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3分でわかるリモセンデータの保護

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衛星リモートセンシングデータは、その分析によって幅広く地表の情報を取得できるものとして価値を持ちます。
サービス提供のために分析されたデータを提供する事業者としては、そのデータが保護されていた方がビジネスを進めやすい側面があることは否めません。

しかし、リモセンデータが法律上どのように保護されるのか、明確な規定はありません。
そこで今回は、リモセンデータを保護する方法について取り上げます。

契約による保護

まず、契約によってリモセンデータの利用条件、権利帰属、管理方法、事故が発生した場合の責任を明確にすることによって、リモセンデータを保護することが考えられます。
しかし、これはあくまで契約当事者間の約束なので第三者に主張することができません。
また、損害賠償を求めるにしても、損害額がいくらなのか不明確であることも多く主張立証は困難です。

著作権法による保護

著作権法の保護を受けるためには?
著作権法上、「著作物」としてその表現が保護されるためには、

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの

といえる必要があります(著作権法2条1項1号)。
つまり、単なる表現ではなく「創作的」な表現である必要があります。
著作権法は創作性について定義していませんが、「完全な独創性までは要求されておらず、また学術性や芸術性の高さも問題とはならず、何らかの個性が現れていればよい」とされます(「著作権法」p49 中山信弘)。

リモセンデータに創作性があるか?
では、リモセンデータに創作性は認められるのでしょうか?この問題を考えるにあたり、リモセンデータの構造を知っておく必要があります。

まず、衛星で検知した情報を地上で生データとして受信します(一次データ)。このデータはバイナリデータなので人間は知覚できません。
このデータは画像に変換され、必要に応じて補正が加えられます(処理済みデータ)。
その画像を元に、用途に合わせてさらに加工がなされます(解析された情報)。

このような段階を経て、受信したデータが製品として利用できる形になっていくわけですが、このうち一次データは機械的に取得されたデータにすぎず、創作性を認めることは難しいでしょう。
処理済みデータ以降は人の手が加わりますが、多くの情報から、どのような情報を選択し、加工するかの選択や、分類、体系化について創作性が認められる可能性があります。
しかし、その「表現方法選択の幅」は小さく(「宇宙ビジネスのための宇宙法入門第2版」p273 小塚荘一郎・佐藤雅彦)、著作権として保護される範囲は相当限定されてしまうと考えられます。 

不正競争防止法による保護

営業秘密
不正競争防止法は、「営業秘密」の漏えいなどの競争を阻害する行為を禁止して、市場での競争が健全に行われるようにする法律です。

不正競争防止法は、

秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの

を「営業秘密」として保護しており(不正競争防止法2条6項)、その不正取得や漏えいは差止請求(やめろという権利)、損害賠償請求が可能です。

そしてこの営業秘密といえるためには、以下の要件が必要です。

①秘密として管理していること(秘密管理性)
②事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)
③公然と知られていないものであること(非公知性)

リモセンデータも上記要件を満たせば営業秘密として保護されますが、秘密として管理されなかったり、公知のものもあるため、必ずしも全てのデータが営業秘密として保護されるとは限りません。

限定提供データ
それでは、リモセンデータは全く保護されないことになってしまうのでしょうか?
リモセンデータはいわゆるビッグデータの一つですが、ビッグデータは他者と共有するものであり、確かに秘密情報としては保護できない場面は出てきます。他方、ビッグデータの有用性を考えると、全く保護しないわけにもいきません。
そこで、2018年の不正競争防止法改正では、新たに「限定提供データ」の概念が導入され、2019年の7月から施行されています。

限定提供データとは、

業として特定の者に提供する情報として電磁的方法(略)により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く。)

をいい(不正競争防止法2条7項)、限定提供データの不正取得や不正使用などには、差止め請求や損害賠償が可能です。

限定提供データといえるためには、以下の要件が必要です。

①業として特定の者に提供(限定提供性)
②電磁的方法により相当量蓄積(相当蓄積性)
③電磁的方法により管理(電磁的管理性)
④技術上または営業上の情報
⑤秘密管理されているものを除く

リモセンデータがこれに該当するとは一概には言えませんが、これらの要件を満たす場合には限定提供データとして保護されることになります。

参考:
・宇宙ビジネスのための宇宙法入門第2版 小塚荘一郎・佐藤雅彦
・限定提供データに関する指針 経済産業省
・著作権法 中山信弘

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