 別の顧客課題の抽出
- **発言**: 「具体的な発言」
- (必要に応じて追加可能)

5. ユニークな視点や発言

*独自の視点と発言についても、数を制限せず自由に記載する。対象者が提示した他に見られない斬新な解決策や視点を特定し、それに関連する発言を分析する。*
- **独自の視点1**: 対象者が述べた、独自の視点や解決策を記載し、それに関連する発言を引用。
- **発言**: 「独自視点に基づく具体的な発言」
- **独自の視点2**: 別の独自の視点と発言
- **発言**: 「具体的な発言」
- (必要に応じて追加可能)

得られた効果と課題

1. 確認・課題抽出の時間短縮

瞬時に内容を要約し、要点を教えてくれる・同時に課題の抽出もしてくれるため、インタビューの録画の確認や書き起こしの確認よりもやはり素早くインタビューの内容のキャッチアップができました。
もちろん、「実際の発言はどうなっているのだろうか?」「この分析って信頼できるのか?」と思う部分もあるので、録画データの確認作業は発生しますが、時間の短縮にはつながっていると感じました。

60分で参加していないインタビューの確認・課題抽出ではこれまでは、
・個人的な体感ではインタビュー録画の確認と課題抽出のためのメモ作成(同時進行):60分程度
・メモを踏まえて抽出した課題抽出・精度向上:60分
で合計2時間程度であったのに対して、
録画の確認とメモ作成の作業が生成AIによる生成とチャットでの確認によって15分程度に激減しました。
(課題抽出・精度向上の時間は結局、確認作業や文脈の確認が発生するため時間は変わらずです。)

2. 発言の抽出と追加質問による重点的な確認箇所の把握

インタビューから発言をポイントとなる発言を抽出してくれるので、書き起こしで重点的に確認すべきポイントが明らかになっていました。また、気になった箇所に対しての深掘りを「XXXの発言内容についてより詳しく教えて」等の追加で質問することで、インタビューの大枠の理解はスピーディにできること実感しました。

(課題)顧客課題抽出のユニークさがない

プロンプトの書き方で調整できる部分はまだまだあると思いますが、抽出される顧客課題は、比較的一般的に世の中で言われている内容と大差ないと感じてしまいました。抽出される顧客課題の言葉の粒度・抽象度が粗く、対象者の発言をそのまま受け取り、発言の裏側にある文脈や背景を考慮した課題抽出ではないと、感じるためかもしれません。
顧客の発言をしっかり抑えて、顧客の発言内容をしっかり踏まえた顧客課題の抽出をするようにアップデートする必要は感じます。

現状ではまだまだ改善の余地はあると思いますが、作業のスピードアップには寄与すると感じております。

🚨個人的には基本的に「生成AIによる生成内容は本当にそうなんだっけ?」と「文脈が無視されている内容が生成されやすい」というスタンスでいるので、生成される内容をそのまま受け取るのは危険かと考えています。どちらかというと叩き台を生成してくれている、その内容を踏まえて自分で精度を上げるべきであるという前提で利用するスタンスでいます。

まとめ

今回は、生成AIと人間で役割分担をしてインタビューを分析するについての記事でした。
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