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3分でわかる衛星リモセン法〜リモセン装置の使用許可〜

衛星リモセン法は、リモセン記録の適正な取扱いを確保するため、①リモセン装置の許可制度、 ②リモセン記録を保有する者の義務、 ③リモセン記録を取り扱う者の認定等についてルール化しています。

今回は、リモセン装置の許可が認められるためにはどうすれば良いのかを取り上げます。

許可制度

高分解能(詳細に地上のモノが判別できる)のリモセン装置を使用するには、内閣総理大臣の許可が必要です。
そして、以下の全てに適合しているのでなければ、許可は下りません。
条文上は、複雑・難しい表現となっています。

一 衛星リモートセンシング装置の構造及び性能、当該衛星リモートセンシング装置が搭載された地球周回人工衛星の軌道並びに操作用無線設備等及び受信設備の場所、構造及び性能並びにこれらの管理の方法が、申請者以外の者が衛星リモートセンシング装置の使用を行うことを防止するために必要かつ適切な措置が講じられていることその他の国際社会の平和の確保等に支障を及ぼすおそれがないものとして内閣府令で定める基準に適合していること。
二 衛星リモートセンシング記録の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の当該衛星リモートセンシング記録の安全管理のために必要かつ適切なものとして内閣府令で定める措置が講じられていること。
三 申請者(個人にあっては、死亡時代理人を含む。)が、第一号に規定する申請者以外の者が衛星リモートセンシング装置の使用を行うことを防止するための措置及び前号に規定する衛星リモートセンシング記録の安全管理のための措置を適確に実施するに足りる能力を有すること。
四 その他当該衛星リモートセンシング装置の使用が国際社会の平和の確保等に支障を及ぼすおそれがないものであること。

一 衛星リモートセンシング装置の…内閣府令で定める基準に適合していること

リモセン記録の性質から導き出されるポイント
そもそもリモセン法でこのような許可制度が設けられたのは、リモセン装置がテロリストなどに占拠され、リモセン記録が悪用されることを防止するためです。
そのため、リモセン装置の規制はリモセン記録の機微性や、対象物判別精度によってきます。
内容は、リモセン記録は通常の生活では目にすることのできない「ヤバい情報」を含み得るものですから、判別精度が上がればその分「ヤバい情報」を獲得できてしまう可能性が上がります。
対象物判別精度は人工衛星の軌道によって変化し、低い軌道であればより精度が高まります。
そのため、リモセン装置の構造・性能、人工衛星の軌道、設備の場所・構造・性能、これらの管理の方法が重要なポイントとなってくるわけです。

内閣府令=リモセン法施行規則
ここでいう「内閣府令」とは、リモセン法施行規則のことです。
ざっくり言えば、リモセン法本体で規定しきれない細かい点を定めているルールになります。
規則では、以下の基準が規定されています。

①申請者以外の者による使用を防止するための措置
②操作用無線設備等及び受信設備が一定の国・地域にない
③機能停止を適切に行うことができる

①申請者以外の者による使用を防止するための措置
リモセン装置は、他の人に使われないようにしておかなければならず、リモセン装置から送信された情報が、許可された受信設備以外で受信されて利用されることを防止することも必要です。
具体的には、以下の措置が必要となります。

・対応するコードや暗号(対応変換符号・対応記録変換符号)でなければ復元することができないようにする
・周波数を複数使い分けて通信する
・リモセン装置を使用する権限がある人だけが設備を操作できるようにする

また、リモセン装置の使用者は、対応するコードや暗号を他の人に提供してはなりませんし、以下のような漏えいや滅失・毀損を防止する措置が必要です。

・認定が取り消された者が管理する受信設備に向けて情報の送信を行わない
・記録変換符号の変更

また、リモセン装置は一定の場合を除きいつでも終了できますが、その際、リモセン装置が管理されない状態になってしまうので、機能を停止させなければ、テロリストなどに勝手に利用されかねません。
そのため、リモセン装置の使用を終了するときは、電磁波を検出する機能を停止させるか、電源を供給しない信号を送信し、リモセン装置の機能を適正に停止させることが必要です。

②操作用無線設備等及び受信設備が一定の国・地域にない
輸出貿易管理令で掲げられている一部の地域に設備がないことが必要です。2019年5月3日現在、アフガニスタン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、イラク、レバノン、リビア、北朝鮮、ソマリア、スーダン、イランが掲げられています。また、国連の総会・安全保障理事会で決議された国・地域にも設備を設置できません。

③機能停止を適切に行うことができる
人工衛星の軌道によって、リモセン装置の判別精度が変化することは前述のとおりです。
そのため、リモセン装置の使用者は、リモセン装置が搭載された人工衛星が許可された範囲の軌道から外れているときは、直ちに、許可された軌道に戻るまで機能を停止させなければなりません。

二 衛星リモートセンシング記録の漏えい、滅失又は毀損の防止…内閣府令で定める措置が講じられていること。

リモセン記録の種類によって分けられ、それぞれ組織・人・モノ・技術に着目した安全管理措置が必要です。生データの場合は以下の措置が必要となり、標準データの場合は物理的安全管理措置が不要です。

①組織に着目
・リモセン記録の安全管理に関する基本方針を定める
・リモセン記録を取り扱う者の責任・権限・業務を明確にする
・リモセン記録の漏えい・滅失・毀損発生時の事務処理体制を整備
・安全管理措置の規程を作り実施・運用の評価・改善

②人に着目
・リモセン記録を取り扱う者が、テロリストなどの許可を受けることができない者にあたらないことを確認
・リモセン記録を取り扱う者が、リモセン記録についての情報や非公開情報を、目的外利用しないことを確保するための措置
・リモセン記録を取り扱う者に対する必要な教育・訓練

③モノに着目
・リモセン記録を取り扱う施設設備を明確にする
・リモセン記録を取り扱う施設設備への立入り・機器の持込みを制限
・リモセン記録の取り扱い機器に、盗難・紛失その他の事故を防止する措置(ex.ワイヤで固定)

④技術に着目
・リモセン記録を取り扱う施設設備への不正アクセスを防止
・機器への接続の制限
・機器・端末の動作を記録
・リモセン記録を送信するときの暗号化
・リモセン記録を加工するときの措置

三 申請者(個人にあっては、死亡時代理人を含む。)が…能力を有すること。

申請者が、リモセン装置の不正使用防止措置やリモセン記録の安全管理措置を適確に実施する能力を持っていることが必要です。

四 その他当該衛星リモートセンシング装置の使用が国際社会の平和の確保等に支障を及ぼすおそれがないものであること。

リモセン法の精神が反映されています。

参考:
・衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律に基づく措置等に関するガイドライン 内閣府宇宙開発戦略推進事務局
・詳解宇宙二法 宇賀克也

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