3分でわかる宇宙活動法〜用語の定義〜
2018年11月15日に施行された宇宙活動法は、打上げの許可、人工衛星の管理の許可、損害賠償について定めています。
宇宙活動法に限りませんが、法律は用語の定義を定め、法律が適用される範囲を画しています。
宇宙活動法でも「人工衛星」、「打上げ」といった普段使いの用語から「傷害予測数」、「飛行安全管制」といった難しい用語まで定義している規定があります。今回は、そんな用語の定義を淡々と説明します。
人工衛星等
「人工衛星及びその打上げ用ロケット」をいいます。
人工衛星だけでなく、ロケットも含まれていることと、人工衛星の打上げ用ロケットであって、人工衛星を搭載しないロケットが除かれている点がポイントです。サブオービタルロケットは宇宙活動法の適用外となります。
人工衛星等の打上げ
「自ら又は他の者が管理し、及び運営する打上げ施設を用いて、人工衛星の打上げ用ロケットに人工衛星を搭載した上で、これを発射して加速し、一定の速度及び高度に達した時点で当該人工衛星を分離すること」をいいます。
低軌道保護域・静止軌道保護域
低軌道保護域は、「地球表面から 2,000km の高度までの球状領域」をいいます。
静止軌道保護域は、
「以下で定義される球殻の一区画
下限高度=静止高度(およそ35,786km)より200km低い高度
上限高度=静止高度より200km高い高度
-15度≤緯度≤+15度」
とされています。
宇宙活動法ではデブリ発生を抑止するための規定があり、これらの領域は保護領域としされ、ロケットや人工衛星が干渉する場合、デブリ抑止のための措置が必要とされます。デブリについてはこちらでも解説しています。
傷害予測数
「落下物との接触等により人命又は人体機能の長期低下若しくは喪失に関わる重大な被害を与える人数の確率的推定値」をいいます。
ロケットの飛行経路を設定する際、傷害予測数を計算して一定の水準以下にしなければなりません。
飛行中断措置
「人工衛星の打上げ用ロケットが予定された飛行経路を外れた場合その他の異常な事態が発生した場合における当該人工衛星の打上げ用ロケットの破壊その他その飛行を中断する措置」をいいます。
宇宙活動法の目的の一つである、安全性確保のための措置です。
飛行安全管制
「人工衛星等の打上げを終えるまで、全部若しくは一部の人工衛星が正常に分離されていない状態における人工衛星等の落下、衝突又は爆発により、地表若しくは水面又は飛行中の航空機その他の飛しょう体において人の生命、身体又は財産に損害を与える可能性を最小限にとどめ、公共の安全を確保すること」をいいます。
こちらもまさに安全性確保のための体制作りです。
落下限界線
「安全の確保のために設定するロケットの飛行を中断した場合に危害を及ぼしてはならない限度を示す線」をいいます。
安全確保のため設定する必要があり、陸上は打上げ時の警戒区域内に設定、打上げ施設の周辺以外は海岸線から30km以上離れた位置に設定する必要があります(打上げ時に無人となる島は除く)。
落下予想区域
「人工衛星の打上げ用ロケットの燃え殻やフェアリング等、正常飛行時にロケットから分離投下される物体の落下が予想される区域」をいいます。
可能な限り陸地及びその周辺海域に設定しない、外国の領土・領海に干渉しない、可能な限り排他的経済水域に干渉しないことが求められます。
落下予測域
「ロケット機体やその破片等の落下など、異常時を含むロケット飛行に伴う危害が及ぶ範囲」をいいます。
飛行計画は正常飛行時に落下予測域が落下限界線に干渉しないようにしなければならず、また、ロケットの飛行が逸れて落下予測域が落下限界線に干渉する場合、飛行中断しなければなりません。
ロケット打上げ計画
「人工衛星等の打上げを予定する時期、人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路並びに当該飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全を確保する方法を含む人工衛星等の打上げの方法を定めた計画」をいいます。
ロケット軌道投入段
「地球を回る軌道又はその外に投入されるロケット機体」をいいます。
保護領域に入るロケット軌道投入段はデブリ対策が必要です。
制御再突入
「人工衛星等を制御して、あらかじめ安全確保を図った、着地又は着水の地点や区域内へ落下させる再突入」をいいます。
参考:
・人工衛星等の打上げに係る許可に関するガイドライン 内閣府宇宙開発戦略推進事務局」